No. 836
    2012年7月17日
夏季重点要求めぐって政府・人事院と中間交渉

= 総務省に対して退職手当削減の検 討作業中止をせまる =

 夏季闘争最大の中央行動を来週25日にひかえて、公務 労組連絡会は17日、夏季重点要求をめぐって総務省・人事院と交渉しました。
 とりわけ、総務省交渉では、国家公務員の退職手当の大 幅削減がねらわれるなかで、400万円を超える手当削減の中止を重ねて求め、使用者としての説明責任を追及しました。
 これに対し て、総務省側は、「みなさんの重大な関心事項であり、あらためて交渉を持ちたい」と回答したことから、引き続き総務省交渉を配置し、手当削減の問題点を徹 底追及していきます。

(総務省交渉)退職手当削減反対署名6万4千人分を提出

  総務省との交渉には、公務労組連絡会から野村議長、北村副議長、黒田事務局長、関口・米田の各事務局次長、また、国公労連から渡辺中執が参加、総務省側 は、人事・恩給局総務課の越尾総括課長補佐、小泉課長補佐ほかが対応しました。
 はじめに、野村議長は、退職手当にかかわって、 「400万円を超える手当の削減は、退職後の生活設計の変更をせまられるほど重大問題だ。職場では、法外とも言える退職手当削減の提案に怒りの声が急速に ひろがっている」として、5月から取り組んできた総務大臣あての要求署名64,339名分を提出したうえ、「署名に託された職場の声をしっかりと受けと め、使用者としての責任ある対応を求める」とのべ、夏季重点要求に対する中間的な回答を求めました。
 越尾総括課長補佐は、主に以下 のように回答しました。
● 国家公務員の給与については、労働基本権がなお制約されている場合は、人事院勧告制度を尊重することが基 本である。政府としては、人事院勧告が出れば、国政全般の観点から検討し、みなさんの意見を聞きながら対応する。
● 超過勤務の縮減 に当たっては、職員の健康、士気高揚、自己研鑽、家族との団らんなどから、引き続き、関係機関とも連携しつつ、政府全体の超過勤務縮減にとりくんでいく。 なお、総務省として、上司・部下の間で超過勤務の必要性の共有化をすすめ、効果が見られたことから、7月に各府省の担当者会議を開いて、各省にも要請した ところだ。節電の必要性からも、よりいっそう超過勤務縮減にとりくんでいく。
● 高齢雇用対策については、先日、基本方針が決定した ところである。民間では雇用継続が多数であり、公務もこの方法が適切と考える。なお、65歳までの定年年齢の延長については、人事院の「意見の申出」をふ まえて、今後、あらためて検討する。
● 退職手当の見直しは、みなさんにとっては重大な関心事項であり、あらためて交渉の場をもちた い。
● 非常勤職員の処遇改善に当たっては、期間業務職員制度が創設され、育児休暇制度の改善などがはかられたところであり、適切な 運用をすすめたい。
● 労働基本権の回復にむけては、公務員制度改革関連法案が国会に提出されており、6月1日に審議入りした。早期 成立にむけて努力していきたい。

退職手当は「給与の後払い」であり労働条件そのものだ

  これに対して黒田事務局長は、以下の点を追及しました。
○ 行政改革実行本部によって、国家公務員の新規採用の6割削減の方針などが 決定された。定員削減が長時間・過密労働など個人の努力に転嫁され、心身の健康破壊も深刻だ。新規採用6割削減の撤回をはじめ、公務サービスや教育の向上 にむけて、仕事に見合った公務員の増員を求める。
○ 「給与臨時特例法」による大幅な給与・一時金の引き下げで、職場には政府への怒 りが渦巻いている。しかも、一部の報道では、景気対策の補正予算の財源として、独立行政法人や教職員・地方公務員の給与削減分を財源に使うことなども議論 されている。「賃下げの悪循環」が地域経済を冷え込ませ、景気の悪化を招く点からも、「給与臨時特例法」は廃止せよ。
○ 人事院が定 年延長の「意見の申出」をおこなったにもかかわらず、政府は再任用「義務化」との対応方針を決定した。1年更新の再任用制度では選別採用が懸念され、無年 金のもとで安定した雇用が求められており、定年延長の実現とともに、働きがいをもって働き続けられる職場環境の整備を求める。
○ 退 職手当削減は断じて認められない。なぜ400万円以上の引き下げが必要なのか、使用者としての納得できる回答を示せ。また、退職手当は「長期勤続に対する 報償」との態度を政府はとっているが、住宅ローンの返済など退職後の生活を支えており、明確に賃金の後払いとしての性格を持っている。そのことから、手当 の引き下げは労働条件の不利益変更であり、労働組合との合意がなければ強行しないことを明言せよ。
 さらに、交渉参加者からは、「退 職手当は、人事院が示した官民較差をそのまま削減しようとするもの。民間との単純比較だけではなく、公務の特殊性などを国民に訴えるべきだ」「有識者会議 の議論は、402万円の削減ありきの議論だ。まともに検討されていない。退職手当を想定してローンを組んでいる場合もあり、今年度から削減することには道 理はない」「退職手当削減は、若年層にとっても、将来設計や働きがいにかかわる問題だ。不利益変更の一方的押しつけだ。職場では大きな怒りの声が上がって いる。その声を真摯にうけとめよ」など、退職手当削減に追及が集中しました。
 越尾総括課長補佐は、「公務員の退職手当は、長期勤続 報償、生活保障、賃金後払いとしての性格が混合している。ぎりぎり詰めていくと、勤務条件にはあてはまらないが、みなさんとも十分に話し合いをさせてもら う」とのべたことから、黒田事務局長は、「民間では退職手当削減は労働協約事項となる。政府が提出している公務員制度改革関連法案をふまえれば、協約事項 となり、労働組合との合意が必要だ。一方的な不利益変更は認められない」とせまると、越尾総括課長補佐は、「協約事項となるかどうかは、法律が成立してか ら検討される」などと回答しました。
 野村議長は、「退職手当を『報償』(ごほうび)などとする考え方は、前近代的な公務員制度にほ かならず、3つの性格があったとしても、公務労働者の権利をふまえたうえで、制度のあり方を議論すべきだ」と指摘し、北村副議長は、「合意と納得を得るた めに、誠心誠意努力するのが使用者としての役割だ」とのべました。
 越尾総括課長補佐は、「誠心誠意努力するつもりだ。他の要求につ いても、最終回答にむけて誠意を持って検討していきたい」と回答しました。
 最後に野村議長は、「本日は、要求に対する中間的な回答 としてうかがった。賃金や労働条件改善など、示された回答は切実な要求に正面から答えておらず、最終回答にむけてさらに誠意ある検討を求める」としたうえ で、退職手当にかわわって「あらためて手当削減方針の撤回を求める。重大なことは、職員の働きがいにかかわるという点だ。被災地の復旧・復興にむけた公務 労働者の奮闘、不足する人員体制のなかでの日頃の職場での苦労をふみにじる退職手当削減は断じて認められない。また、地方公務員・教員にも波及し、数多く の公務関連労働者、民間労働者への影響も避けられない。地域経済や景気にも影響する。拙速な政府決定には断固反対する」とのべ、交渉を終えました。

(人事院交渉)昇格・昇給の見直しで50歳代の給与引き下げに言及

 人事院との交渉では、給与 局給与第1課の奈良間課長補佐、職員福祉局職員福祉課の澤田課長補佐が対応しました。
 はじめに野村議長は、「東日本大震災からすで に1年4か月以上経過し、被災地をはじめ全国の公務労働者は、被災地の復旧・復興にむけてさまざまな業務をつづけてきた。一方では、4月から国家公務員給 与が7.8%引き下げられた。各地で奮闘する公務労働者の働きがいをなくすものだ。職員の労働条件の改善、効率的な行政をめざす観点から人事院としての積 極的な役割発揮を求める」とのべ、「夏季重点要求」に対する現時点での検討状況を質しました。
 人事院側から、主に次のような回答が 示されました。
● 国家公務員の給与について、人事院としては、労働基本権制約の代償措置としての勧告制度の意義および役割を踏ま え、情勢適応の原則に基づき、公務・民間の給与実態を精緻に調査・比較したうえで、国会と内閣に勧告することが人事院の責務だ。今年の民間給与実態調査 は、5月1日から6月18日まで実施され、特段の支障なく完了し、現在、集計作業中だ。例年ベースで作業をすすめる。
● 今年の民間 の春季交渉では、各種調査を見ると、給与は昨年並みの水準となり、ボーナスは昨年の冬はプラス、夏はマイナス傾向だ。いずれにしても、作業中であり、現時 点では、月例給・ボーナスともに具体的な話はできない。
● 50歳代の官民の給与格差が相当程度あり、昨年の給与報告で昇格・昇給制 度の見直しを表明した。みなさんと意見交換しながら見直しの検討をすすめていきたい。その他、諸手当は、民間の実態をふまえて対応する。
●  超過勤務縮減のためには、管理職員の役割が重要であり、管理職員が率先して早期退庁するなどの努力も必要だ。人事院としては引き続き関係機関と連携して とりくんでいきたい。休暇、休業等については、民間の動向を見て対応していきたい。
● 非常勤職員の給与については、平成20年8月 の指針に沿った適正な給与支給がなされるようとりくんでいく。休暇等については、育児休暇制度が新設された。給与・雇用など勤務条件の改善にむけて、民間 の状況等を踏まえ、必要な検討をおこなう。
● 心の健康づくりについては、指針をふまえて相談室の設置などで対処してきた。「心の健 康づくり対策推進のための各府省連絡会議」で各府省と連携して施策推進に努め、各府省の心の健康づくり対策の支援をおこなう。
  パ ワハラについては、職員の問題意識を高めるため、一昨年1月にパワハラの「言動例集」を作成し、今年1月にはアンケート調査をとりまとめた。3月の厚労省 の円卓会議などに留意して検討していきたい。

減額された給与実態にもとづいて官民比較せよ

  これに対して黒田事務局長は、以下の点を指摘しました。
○ 4月から平均で7.8%もの賃金引き下げが強行され、マイナス勧告も昨年 4月にさかのぼって実施された。勧告にもとづいて引き下げ、勧告制度にもとづかずさらに賃下げするという矛盾した対応は、労働基本権を幾重にも踏みにじる 点で認められるものではない。政府や民自公の各党に対して、人事院として毅然と意見表明せよ。
○ 減額支給の実態にもとづいて官民比 較をおこない、「給与回復・改善勧告」をおこなえ。なかでも、初任給について、人事院の民間賃金実態調査でも、高卒・大卒ともに官・民の格差がひろがって いる。優秀な人材確保の観点からも、初任給引き上げは急務であり、具体的な検討を求める。
○ 50歳代の昇格・昇給制度の見直しの必 要性が表明されたが、400万円をこえる退職手当の切り下げ、60歳以降が無年金になるなかでの不安のひろがりのもとで、高齢層が働きがいの持てる職場環 境の整備を求める。とりわけ、官民較差を口実とした高齢層の賃下げには反対する。
○ 職場に急増している非常勤職員の抜本的な処遇改 善を求める。「給与指針」の改訂、休暇制度の改善、雇用不安の解消などが課題だ。正規職員との均等待遇を基本とした賃金・労働条件改善にむけて、人事院と して積極的な役割を果たせ。
 交渉参加者からは、「50歳代の給与引き下げが繰り返し表明されているが、そうした職員のおかれている 状況をよく考えて勧告を出すべきだ」「単純な官民較差だけではなく、生計費原則にたった勧告作業こそ求められている。また、官民比較は、減額された公務員 給与で比較すべきだ」「50歳代の昇格・昇給などによる賃下げは、年齢差別にほかならない」などと追及しました。
 人事院側は、「み なさんの指摘は各担当に伝える。4月からの給与減額は、法律にもとづいて実施されたものだ。震災などへの対応のために、国会で判断した結果だ」などと回答 しました。北村副議長は、「国会が決めたことなどとする回答は、人事院としての気概が感じられない。プライドを持って回答すべきだ」とせまりました。
  最後に、野村議長は、「協約締結権回復にむけた公務員制度改革関連法案が国会提出されてから1年以上が経過したが、成立の見通しはなく、引き続き労働基本 権が制約されるもとでは、『代償措置』である人事院勧告制度が、公務労働者の賃金・労働条件改善にむけて積極的な役割を果たすべきである。その点から、公 務労働者の生活を改善し、働きがいが持てる積極的な勧告を求める。とりわけ、公務員総人件費削減などの政府方針をはじめ、国会での政治状況に左右されるこ となく、『第三者機関』としての毅然として対応すべきだ」とのべ、最終交渉にむけてさらなる検討を求めました。

以上