No. 839
    2012年8月2日
退職手当400万円削減で繰り返し政府を追及

= 夏季重点要求をめぐって総務省と 最終交渉 =

 公務労組連絡会は2日、夏季重点要求をめぐって総務省 との最終交渉に臨みました。
 交渉では、賃金や労働条件の改善、臨時・非常勤職員の処遇改善など夏季要求全般にわたって回答を受ける とともに、退職手当の大幅削減に反対し、総務省に手当削減の撤回を求めて追及を強めました。
 こうしたもと、野田内閣は、来週にも 400万円を超える退職手当削減の政府方針を閣議決定する準備をすすめています。引き続き配置されている座り込み行動をはじめ、最後までねばり強いたたか いで退職手当削減の断念をせまっていく必要があります。

合計で 約16万筆の政府あて要求署名を提出

 総務省との最終交渉には、公 務労組連絡会から野村議長、北村副議長、黒田事務局長、米田・関口の各事務局次長、国公労連からは高木中執が参加し、総務省側は、人事・恩給局総務課の越 尾総括課長補佐、小泉課長補佐ほかが対応しました。
  はじめに、野村議長は、「7月17日に示された中間的回答は、不満な内容にとどまった。要求書に示した通り、賃金改善をはじめ要求はいっそう切実になって きている。また、退職手当の削減にかかわっても、政府の回答は納得のいかないものであり、職場ではいっそう怒りがひろがってきている」とのべ、政府にあて た要求署名96,274名分(累計で160,613名分)を積み上げました。そのうえで、夏季重点要求に対する最終的な回答を求めました。

  越尾総括課長補佐は、要旨、以下のように回答しました。
●(公務員賃金の改善等について)国家公務員の給与については、労働基本権が なお制約されている現行制度の下においては、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢である。
  本年の人事院勧告については、現時 点で情報はないが、仮に人事院勧告が出された場合には、本年4月から、給与改定・臨時特例法により、給与の特例減額支給措置が講じられていることも踏まえ て対応を検討していくこととなると考えている。
●(労働時間短縮、休暇制度改善等について)超過勤務の縮減については、これまで にも申し上げてきたとおり、職員の健康、士気の向上はもとより、自己研鑽や家族との時間の確保のために重要であることから、今後とも取り組んでまいりた い。
   総務省では、こうした観点から、本年3月、超過勤務の管理・縮減のための具体的な取組策をとりまとめ、省内で推進するとともに、これを参考に、7月には 政府全体として超勤管理に取り組んでいくよう各府省にも適切な取組を要請したところであり、これらのとりくみの推進も含め、引き続き、超過勤務縮減のため のとりくみをすすめてまいりたい。
●(高齢期雇用・定年延長について)本年3月には、国家公務員制度改革推進本部等において、「国家 公務員の雇用 と年金の接続に関する基本方針」が決定されたところだ。「基本方針」では、年金の支給開始年齢の65歳への段階的な引き上げ期間中の一定の時期に、民間の 状況等を勘案し、昨年9月の人事院からの「意見の申出」を踏まえつつ、雇用と年金の在り方について改めて検討することとされている。
   ただ、現時点においては、民間では継続雇用制度による対応が主流であり、定年の引き上げが僅少であるという現状を踏まえ、「基本方針」にあるように、再 任用の義務化によって雇用と年金の接続を図ることが適当と判断されたものと承知している。
  いずれにせよ、国家公務員の雇用と年金 の接続に向けた措置については、国家公務員制度改革推進本部を中心に、空白期間が生じないよう政府全体としてとりくんでいきたい。
   60歳以上の職員の給与の在り方については、今年3月の国家公務員制度改革推進本部及び行政改革実行本部において決定された「国家公務員の雇用と年金の 接続に関する基本方針」において、「再任用された職員の給与の在り方に関しては、総人件費改革や職員の能力活用の観点も踏まえつつ、別途検討するものとす る」とされていることを踏まえ、引き続き、政府全体で検討してまいりたい。
●(退職手当の見直し)退職手当の見直しについては、 先月23日、 退職手当担当大堀補佐から、退職手当の見直し内容等についての現時点の考え方についてお話させていただいたところであるが、このことについては、後日、あ らためて話合いの機会を設け、お話させていただく予定である。
●(非常勤職員の処遇改善について)これまでも申し上げているとお り、まずは、一昨年から導入した「期間業務職員制度」、「育児休業制度」を適切に運用してまいりたい。
  今後とも、職員団体の 意見も聞きながら、処遇改善について検討してまいりたい。
● (民主的な公務員制度と労働基本権の確立について)国家公務員制度改革基本法に基づく自律的労使関係制度を措置するための法案を昨年6月3日に国会に提出 し、本年6月1日に衆議院本会議において審議が始まったところである。政府としては、本法案をできるだけ早く成立させていただきたいと考えている。
● (健康・安全の確保について)総務省としては、昨年4月に国家公務員福利厚生基本計画の改正を行うとともに、e−ラーニングによるメンタルへルス講習の実 施を計画するなど、メンタルヘルス対策の充実・強化をはかっているところであり、引き続き、これらの取組を進めてまいりたい。

給与臨 時特例法はただちに廃止せよ

 この回答に対して、黒田事務局長は、 以下のように指摘しました。
○  前回の中間交渉につづいて、今回もまた、「勧告制度の尊重が基本」との回答が示された。「給与臨時特例法」と同時に提出された公務員制度改革関連法案 は、今国会でも成立の見通しはなく、来週には人事院勧告が出される状況にある。自律的労使関係の「先取り」という、臨時特例法のそもそもの前提が崩れてき ているなかで、臨時特例法を廃止することこそ政府のとるべき道だ。そのうえで、勧告が出れば、労使間の話し合いにもとづいて取り扱いを決めていくよう求め る。
○ 臨時・非常勤職員をめぐっては、3年雇い止めや休暇制度などの改善はあるが、賃金は低く、「官製ワーキングプア」の実態は改 善されていな い。先日、地域最低賃金の目安額が決定されたが、きわめて不十分な改善にとどまり、公務・民間の非正規労働者の賃金改善は遅々としてすすんでいない。こう したときだからこそ、非常勤職員の賃金改善にむけて、使用者として本腰で取り組むべきであり、その出発点として、政府としての実態調査なども検討すべき だ。
○ 「雇用と年金の接続」について、国家公務員制度改革推進本部を中心に検討されていることは承知しているが、労働条件に直接か かわる問題で あり使用者・総務省として主体的な役割を果たせ。とりわけ、今後の制度検討にあたっては、労働組合との十分な交渉・協議をもとめる。その際、定年延長を基 本にして、働きがいをもって働き続けられる職場環境の整備に努力するよう求める。
○ 退職手当削減は断じて認められない。前回の交渉 では、「労働 組合との合意にむけて誠心誠意努力する」との回答を受けたところだが、そうした努力がまったく感じられない。この間の交渉では、官民較差を唯一の根拠にし て、それにもとづいて見直しすることが「国民の納得と理解」を得られるとする主張が繰り返されただけだ。それでは職員は納得できない。将来への不安をひろ げ、働きがいを失わせることが使用者としてやることか。合意が得られなければ退職手当削減の方針は白紙にもどすよう重ねて要求する。
  各参加者からは、退職手当の大幅削減に追及が集中し、「官民較差を唯一無二の根拠にするだけで、使用者としての説明責任がまったくない」「使用者である以 上、職員の生活にどのように影響するかを考えるべきだ」などと政府にせまりました。

労働組 合との納得と合意を得るために十分な交渉時間を保障せよ

  越尾総括課長補佐は、「給与特例法の廃止はこの間の交渉でもうかがってきたところだ。法律は議員立法で成立したもので、重いものであると受けとめる。人事 院勧告が出れば、みなさんとも話し合いながら、その扱いについて決めていきたい。非常勤職員の実態調査については検討していきたい。高齢雇用の問題はみな さんとも認識が同じだ。総務省として主体的な役割を果たしたい」と回答しました。
 一方、退職手当の大幅削減にかかわっては、官民較 差にもとづく手当見直しの立場から一歩も出ない回答を繰り返しました。
  これに対して黒田事務局長は、「退職手当が長期勤続への報償(ごほうび)というのは『天皇の官吏』だった戦前の公務員制度から抜け出ていない。かたや自律 的労使関係の『先取り』などといって賃下げをしながら、退職手当は旧態依然とした考え方のもと、労働組合との合意がなくとも引き下げを強行するというの は、二枚舌そのものだ」と厳しくせまりましたが、越尾総括課長補佐は、「退職手当は、長期勤続への報償、生活保障、賃金後払いとしての性格が渾然一体と なっている。だからみなさんとも話し合いをしていく」との回答を繰り返しました。
 黒田事務局長が、「合意がなければ強行しないこと を約束しろ」 と求めると、「できるだけ合意できるように努力する。しかし、仮に全面的な合意に至らなくとも判断する時期は来る」とのべるなど、強硬な態度を変えません でした。さらに、黒田事務局長が、「有識者会議で指摘された段階的引き下げ措置は、いまだに具体的なものが示されていない。職員に納得を得たいというのな ら、段階的な引き下げ措置をふくめて提示すべきではないのか」と質すと、越尾総括課長補佐は、「検討中であり、まとまればみなさんに示す」としたことか ら、「段階的措置が示されてから、その内容について協議するために、十分な時間が保障されるのか」と強くせまりましたが、「できるだけ努力する」としか回 答がありませんでした。
 最後に野村議長は、「勧告制度尊重が基本とするのならば、勧告にもとづかずに労働基本権をふみにじって強行 した給与臨時 特例法を廃止すべきだ。そのことを決断しなければ、現行制度との矛盾がさらにひろがるだけだ。来週にも人事院勧告が予定されている。その内容をふまえて、 勧告後にあらためて要求書を提出する。その際は、引き続き、使用者としての責任ある対応を求める」とのべたうえ、「退職手当削減にかかわっては、今日のや り取りでも納得のできる回答はなかった。後日、あらためてこの問題に集中した交渉を配置するとともに、労働組合との納得と合意をめざす立場から、誠意ある 回答を示すよう強く求める」として交渉を閉じました。

以上