No. 831
    2012年4月7日
臨時・非常勤職員の賃金・処遇改善の確立を

= 第4回官製ワーキングプア告発集 会を開催 =

 全労連公務部会と非正規センターは4月7日、全労連会 館で第4回目となる「官製ワーキングプア告発集会」を開催しました。
 昨年3月12に開催する予定でしたが、前日の東日本大震災で中 止となった集会です。講師の和光大学教授・竹信三恵子氏(元朝日新聞編集委員)を招いての講演や、現場から切実な実態が次々と報告され全体で80人(国公 労連33人、自治労連17人、全教5人、特殊法人労連5、郵産労3人、医労連1人、福保労1人、全労連3人、事務局1人、東京地評1人、マスコミ等講師を 含む9人)が参加しました。

職場から労働条件改善のたたかいをすすめよう!

  主催者あいさつした全労連公務部会の野村代表委員は、「東日本大震災で公務・公共サービスのあり方が問われ、その重要性が確認された。住民・国民のための 行政を確立するために、官製ワーキングプアの実態を告発し、正規・非正規、公務・民間を問わず、職場から労働条件改善のたたかいをすすめよう」と呼びかけ ました。
 続いて、和光大学教授(元朝日新聞編集委員)の竹信三恵子さんが「官製ワーキングプアと公務労働」と題して記念講演を行い ました。
 竹信さん自身が朝日新聞記者時代に取材した事例を交えながら、官製ワーキングプアの実態、法の谷間におかれている問題、公 契約条例の広がりなどを紹介しました。
 「公務員バッシングの狙いは、公務・公共サービスの削減にある。震災復興のために公務員の役 割が重要になっている。丹念に調査し『国民生活に必要な公務員を増やして』と訴え、ワーキングプアをつくりださないためには何が必要かを明らかにし、納税 者の支持を得られるようなアピールが必要。質の高い公務サービスのためには、必要な人員配置と安心して働ける労働条件の確保が求められる。雇用形態の違い を超えて意思疎通をはかり互いを知り、『パートは有期』『非正規は低賃金』という社会認識を克服しよう」と「差別解消」の視点から呼びかけました。
  全労連公務部会の九後事務局次長が基調報告をおこない、国や自治体での実態にふれ、公務職場で働く全ての労働者を視野に日常的な対話活動を進めながら労働 組合を大きく強くしていくこと。官民問わず幅広い労働者と共同し、あらゆる職場から非正規雇用労働者の労働条件改善を求める声をあげることを提起しまし た。
 現場からの実態報告の訴えでは、以下のような発言がありました。
○国公労連・全労働
  非常勤職員の賃金と任用は各省庁の予算まかせで、一時金は本省しか支給されていない。非常勤職員の仲間も、東日本大震災で自ら被災し家族を失いながらも業 務を遂行し懸命に働いている。労働条件も劣悪で、法の谷間に置かれている実態を放置できない。官から働くルールをつくっていこう。
○ 自治労連・船橋市職労
 学童保育で働く仲間がおかれている劣悪な労働条件で、何年働いても同じ賃金のため子どもたちとの関係が築けな い。
○全教・埼教組
 年収80万円にしかならず、生活保護をうけている。昨年度は学級担任を持ったものの、今年 度は新たな職場を見つけられなかった。臨時教職員は次年度に仕事があるだろうかと常に不安だ。
○全医労・大分県西別府病院支部
  国立病院の賃金職員として働いていたが2004年の独法化で一方的・強権的に首切りされ1日6時間の非常勤職員となった。収入が激減しダブルワークで、全 医労不利益・雇止め是正裁判の原告としてたたかっている。1日でいいから、正規として働きたかった。
○福祉保育労
  非正規が圧倒的多数を占める介護の職場では、最低賃金以下はあたり前のような働かされ方をしている。手取り13万円という労働者もいる。本家本元の官製 ワーキングプアであり、公務員賃金カットのなかで、負のスパイラルをくいとめたい」と決意を述べました。
○郵産労
  郵政職場には21万人の非正規社員がおり、全体の半数を占める割合となっている。不安定な労働条件は劣悪化へのスパイラルを招いている」と現状を報告しま した。
 その他、東京公務公共一般から、営利企業・ピジョンハーツが参入した中野区の保育園の実態が告発され、民事法務労働組合から は、市場化テストで1400人が職を失い、雇用保障を求めてたたかっていることが報告されました。

 その後、集 会アピール(別掲)が提案され、会場全体の拍手で採択されました。閉会あいさつで、非正規センターの江花事務局長は、有期労働契約の法改正の動きについ て、「4月中旬にも審議と言われている、5年で雇い止めされる懸念が強まる、官民大きな運動で改正案を抜本修正させよう」とまとめました。

集会アピール

  私たちは、「公務・公共サービスの充実」と「公務・公共サービスにかかわる労働者の待遇改善」を「車の両輪」として運動をすすめてきました。そうした中 で、増え続ける非正規の公務労働者の実態を告発するとともに、問題解決に向けたとりくみを提起するために今集会を開催しました。
 1995 年、日経連は「新時代の日本的経営」を発表し、労働力「弾力化」「流動化」促進と総人件費削減の狙いを明らかにしました。財界の求めに応じて、1999年 「労働者派遣法」の業種拡大がおこなわれ、非正規労働者が激増しました。一方で、2005年「行政改革の重要方針」が閣議決定され、国家公務員の総人件費 削減がすすみ、正規職員の大幅な減少とそれに替わる臨時・非常勤職員の増加が加速されました。以後、多くの公務職場で同様の動きが広がり、臨時・非常勤職 員が大幅に増やされ、いまや、国公職場で14万人、全国の自治体職場で60万人、郵政職場で21万人、教育現場では小中学校だけで10万人に達しているの です。その中で、正規職員より非正規職員が多い職場も珍しくなく、ある職場では二桁を超える職員の中で正規職員が1人しかいない実態が報告されています。  
 こうした臨時・非常勤職員の多くは「官製ワーキングプア」と呼ばれる低賃金・不安定雇用の労働者です。私たちは、これまでも臨 時・非常勤職員の賃金・処遇改善をすすめてきましたが、深刻化する「官製ワーキングプア」を解消するために、いっそうとりくみを強めなければなりません。
  国民・住民と向き合う現場では、正規・非正規に関係なく、質の高い公務・公共サービスや教育、医療、福祉などを提供しなければなりません。しかし、臨時・ 非常勤職員は、同じ仕事をしていても正規職員と比べて賃金や処遇に大きな差があり、常に雇用契約への不安がつきまとい、安心して職務に専念できる状況には ありません。臨時・非常勤であっても「良い仕事がしたい」と思いながらも、研修や資格取得の機会は十分に与えられず、労働者に保障されている権利や休暇制 度さえ満足なものではありません。弱い立場につけこんだセクハラやパワハラも横行しています。さらに、切実な問題となっているのが「雇止め」です。こうし た賃金・処遇の差別や基本的人権の侵害をこれ以上許すことはできません。
 私たちは、人事院や総務省、厚労省への要請などに粘り強く とりくみ、国の「期間業務職員制度」創設や非常勤職員の休暇制度・育児休業制度充実、地方自治体での一時金等手当支給条例化など、一定の前進を勝ち取って きました。また、自治体に対して、委託や請負労働者の賃下げ・雇止めを防ぐとともに公務・公共サービスの水準を維持する「公契約条例」制定を広げるとりく みもすすめています。
 財界は、低迷する日本経済の立て直しには「国際競争力の強化」が必要とし、いっそうの規制緩和や制度「見直 し」を要求しています。そこには、非正規労働者の処遇改善などはまったく頭になく、より非正規化をすすめようとしています。これに対し、政府は、人を物扱 いする「労働者派遣法」を温存し、「労働契約法」改悪や、実効あるものにならない「パート労働法」改正など、追随の姿勢をとっています。こうした動きが公 務に影響を与え、公務労働者の労働条件改悪につながることはまちがいありません。
 政府・財界・マスコミが一体化してリードする「公 務員バッシング」は、労働者の間に分断をもちこみ、労働者全体の労働条件を切り下げようとするものです。その狙いを明らかにし、国民・労働者との対話を広 げ、正規・非正規、公務・民間を問わず幅広い共同をつくり出すことが重要です。「官製ワーキングプア」解消のため、最低賃金底上げや労働法制改悪阻止、 ディーセントワーク実現などで、臨時・非常勤職員の賃金・処遇改善を前進させなければなりません。正規職員を抜本的に増やすことや、雇用安定・均等待遇を はかる法整備をすすめることは急務です。
 みなさん、公務職場に働く臨時・非常勤職員の多くは組合未加入で、切実な要求を実現できず に苦しんでいます。同じ職場で働く労働者が力を合わせて身近な要求実現を勝ち取るため、臨時・非常勤職員を組合に迎えるとともに、たたかう組織を強化し連 帯を広げていきましょう。

 2012年4月7日
官製ワーキングプア告発集会

以上