退職手当削減の閣議決定強行に抗議
総務省との交渉には、公務労組連絡会から野村議長、北村副議長、黒田事務局長、米田・関口の各事務局次長、国公労連からは渡辺中執が参加し、総務省側は、
人事・恩給局総務課の越尾総括課長補佐、小泉課長補佐ほかが対応しました。 はじめに、野村議長は、「退職手当削減にかかわって、7
日に強行された閣議決定の撤回を求める」としたうえ、「昨日、人事院勧告が出された。4月の時点で公務員賃金が民間を7.67%下回っていると人事院も給
与報告で認めているところだ。このような人事院勧告・報告の取り扱いにあたっては労働組合と十分な交渉・協議をおこない、使用者としての責任ある対応を強
く求める」とのべ、別添の要求書を提出しました。 黒田事務局長は、要求書にかかわって以下の点を強調しました。 ○
月例給・一時金の改定を見送ったのは、人事院が特例法による減額前の給与額と民間賃金とを比較した結果だ。一方では、7.67%の官民較差があることを
人事院自身が認めている。こうした報告が示されていることや、公務労働者の生活が悪化していること、加えて、公務員制度改革関連法案の審議・成立の見通し
はまったくなく、協約締結権ももどっておらず、「自律的労使関係の先取り」という臨時特例法の根拠が破綻していることから、政府は臨時特例法の廃止を決断
せよ。 ○ 勧告された55歳を超える職員の昇給・昇格の抑制は、年齢による賃金差別であるとともに、評価制度の信頼性もなくす点など
から認められない。ベテラン職員への狙い撃ちは、職員にとっては働きがいをなくし、効率的な行政の遂行にも影響が出る。 ○ 臨時・非
常勤職員の賃金・労働改善を求める。勧告や報告には触れられていないが、公務・民間ともにきわめて厳しい環境にある。「夏季重点要求」でも求めてきたとこ
ろだが、休暇制度の改善をはじめ、正規職員との均等待遇にむけて使用者として努力せよ。 交渉参加者からは、「退職手当の削減を総務
省が地方にも要請している。地方自治で決めるのが基本であり介入は認められない。人事院の調査でも2万8千円以上も民間より少ないことが明らかとなった。
実際にもらっている額で比較して勧告すべきだ」「臨時教員が職場に増え、ベテラン教員の果たす役割が大きくなっている。その点でも55歳を超える職員の給
与抑制は認められない」「被災地で奮闘している職員をふくめて、400万円もの退職手当削減に怒りの声が上がっている。閣議決定は撤回せよ」などと求めま
した。 これに対して、越尾総括課長補佐は、「退職手当削減に対する厳しい意見は重く受けとめたい。しかし、閣議決定の撤回は難し
い」とのべたうえ、勧告の取り扱いについては、「今後、速やかに給与関係閣僚会議が開催され、取り扱いの検討に着手される旨を期待したい。政府としては勧
告尊重が基本であることには変わりない。一方で、特例措置が行われていることをふまえ、みなさんの意見も十分に伺いながら国政全般を見ながら検討をすすめ
る」と回答しました。 最後に野村議長は、「給与臨時特例法は、人事院勧告にもとづかず、最終的には労働組合との交渉にももとづかず
議員立法で強行された。労働基本権を幾重にも踏みにじってきた賃下げ法は廃止するのが、使用者としてとるべき道だ。本日提出した要求書をふまえ、引き続き
公務労組連絡会と十分な交渉・協議をすすめながら、勧告・報告の取り扱いについて検討をすすめるよう求める」とのべて交渉を終えました。
厚生労働省・財務省にも要請
総務省とともに、給与関係閣僚会議の一員である厚生労働大臣と財務大臣にあてて同趣旨の要求書を提出しました。 厚生労働省で対応し
た谷中労使関係担当参事官は、「今後、閣議が開かれて勧告の取り扱いを検討する。今年は、特例措置がおこなわれ、公務員制度改革関連法案が審議中のなどの
状況をふまえて検討されるものと思う。みなさんの要求はしっかりと受けとめさせてもらう」とのべました。 また、財務省への要請で
は、大臣官房地方課の高橋課長補佐、榊広報連絡係長が対応し、「みなさんの要請はうけたまわった。関係部局に伝えるとともに、安住大臣はじめ政務三役にも
伝えたい」と表明しました。
以
上
【政府あて要求書】
2012年8月9日
内
閣総理大臣 野田 佳彦 殿 総務大臣 川端 達夫 殿
公務員賃金等に関する要求書
人事院は8日、内閣と国会に対して、国家公務員一般職の俸給表上の給与額にもとづく官民較差が僅少であるとして月例給・一時金の改定を見送り、55歳を超
える職員の昇給抑制措置などを求める勧告・報告をおこないました。 国家公務員の給与が、給与臨時特例法(賃下げ法)にもとづいて、
今年4月から平均7.8%の引き下げられたことで、公務労働者の生活は一気に悪化しています。もとより、政府は、賃下げ法を「自律的労使関係制度の先取
り」と主張して、人事院勧告にもとづかずに法案提出を強行したものですが、いまだに協約締結権回復にむけた公務員制度改革関連法案が成立していないことを
ふまえれば、すでに「先取り」とする主張は破綻しており、賃下げ法はただちに廃止されるべきです。 加えて、8月7日に閣議決定され
た国家公務員の400万円を超える退職手当の削減は、退職後の生活を不安に陥れるばかりか、若年層をふくめて働きがいをなくすものであり、断じて認められ
るものではありません。今後、独立行政法人職員、地方公務員や教員、公務関連労働者への波及は避けられず、法外な削減額による経済への影響も懸念されま
す。 こうしたもとで出された本年人事院勧告は、賃下げ法による減額措置で4月1日時点で実際に7.67%の官民較差が生じているこ
とを人事院みずからが認めながらも、改善勧告が見送られたという点は断じて認められません。また、55歳を超える職員に対する昇給・昇格抑制は、経験豊富
なベテラン職員に対するいわれのない賃金差別であるばかりか、評価制度そのものの信頼性を失わせるものであり、きわめて重大な問題を持っています。
以上の点をふまえ、下記の要求を取りまとめました。使用者として、公務労働者の賃金・労働条件改善に全力をあげるよう求めます。
記
1、
労働基本権制約の代償措置としての人事院勧告制度にもとづかず、議員立法で強行した憲法違反の「給与臨時特例法」を廃止すること。 2、
職員の働きがいや仕事に対する誇りとともに、公務員賃金の持つ社会的影響力をふまえ、公務労働者の賃金・労働条件の改善にむけて、12年人事院勧告・報告
の取り扱いは労働組合との交渉にもとづく合意のもとで決定すること。 3、年齢による賃金差別となる55歳を超える職員の昇給抑制など
はおこなわないこと。 4、臨時・非常勤職員の賃金・労働条件改善をはかり、均等待遇を実現すること。 5、国家公
務員の退職手当を400万円以上引き下げる閣議決定を撤回すること。 6、地方自治体、独立行政法人等の賃金決定に不当な介入・干渉を
おこなわないこと。 7、労働基本権の全面回復など憲法とILO勧告に沿った民主的公務員制度を確立すること。 |