No. 856
   2013年1月22日

政府による賃下げの押しつけは断じて認められない

= 地方公務員給与削減の動きに対し て財務省・総務省に要請 =

 昨年来、財務省を中心に地方公務員の給与削減が議論さ れ、「賃下げ法」によって引き下げられた国家公務員給与とのラスパイレス比較を根拠に、地方公務員給与の引き下げをせまる動きが強められてきました。
  自公政権になってからも、麻生財務大臣が就任直後から地方公務員給与削減を公言し、1月15日に開かれた「国と地方の協議の場」では、政府側が、地方6団 体代表らに対して国家公務員と同様の給与削減を要請しています。
 さらに、21日に取りまとめられた財政制度等審議会の報告では、 「国家公務員人件費削減と基調を合わせて地方財政計画の給与関係費を見積もることが必要」として、来年度予算の削減も示唆して、地方自治体への圧力をいっ そう強めています。
 こうしたなか、全労連公務部会は22日、自治労連・全教と共同で、財務省と総務省に対して、「賃下げ法」に連動 した地方公務員の賃下げをおこなわないよう申し入れました。

(財務省要請)公務員の賃下げは「デフレ脱却」の政府方針にも逆行する

  財務省への申し入れには、公務部会の黒田事務局長、自治労連の関口中執、全教の米田中執が参加、財務省側は、主計局地方財政係の芳賀調査主任、有利主査が 対応しました。
 黒田事務局長は、別掲の「要請書」を提出したうえ、「昨年から、賃下げ法に連動した地方公務員給与削減が政府部内で 議論され、昨日発表された財政制度等審議会の報告も、地方自治体に給与削減をせまっている。賃下げ法自体、労働組合との合意もなく労働基本権を踏みにじっ て強行されたものであり、廃止にすべきと主張してきたが、ましてや、それを地方公務員に連動させることは認められない。来年度の政府予算案の策定時期をむ かえて、要請書をふまえた検討を求める」と申し入れました。
 各単産からは、「麻生大臣は、マスコミも動員して世論誘導してきた。地 方自治のもとで、なぜ政府が地方公務員の給与を議論できるのか。地方自治体に対する不当な介入であり、給与は地方自治体の労使で決めるべきだ」「地方は法 律にもとづいて主体性を持って賃金を決めている。人事院勧告にもとづかない7.8%の賃下げとの連動を押しつけることは認められない。賃上げした企業への 減税措置が政府で検討されているが、地方公務員給与削減はそうした政策とも逆行する」などの意見がのべられ、国に連動した賃下げに反対しました。
  財務省側は、「地方自治体の自主性はあるが、給与が住民の税金で賄われていることも考えるべきだ。厳しい財政状況のもとで、国家公務員に対する措置をふま えた検討が求められ、ラスパイレス指数では国家公務員を上回っている実態も検討に反映する必要がある」などとして、「国と地方の協議の場」でも示された政 府方針に固執しました。
 最後に黒田事務局長は、「地方が上回っているというが、減額後の比較に過ぎない。国家公務員は民間よりも 7.67%下回っていることを、人事院も認めている。安倍内閣がめざすデフレ脱却にむけても労働者の賃上げが重要課題であり、賃下げ法の廃止をふくめて政 府は検討すべきだ」と求めました。これに対して財務省側は、「みなさんの意見はうけたまわった。政府予算案策定のなかで検討する」と答えました。

(総務省要請)被災地の復興のためにも消費底上げ・賃金改善が必要

  総務省への申し入れには、自治労連から山口毅副委員長、全教から磯崎副委員長、中川悟公務部会幹事(自治労連書記次長)らが参加、総務省からは自治行政局 公務員部公務員課の前(すすめ)理事官、野口課長補佐が対応しました。
 はじめに中川公務部会幹事が「要請書」(別添)をふまえて申 し入れの趣旨を伝え、「地方公務員の賃金削減は、昨年、厚労省がまとめた労働経済分析が、消費性向の高い中所得者層を増加させ、潜在需要を高める重要性を のべていることにも反し、経済の活性化に逆行するものだ。総務省は、自治労連に対し、各自治体に国家公務員と同様の賃金削減を実施することを要請・強要す ることは考えていないと繰り返し回答してきた。要請の内容を真摯に受け止めるべきだ」とのべました。
 また、磯崎全教副委員長は、 「政府は、震災復興を口実にしているが、今の問題は予算の使い方だ。被災地の復興には消費の底上げこそ重要で、そのためにも賃金改善が必要だ。地方自治体 は、職員の賃金を真剣に労使で協議して決めている。地方の人事委員会勧告制度に反するやり方は、決して認められるものではない。地方交付税削減で、国家公 務員の賃金削減を押しつけるなど断じて許されない」と追及しました。
 前理事官は、「みなさんの要請はうけたまわった」と応じ、要請 を終了しました。

以  上


【財務省に提出した要請書】

2013年1月22日

財 務大臣 麻生 太郎 様

                     全国労働組合総連合公務務部 会
                           日本自治体労働組合総連合
                            全 日 本 教 職 員 組 合

国家公務員に連動した賃金引き下げは行わないことを求める要請書

  日頃から国家予算の編成や税制の企画立案など財務行政にご尽力されていることに敬意を表します。
 さて、日本経済は長引く不況から抜 け出せないまま新年を迎えました。読売新聞社が年末に行った世論調査では、自民党政権に期待することを複数回答で聞いたところ「景気が回復する」が最も多 い回答(74%)となりました。この国民の切実な願いにどう応えるかが問われています。
 長期不況の原因は、大企業が賃金や雇用を抑 えているため、内需の大もとである国民の消費が低迷していることです。ILO(国際労働機関)の「世界賃金報告」は、「賃金カット競争」が「『底辺への競 争』に結びつき総需要を冷え込ませる」と指摘しています。賃下げを放置してきた日本政府の責任は重大です。
 政府は、国家公務員の給 与を昨年4月から給与臨時特例法(賃下げ法)により平均7.8%引き下げました。国民の消費を回復しなければならないときに、それに逆行する行為です。ま た、賃下げ法は「自律的労使関係制度の先取り」と主張し、人事院勧告に基づかずに法案提出を強行したものです。協約締結権回復に向けた公務員制度改革関連 法案が廃案になっていることを踏まえれば、すでに「先取り」という主張は破たんしています。
 それにもかかわらず、貴職が1月15日 の「国と地方の協議」の場において、「7.8%に合わせてもらうのは当然」と地方公務員の給与を国家公務員同様にカットすることを要請したことは、地方自 治体の労使が自主的に賃金を決定する当たり前の原則を否定したものといわざるを得ません。
 地方公務員の大幅な賃下げは、今春闘にお ける民間の労使交渉にも否定的な影響を与え、「賃下げの悪循環」でデフレ不況をさらに悪化させることにつながり、地域経済への影響はより大きく、国と地方 の税収減にもつながります。
 住民の暮らしや子どもたちの教育のため、日夜献身的に奮闘している自治体労働者・教職員を励まし、誇り と尊厳を持って公務公共業務に従事できるよう、下記事項について貴職に要請します。


1. 憲法で保障された公務労働者の労働基本権を踏みにじり、議員立法で強行した憲法違反の「給与臨時特例法」を廃止すること。

2. 地方交付税や義務教育費国庫負担金の減額など、国が地方に対し国家公務員と同様の賃下げを実質的に強制するような財政措置はとらないこと。

以 上



【総務省に提出した要請書】

2013年1月22日

総 務大臣 新藤 義孝 様

                     全国労働組合総連合公務務部 会
                            日本自治体労働組合総連合
                             全 日 本 教 職 員 組 合

国家公務員に連動した賃金引き下げは行わないことを 求める要請書

 日頃から地方自治の発展にご尽力されているこ とに敬意を表します。
 さて、日本経済は長引く不況から抜け出せないまま新年を迎えました。読売新聞社が年末に行った世論調査では、 自民党政権に期待することを複数回答で聞いたところ「景気が回復する」が最も多い回答(74%)となりました。この国民の切実な願いにどう応えるかが問わ れています。
 長期不況の原因は、大企業が賃金や雇用を抑えているため、内需の大もとである国民の消費が低迷していることです。 ILO(国際労働機関)の「世界賃金報告」は、「賃金カット競争」が「『底辺への競争』に結びつき総需要を冷え込ませる」と指摘しています。賃下げを放置 してきた日本政府の責任は重大です。
 政府は、国家公務員の給与を昨年4月から給与臨時特例法(賃下げ法)により平均7.8%引き下 げました。国民の消費を回復すべきときに、それに逆行する行為です。また、賃下げ法は「自律的労使関係制度の先取り」と主張し、人事院勧告に基づかずに法 案提出を強行したものです。協約締結権回復に向けた公務員制度改革関連法案が廃案になっていることを踏まえれば、すでに「先取り」という主張は破たんして います。
 それにもかかわらず、麻生副総理兼財務大臣が、1月15日の「国と地方の協議の場」において「地方公務員の給与を国家公務 員と同様に、平均7.8%カットすることを求めた」と伝えられており、地方自治体の労使が自主的に賃金を決定する当たり前の原則を逸脱したものといわざる を得ません。
 地方公務員の大幅な賃下げは、今春闘における民間の労使交渉にも否定的な影響を与え、「賃下げの悪循環」でデフレ不況 をさらに悪化させることにつながり、地域経済への影響はより大きく、国と地方の税収減にもつながります。
 住民の暮らしや子どもたち の教育のため、日夜献身的に奮闘している自治体労働者・教職員を励まし、誇りと尊厳を持って公務公共業務に従事できるよう、下記事項について貴職に要請し ます。


1. 憲法で保障された公務労働者の労働基本権を踏みにじり、議員立法で強行した憲法違反の「給与臨時特例法」を廃止すること。

2. 地方公務員の給与について、「総務省から各地方公共団体に対して、今回の国家公務員に係る時限的な給与削減措置と同様の措置をするよう要請することや、強 制することは考えていない」との立場を堅持すること。

以 上