No. 873
   2013年8月9日

地方公務員・教職員の賃下げはデフレ脱却に逆行

= 人事院報告を受けて、公務労組連絡会が全人連に要請 =

 公務労組連絡会は9日、月例給・一時金ともに改定を見送るとの人事院報告をうけて、自治労連・全教と共 同して、今後の地方人事委員会での勧告作業にかかわって、全国人事委員会連合会(全人連)に要請しました。
 要請では、国に準じて地方自治体に賃下げが押しつけられ、人事院も減額措置を容認した報告を出すなかで、労働基本権制約の「代償機関」である人事委員会 として、賃下げ反対の意見表明など毅然とした対応を求めました。
 また、同日には、前日の総務省・厚労省につづいて、財務省に対して、人事委員報告を受けた公務員賃金の改善を求める要求書を提出しました。


全人連として賃下げ 反対の見解表明を求める

全人連会長と野村議長 全人連 への申し入れには、公務労組連絡会からは、野村議長(自治労連委員長)、北村副議長(全教委員長)、黒田事務局長、関口・米田の各事務局次長、自治労連か ら猿橋書記長、全教から今谷書記長が出席しました。
 全人連側は、関谷会長(東京都人事委員会委員長)をはじめ、塚田(北海道)、高橋(宮城県)、堀口(埼玉県)、石川(愛知県)、栗原(大阪府)、森信 (広島県)、岡田(愛媛県)、青柳(福岡県)、小高(横浜市)の各人事委員会代表ほかが出席しました。

 はじめに、野村議長は、要請書(別掲)を関谷会長に手交し、以下のように要請しました。
○ 昨日、人事院から、国家公務員の月例給・一時金ともに改定を見送ることなどを内容とした報告がおこなわれた。人事院の調査でも「7.78%・ 29,282円」の官民の給与較差があったにもかかわらず、改善勧告を見送ったことは、勧告制度の根幹にもかかわるもので、きわめて重大であると考えてい る。
○ 地方自治体に対しては、地方交付税削減を通して、国に準じた地方公務員・教職員への賃金削減が押しつけられてきている。地方自治への介入であるととも に、労働基本権制約の代償措置である人事委員会勧告制度をおびやかす不当な政府の圧力であり、そうした観点から、全人連、各人事委員会としても意見表明す るなど毅然とした対応を重ねて強く要請する。
○ 各地の人事委員会では、今年の勧告にむけた作業がすすめられるが、地方公務員の生活改善、地域経済の活性化にむけた積極的な立場で給与・労働条件改善 にむけて尽力されることを強く要請する。

 自治労連の猿橋書記長は、「政府による地方への賃下げの押しつけに対して、自治体・議会は地域経済への影響に危惧している。働きがいを失わせるととも に、政府のデフレ脱却の経済対策とも逆行している。勧告制度が無視されていることに対して、今年の人事委員会勧告できちんと指摘すべきだ」と求めるととも に、雇用と年金の確実な接続にむけた対策、臨時・非常勤職員の賃金・労働条件改善を求めました。
 全教の今谷書記長は、賃金問題とあわせて、「全教の調査では、教員は月90時間を超える時間外労働となっている。この実態を直視し、命を守る職場作りに 尽力してもらいたい。また、再任用制度は、教員定数が減っているなかで、定年退職が想定される人数分の定数を確保できない。国に声をあげるなど人事委員会 でも対応を求める」と要請しました。

地域の実情をふまえて主体的に対処していく

 これに対して、関谷会長は以下のように回答しました。
【関谷会長回答(要旨)】
 ただいまの皆様からの要請につきましては、確かに承りました。早速、役員府県市を通じて、全国の人事委員会にお伝えいたします。
 8月8日に、人事院において国家公務員の給与等について報告がおこなわれ、本年の民間給与との較差は、減額前の給与額を基準とした場合で76円、率にし て0.02%、民間給与が公務員給与を上回るとしております。特別給につきましては、公務の支給月数は民間の支給実績と均衡しているとしております。
 こうした較差等の状況を踏まえ、人事院は、月例給、特別給ともに改定は行わないとしております。
 詳細につきましては、これから人事院の説明をうけるところですが、人事院の勧告・報告は、必ずしもこれに従うべきものではないとは言え、今後、各人事委 員会が勧告作業を行う上で、参考となるものであることから、その内容については、十分に吟味する必要があると考えております。
 現在、各人事委員会では、勧告へ向け、鋭意作業を進めているところです。今後は、皆様からの要請の趣旨も考慮しながら、それぞれの人事委員会が、地域の 実情を踏まえつつ、主体性をもって対処していくことになるものと考えております。
 公務員の給与を取り巻く環境は、厳しい状況にありますが、人事委員会といたしましては、本年も、中立かつ公正な人事行政の専門機関として、その使命を果 たしてまいります。
 全人連といたしましても、各人事委員会の主体的な取組を支援するとともに、人事院、各人事委員会との意見交換に十分努めていきたいと考えております。
以 上


【全人連への要請書】

全国人事委員会連合会
 会 長  関谷 保夫 殿
公 務 労 組 連 絡 会
議 長   野村 幸裕

地方人事委員会の勧 告に関する要請書

 貴職の地方公務員の賃金・労働条件の改善に向けた努力に敬意を表します。
 人事院は8月8日、国家公務員一般職の給与にかかわって、俸給表上の給与額では官民賃金がほぼ均衡しているとして、月例給・特別給ともに改定を見送るこ となどを内容とした報告を内閣と国会に対しておこないました。
 「給与臨時特例法(賃下げ法)」によって国家公務員賃金が平均7.8%引き下げられているなかで、実支給額で比較すれば8%近く民間が上回っていること を、人事院みずからの調査で認めながらも、昨年に続いて改善勧告を見送ったことはきわめて重大です。
 一方、地方自治体に対しては、政府は、地方公務員・教職員の国に準じた賃下げを押しつけ、多くの自治体では、地方交付税等が削減されるもとで、やむなく 月例給等の削減に踏み切らざるをえない状況となっています。
 公務労働者の賃下げは民間労働者にも影響を与え、地域経済を疲弊させ、地方自治体財政の悪化にもつながります。政府をあげてデフレ脱却にむけた賃上げが めざされるもと、公務員賃金の改善こそ求められています。
 今後、各地の人事委員会において、本年の勧告にむけた作業がおこなわれますが、下記事項をふまえた努力を強く要請いたします。



1、政府による自治体への給与削減の押し付けに対して、人事委員会としての役割を踏まえ、反対であるとの意見表明をしていただくこと。あわせて、給与削減 の根拠となっている国家公務員・給与臨時特例法の廃止にむけて尽力していただくこと。

2、地方公務員、臨時・非常勤職員の生活実態をふまえ、暮らしを守り、「全体の奉仕者」として誇りと尊厳を持って職務に専念できるよう、賃金・労働条件の 改善・充実をはかる勧告をおこなうこと。

3、「賃上げによる消費拡大」や「地域経済の活性化」において公務員賃金が持つ社会的影響力を考慮し、公務員賃金の改善をはかること。そのため、比較対象 企業規模を「100人以上」にするなど積極的な改善を行うこと。

4、給料表については生計費原則に立った構造とし、職務による格差の拡大、中高年層の給与の抑制をやめるとともに、初任給改善、号給足伸ばしなど必要な措 置を講じること。

5、住民に信頼される中立・公正な地方行政を確保する観点から、競争原理、「成果・業績」に基づく給与・人事管理制度実施などの勧告をおこなわないこと。

6、教員の給与勧告にあたっては、ILO・ユネスコの「教員の地位に関する勧告」をふまえ、生活の不安なしに教育に専念できるよう、その職責と勤務実態に 応じた適切な給与水準を確保すること。

7、超過勤務縮減へ向けた具体的措置を講じること。

8、臨時・非常勤職員について、パート労働法・改正労働契約法の趣旨もふまえつつ、給与をはじめ休暇制度など労働条件の改善、雇用の安定・均等待遇の実現 などにむけて、必要な勧告をおこなうこと。

9、「雇用と年金の接続」にむけては、定年延長を大原則に、希望するすべての職員の雇用が保障できる制度を確立し、生計費をふまえた賃金水準の確保にむけ て、人事委員会としての役割をはたすこと。
以 上