No. 855
   2012年11月16日

解散目前で退職手当削減法の成立を強行

= 衆・参の委員会と本会議を1日に 押し込める前代未聞の暴挙 =

 臨時国会に提出されていた国家公務員の退職手当削減法 案は、衆議院の解散がひかえる16日に審議入りし、午前中の衆議院総務委員会での趣旨説明・質疑からはじまり、午後の参議院本会議での採決までを1日でや りあげ、成立を強行しました。
 こうした法案審議は、民主・自民で合意して強行したもので、断じて認められません。
  公務部会は、衆参の総務委員会への傍聴行動にとりくむとともに、退職手当削減法の強行成立をうけて、緊急の抗議集会を開き、きわめて乱暴な国会運営に抗議 するとともに、来るべき総選挙では、公務労働者の要求実現ができる政治に転換していく決意を固め合いました。

官民の 退職金引き下げの悪循環を招くと厳しく指摘

 10時30分から 開会された衆議院総務委員会では、橘慶一郎(自民)、福嶋健一郎(生活)、西博義(公明)、塩川鉄也(共産)、柿澤未途(みんな)、吉泉秀男(社民)の各 議員が質問に立ちました。
 共産党の塩川議員は、はじめに、「公務員の退職手当を400万円以上引き下げるきわめて重大な法案を、わ ずか1日で衆参の委員会と本会議で採決する乱暴な委員会運営に抗議する」とのべたうえ、公務の特殊性をふまえた検討が必要にもかかわらず、官民較差を唯一 の根拠にして削減する不合理や、公務員総人件費削減方針のもとで、早期退職募集制度が人減らしの道具に使われる危険性を指摘し、政府の見解を求めました。

  これに対して、樽床総務大臣は、「官民の退職給付の格差を解消するのが今回の削減の第一の目的だ。結果として総人件費削減につながることになる」とのべ、 「早期退職募集制度は、無理やりに退職を求めるものではない。リストラをどんどんやることなどはまったく念頭にない」と答弁しました。
  塩川議員が、「今回の退職手当削減や早期退職募集制度は、そもそも根底に民主党の公約である公務員総人件費2割削減の方針がある。この方針こそ撤回せよ」 とせまりましたが、樽床大臣は、「結果として総人件費削減になるかもしれない」などとまともに応えませんでした。塩川議員は、「公務員人件費はムダづかい などではない。2割削減は、人命をおびやかすことになる。大型公共事業のムダづかいこそあらためるべきだ」と厳しく指摘しました。

  約1時間にわたる各議員からの質問ののちに討論に入り、共産党の塩川議員が、反対討論に立ちました。塩川議員は、公務員の退職手当は単なる民間準拠ではな く、公務の特殊性などさまざまな観点からの検討が必要であり、人事院の調査結果を唯一の根拠にして引き下げることは認められないこと、早期退職募集制度 は、公務員総人件費2割削減の方針のもとでは、国家公務員に退職を強要する仕組みになり得ること、独立行政法人や地方公務員にも退職手当の削減をせまるこ とで、官民の退職金引き下げの悪循環に拍車をかけることなどを理由にあげ、法案に反対しました。

  その後、ただちに採決に入り、共産党、社民党とともに、もっと引き下げるべきとの立場から反対したみんなの党を除く各党の賛成多数で法案は可決されまし た。
 総務委員会終了後、12時から開かれた衆議院本会議に退職手当削減法案が緊急上程され、賛成多数で可決され、法案は参議院に送 付されました。

連 合・公務労協との合意を口実に使って法案を強行

 午後からは、13時30分に参議院総務 委員会が開かれ、末松信介(自民)、木庭健太郎
(公明)、主濱了(生活)、寺田典城(みんな)、山下芳生(共産)、又市征治(社 民)、行田邦子(みどり)の各議員が質問に立ちました。
 共産党の山下議員は、「労働基本権を奪ったまま給与を引き下げ、そのうえ退 職手当を400万円も引き下げる今回の措置にかかわって、労働組合との納得と合意は得られたのか」とただしました。

  樽床大臣は、「関係者と話し合って理解してもらっている」などとのべ、「労働組合のことを聞いている。どこの労働組合の理解を得ているのか」と山下議員が さらに追及すると樽床大臣は答弁不能となり、稲見大臣政務官が答弁に立ち、「労働組合と十分協議して誠意を持ってやってきた。この問題では連合・公務労協 と合意している」と答弁しました。
 これに対して山下議員は、「合意も納得していない労働組合がある。公務員は労働者だ。労働者の権 利を羽毛のように軽く考えるやり方は認められない。民主党は、労働者の権利をきわめて軽く扱う政党だ」と厳しく指摘しました。

  また、山下議員は、「野田首相は、消費税増税のために、みずからの身を切ると言ってきたが、退職手当削減もその流れだ。身を切るならば、累計で5,700 億円にもなる政党助成金を廃止せよ。退職手当で得られる財源は190億円だが、民主党は165億円の政党助成金をもらっている」とせまると、樽床大臣は、 「結果としては、身を切ることになるが、退職手当削減の出発点は官民の格差をなくすことだ。政党助成金の削減は、政党間で話し合うべき課題だ」などと逃げ の答弁に終始しました。

 各党議員の質疑が終局した後、共産党の山下議員が反対討論に立ち、 官民較差を唯一の根拠にした今回の退職手当削減の問題点を指摘し、とりわけ、国家公務員の使用者代表である樽床大臣が、この問題をめぐる労使交渉の状況さ えも理解していなかったことを厳しく批判し、退職手当削減法案に反対しました。
 採決では、衆議院と同じく、共産党、社民党、みんな の党を除く各党の賛成多数で法案は可決されました。

 法案は、15時30分から開かれた参議 院本会議で採決され、投票総数230票のうち、賛成212票、反対18票で可決されました。
 以上の審議経過をたどり、国家公務員退 職手当削減法は成立し、来年1月1日からの施行が確定することとなりました。

緊急抗議集会〜談合政治による前代未聞の暴挙に怒り示す

 公務部会の呼びかけで、 15時45分から参議院議員面会所で緊急の抗議集会を開き、50人が参加しました。

 国公労連・花岡中央執行委員 の進行のもと、日本共産党の山下芳生参議院議員が、本会議閉会直後に集会に駆けつけ、「委員会の開催も昨夜急にきまった。国会が自殺するようなものにほか ならない。労働基本権が制約され、手足を縛ったままで頭をたたくようなもの。民主党は権利を軽くみている。組合との協議もなく強行するなど、何重にもやっ てはならないことをやった。来月16日の投票日には怒りを爆発させよう」とのべました。

 各 単産からは、国公労連全司法の門田敏彦委員長、自治労連の関口裕志中央執行委員、全教の波岡知朗中央執行委員が発言し、それぞれ、「残念で悔しい」「信じ られない暴挙だ」「怒りがふつふつとわいてくる」「総選挙にむけてたたかう」など思い思いの言葉で、前代未聞の暴挙への怒りをあらわしました。

  最後に、公務部会の黒田事務局長は、緊急の呼びかけに応えて集まった参加者に感謝しつつ、「退職手当削減法案の審議強行の暴挙に大きな怒りを感じる。衆議 院総務委員会・本会議、参議院総務委員会・本会議の4つの会議を1日に押し込めて法案を通すのは、憲政史上まれにみる暴挙だ。これが談合政治のなれの果て であり、この怒りを来るべき総選挙で形にあらわそう」とのべ、引き続き奮闘していくことを呼びかけました。

以 上