No. 860
   2013年2月8日

地方公務員の賃下げ許さないため意見表明を

= 全国人事委員会連合会に公務労組 連絡会が申し入れ =

 全国から5,500人が参加して「2・8中央総行動」 がとりくまれるなか、公務労組連絡会は8日、自治労連・全教と共同して、地方公務員・教員の賃金・労働条件の改善を求めて、全国人事委員会連合会(全人 連)への要請にとりくみました。
 申し入れでは、とりわけ、安倍内閣によって地方公務員への賃下げがねらわれるもと、全人連としても 何らかの意見表明を求めました。また、職場で増加している臨時・非常勤職員の処遇改善、均等待遇の実現にむけて努力するよう要請しました。


苦しい生活と労働の実態を数字で具体的に訴える

  全人連への申し入れには、公務労組連絡会からは、野村議長(自治労連委員長)、北村副議長(全教委員長)、黒田事務局長、関口・米田の各事務局次長、自治 労連から猿橋書記長、全教から今谷書記長が出席しました。
 全人連側は、関谷会長(東京都人事委員会委員長)をはじめ、中澤(北海 道)、高橋(宮城県)、平間(栃木県)、福間(愛知県)、栗原(大阪府)、林(広島県)、小巻(徳島県)、蓑田(福岡県)、岡部(横浜市)の各人事委員会 代表ほかが出席しました。

要請書を手交 はじめに、野村議長は、要請書(別掲)を関谷会長に手交し、安倍 自公政権が地方交付税を削減しながら、地方公務員の賃下げを強制するもと、全人連としても政府への意見表明をふくめて毅然とした対応を検討するよう求めま した。また、自動車・電機産業を中心に業績が向上し、黒字決算も報道されているなかで、労働者の賃上げの重要性をのべつつ、「被災地をはじめ全国で働く地 方公務員・教職員の奮闘にこたえて、給与等の改善にむけた全人連と全国の人事委員会の尽力を強く求める」と要請しました。

  自治労連の猿橋書記長は、「昨年6月の家計簿調査では、収入が1割減って、食費や被服費、娯楽教養費が大きく減らされている。切り詰めは高年齢層に集中し ている。また、非正規職員が3割を占めているが、月収20万円以下が9割を占め、正規と大きな格差がある。非正規職員の待遇改善へ人事委員会としても積極 的な努力を求める」とのべ、全教の今谷書記長は、「全教の取り組んだ勤務実態調査では、20時間の持ち帰り残業をふくめて超過勤務は月に80時間以上で、 過労死ラインを超える。労働条件の改善へ特段の尽力を求める。6万人を超える臨時的任用の教職員に対して、その実態の検証をふくめて人事委員会としての処 遇改善のとりくみを要請する」と求めました。

 こうした主張に対して、関谷会長からは以下の ような回答が示され、要請を終えました。

【関谷全人連会長の回答】
 ただいまのみなさんからの要請につきましては確かに承りました。さっそ く役員府県市を通じて、全国の人事委員会にお伝えします。
 さて、最近の経済情勢ですが、1月23日に発表された月例経済報告におい て、政府は、景気について「弱い動きとなっているが、一部に下げ止まりの兆しもみられる」との基調判断を示しております。先行きについては、当面は弱さが 残るものの、景気回復へ向かうことが期待される、とする一方で、海外景気の下振れによるリスクや、雇用・所得環境の先行き、デフレの影響等に注意が必要で ある、としております。
 一方、民間賃金については、依然厳しい状況にあることがうかがわれ、先月、厚生労働省が発表した平成24年 の毎月勤労統計調査の速報によりますと、昨年1年間における現金給与総額の月間平均額は、賞与の減などが影響して2年連続の減少となり、現在の調査方法と なった平成2年以降で過去最低となったとしております。また、同じく厚生労働省が発表した主要企業における昨年冬の賞与の調査においては、妥結額が前年比 で3年ぶりのマイナスになったとの結果が示されております。
 すでに始まっている本年の春季労使交渉では、労使の意見の隔たりが大き い中、賃金の引上げ等をめぐって激しい攻防が予想されるほか、65歳までの雇用義務化に伴う対応も重要なテーマになるものと見られ、その行方を注視する必 要があると考えております。
 各人事委員会においては、こうした諸般の状況も踏まえながら、本日の要請内容も含め、本年の勧告に向け た検討を進めていくことになろうかと思います。現在、人事院及び各人事委員会では、本年も例年同様、民間における給与実態を的確に把握できるよう、民間給 与実態調査の実施へ向け、その準備を進めているところです。
 また、年金支給開始年齢の引上げに対応した高齢期雇用施策につきまして は、地方公務員の人事制度全般に関わる重要かつ喫緊の課題であると認識しております。各人事委員会において、国等の動向も踏まえながら引き続き検討を進 め、適切に対応をしていく必要があると考えております。
 全人連といたしましては、本年も各人事委員会の主体的な取組を支援するとと もに、人事院、各人事委員会との意見交換に努めてまいります。地方公務員の給与を取り巻く環境は、大変厳しい状況にありますが、私ども人事委員会は、本年 も中立かつ公正な第三者機関として、その使命を十分に果たしてまいります。

以 上


【全人連への要請書】

2013年2月8日


全 国人事委員会連合会
 会 長  関谷 保夫 殿

公 務 労 組 連 絡 会
議 長   野村 幸裕

日 本自治体労働組合総連合
中央執行委員長 野村 幸裕

全 日 本 教 職 員 組 合
中 央執行委員長 北村 佳久

地方公務員の給与等の改善にかかわる要請書

 日頃から地方公務員の勤務 条件の向上にご努力いただいていることに敬意を表します。
 安倍内閣は1月24日、12年人事院勧告実施の閣議決定とともに、地方公 務員給与について、平均7.8%引き下げられている国家公務員の臨時特例措置にあわせて、地方自治体にも国と同様の措置を要請しました。
  また、1月29日に閣議決定した来年度予算案では、地方公務員給与の減額を前提に地方交付税の大幅削減などが盛り込まれました。本来、地方公務員・教職員 の給与は、労働基本権制約の代償措置である人事委員会勧告制度にもとづき、労使間の自主的な交渉のもとで決定されるべきであり、予算縮減を背景にした政府 の「要請」は、勧告制度を踏みにじるばかりか地方自治への介入にほかならず、断じて許されないものと考えます。
 何よりも、厳しい自 治体財政のなかで、震災から2年が経過する被災地をはじめとして、全国で奮闘する自治体労働者・教職員の労苦に報いるため、賃金・労働条件の改善こそ求め られており、安倍自公政権による公務員給与削減はきわめて重大です。とりわけ、公務員の給与が民間賃金にも影響する点で、国・地方の公務員給与削減は、 「デフレ脱却」という政府がめざす方向とも逆行するものです。
 私たちは、自治体・自治体関連職場で働く正規・非正規すべての労働者 の暮らしを改善するために、貴職が積極的な立場に立ち、下記の要求事項の実現にむけて尽力されることを要請いたします。


1、 政府による地方公務員給与の引き下げに反対し、労働基本権制約の代償機関である人事委員会として意見表明していただくこと。あわせて、給与削減の根拠と なっている給与臨時特例法の廃止にむけて尽力していただくこと。

2、住民の暮らしや子どもたちの教育のため、日 夜、献身的に奮闘している自治体労働者・教職員を励ますとともに、誇りを持って公務公共業務に従事できるように、正規・非正規を問わずすべての公務労働者 の賃金・労働条件を改善すること。

3、民間給与実態調査にあたっては、単に民間の給与水準と機械的に比較するの ではなく、地方自治や地方公共団体のあり方、公務・公共サービスのあり方と密接不可分であることに十分留意して調査をおこなうこと。とりわけ、勤続・経験 年数の加味、雇用形態、民間一時金水準の厳正な把握をするとともに、比較対象企業規模を100人以上にすること。

4、 子どもたちのさまざまな困難に対応している教職員のモチベーションを支えるためにも、教職員賃金の引き下げはおこなわないこと。

5、 公務員総人件費削減のもとで増加している臨時・非常勤職員について、人事院の「指針」等をふまえつつ、給与をはじめ休暇制度など労働条件の改善、雇用の安 定・均等待遇の実現などにむけて必要な対策をおこなうこと。

6、高齢期の雇用施策の策定にあたっては、定年延長 による「雇用と年金の接続」を大原則とし、制度設計にあたっては労使間での十分な協議をおこなうこと。

以 上