No. 850
   2012年10月12日
有識者会議が全国市長会からヒアリング

= 地方公務員の協約締結権、消防職 員の団結権回復に後ろ向き =

 協約締結権等の回復にむけた「地方公務員の自律的労使 関係制度に関する会議」(以下、有識者会議)が、引き続き総務省で開催されています。
 10月12日の第5回会議では、全国市長会か らのヒアリングがおこなわれましたが、全国知事会・全国町村会と同様に、協約締結権回復に否定的な立場からの意見がのべられ、拙速な検討に反対しました。
  有識者会議は、労働組合・地方三団体等からのヒアリングを終え、今後、論点を整理したうえ、議論をすすめることとなっています。

「もの さし」としての勧告制度の存続を強く主張する市長会

 有識者会議に は、渡辺章氏(座長・労委協会理事長)、下井康史(筑波大学大学院教授)、平勝典(元郵政省東北郵政局長)、西村美香(成蹊大学教授)、長谷川真一(日本 ILO協議会理事)の各委員が出席し、ヒアリングでは、南佳策天理市長(全国市長会行政委員会委員長・地方公務員制度改革検討委員会委員長)から意見聴取 しました。
 南市長は、「なぜ今、新たな労使関係制度に移行する必要があるのか」とのべ、「地方公務員の実情や特性、住民サービスへ の影響等を十分ふまえて検討することが必要」「協約締結権の付与は国民・住民の意識と大きなかい離がある」などと主張しました。そのうえで、労働基本権を 付与した場合の交渉の長期化、コストの増大などに懸念を表明し、拙速な検討に反対しました。
 有識者委員からは、複数の労働組合があ るところの交渉や妥結の状況、組織率の違いが労使交渉に影響を与えるのかどうか、市町村合併の際の勤務条件の調整など、現場の実態についての質問が相次ぎ ました。
 これらに対し、南市長は、「天理市には4つの組合があり、個々に交渉を行っているが、組合同士の意思疎通がはかられている ので、大きな問題は抱えていない」と答えました。
 引き続いて、委員からは、「労使関係制度が安定しているならば、協約締結権を付与 しても今とさほど変わらないのではないのか」「人件費の削減を推し進めてきたというが、職場の雰囲気は悪くないのか、職員との信頼関係はあるのか」「全国 消防職員協議会の場が活用されているなら、団結権や協約締結権を付与しても、そんなに変わらないのではないか。考えているような懸念の中身がよくわからな い」などの発言がありました。
 これに対して、南市長は逆に、「今なぜ勧告制度をなくそうとするのか、そのことこそ疑問だ。正直、今 のままでいいのではないかという思いがある」と反論し、「公務員の給与が適正かどうかについては、市町村にはものさしがなく、勧告が唯一のよりどころだ。 消防職員は他の職種とは違う。入職したら、ずっと同じ職場で、消防団など地域でのつながりも大きい」と答えました。
 渡辺座長は、 「勧告制度の定着にかかわる評価はわかるが、それは天井を決めていることでもある。他方、引き下げる場合、職員の生活への影響も考えねばならず、労働組合 との交渉・協議が必要だ。その際、引き下げの理由、資料の提示などが必要となるが、それをコスト面だけの負のイメージと決めつけていないか。適正な手続 き、プロセスをつくっていく努力が必要ではないだろうか」として、あらためて見解を求めました。
 しかし、南市長は、「その前に、な ぜ、人勧制度を改めるのか知りたい」と答えるだけで、堂々めぐりでした。

以 上