東北三県をふくめて例年どおり民間給与実態調査を実
施
人事院との交渉は、公務労組連
絡会から、野村議長、北村副議長、黒田事務局長、米田・関口の各事務局次長、国公労連から細川中執が参加しました。人事院側は、給与局給与第1課の箕浦
(みのうら)企画室長、職員福祉局職員福祉課の琴(こと)勤務条件調査官が対応しました。 はじめに野村議長は、「民間大手ではベア
ゼロに加えて一部には定期昇給凍結の回答が示され、公務員は4月から約8%もの賃下げが押しつけられようとしている。今年も公務・民間の『賃下げの悪循
環』が繰り返されようとしているもと、人事院が公務労働者の立場に立ち、民間準拠にとどまることなく公務労働者の生活改善にむけて努力すべきだ」とのべて
回答を求めました。 人事院からは以下のような回答が示されました。 【人事院最終回答】 ●
(賃金等の改善)国家公務員の給与について、人事院としては、労働基本権制約の代償措置としての勧告制度の意義および役割を踏まえ、例年と同様に情勢適応
の原則に基づき、国家公務員の給与と民間企業の給与の実態を精緻に調査したうえで、その精確な比較を行い、必要な勧告を行うことを基本に臨むこととしてい
る。 職種別民間給与実態調査については、昨年は大震災、原発事故の影響で実施時期を遅らせたが、本年は、昨年調査を見送った東北三
県をふくめて例年どおり5月から開始する方向で検討している。 給与勧告作業に当たっては、較差の配分、手当の在り方などについてみ
なさんと十分な意見交換を行いつつ進めて参りたい。 昨年の勧告時の報告で言及した職種別民間給与実態調査の対象となる産業等の見直
し、高齢層における昇格、昇給制度の見直しなどの検討に当たっては、みなさんと協議をしながらとりくんで参りたい。 一時金について
は、民間の支給水準等の精確な把握を行い、適切に対処する。 ●(高齢期雇用問題)去る23日、政府の国家公務員制度改革推進本部に
おいて、「定年退職する職員がフルタイム再任用を希望する場合、当該職員の任命権者は、定年退職日の翌日、常時勤務を要する官職に当該職員を採用するもの
とすること」及び「年金の支給開始年齢の65歳への段階的な引上げ期間中の一定の時期に、公務の運営状況や、民間企業における高年齢者雇用確保措置の実施
状況を勘案し、意見の申出を踏まえつつ、雇用と年金の継続の在り方について改めて検討を行うこととすること」が決定されたところであり、人事院としては、
その検討状況を見守っていきたい。 ●(労働時間、休暇制度等)超過勤務縮減のためには、職員の在庁状況の的確な把握等、厳正な勤務
時間管理を徹底することが重要と考えている。在庁時間の削減は、政府全体としてとりくんでいるところであるが、人事院としても、引き続き各府省と連携して
とりくんで参りたい。 とりわけ勤務時間管理については管理職員の役割が重要であり、そのことは、人事院としても昨年の勧告時の報告
等で言及し、各府省においても浸透しつつあると考えているが、人事院としては引き続き管理職員の意識啓発を促していきたい。 職員の
休暇、休業等については、これまで民間の状況等を見ながら改善してきたところであり、みなさんの意見を聞きながら引き続き必要な検討を行って参りたい。 ●
(非常勤職員の給与、休暇等の改善)非常勤職員の給与については、今後とも平成20年8月の指針に沿った適正な給与支給がなされるようとりくんで参りた
い。 また、非常勤職員の休暇等については、民間法制や民間企業における普及状況等を踏まえて措置してきたところであり、引き続き、
関係方面からの要望を伺いつつ、民間の状況等を踏まえ、必要な検討を行って参りたい。 ●(男女平等、共同参画)公務における男女共
同参画の推進に関しては、人事院が昨年1月に改定した「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」に基づき、各府省は平成27年度までの目標や目標
達成に向けての具体的取組を定めた「女性職員の採用・登用拡大計画」を策定したところである。人事院としては、そうした各府省の取組が着実に実行されるよ
う役割を果たしていきたいと考えている。 ●(健康・安全確保等)心の健康づくりについては、予防や早期発見の取組の推進、相談体制
の充実、管理監督者をはじめとする職員に対する研修の強化等を図るとともに、「心の健康づくり対策推進のための各府省連絡会議」を発足させ各府省と連携し
て施策推進に努める体制を整備した。引き続き、こうした取組を通じて各府省の心の健康づくり対策の支援を積極的に行っていきたい。
セクハラ、パワハラ等についても、引き続き、その防止のための取組を行っていきたいと考えている。また、精神疾患等の公務災害認定の一層の明確化、迅速化
を図るため認定指針の改定を行い、3月中には発出の予定である。 「平均
1万円」要求ふまえて「民間準拠」にとどまらない賃上げを
これに
対して、黒田事務局長は以下の点を主張しました。 ○ 民間賃金との比較という従来通りの回答はきわめて不満だ。「月額平均1万円」
の引き上げ要求をふまえて、民間準拠にとどまらない改善勧告を求める。そのことを前提にして、少なくとも、「特例措置」によって今年4月1日の時点でマイ
ナス較差が出ることは明らかであり、生計費にもとづいて官民の較差を是正すべきとする勧告をおこなうことが人事院のとるべき道であり、臨時の勧告が出され
てもおかしくない状況だ。人事院としての見解をうかがいたい。 ○ 「民間準拠」というのなら、民間との格差が広がっている初任給を
すぐにでも改善すべきだ。優秀な人材確保の面でも待ったなしの課題だ。真剣な検討を求める。 ○ 非常勤職員も、民間の状況をふまえ
て対処するとの回答があったが、職場では非常勤職員が常勤職員と同じ仕事をしており、均等待遇を求めるとともに、公務にふさわしい賃金のあり方を人事院と
して検討すべき。その点で、08年以降、見直されていない「給与指針」の見直しを求める。 ○ 高齢期雇用にかかわって、「意見の申
出」を反故にした23日の政府決定は、認められるものではない。人事院勧告の見送りにも等しい重大な事態だ。人事院として、「検討状況を見守る」などとい
う消極的な姿勢ではなく、政府に対して意見表明をおこなえ。 交渉参加者からは、「4月からの『特例措置』による大幅賃下げは、きわ
めて乱暴なうえに、生活が成り立たなくなる。人事院としての役割を最大限発揮せよ。生活改善にむけた実効ある措置を求める」「高齢期雇用では、人事院がみ
ずからの『意見の申出』に責任をもって対応せよ。第三者機関としての役割発揮を求める」「震災で全国の公務労働者が奮闘してきたが、それにむくいるべき。
青年層は、月に40〜50時間残業しても、わずか数万円しか手元に残らず、将来への不安感がひろがっている。とりわけ青年層の賃上げへ初任給改善が必要
だ」「高齢期雇用にかかわる法案が提出されても、国会段階でも人事院は『見守る』だけで、何も意見表明をしないのか」などと追及しました。
「意見
の申出」を棚上げにした政府に意見表明をおこなえ
人事院側は、
「特例措置は、大震災という千年に1度の状況のもとで、政府として大所高所からの判断が必要だという意見を人事院としてのべてきたところだ。初任給改善が
切実であることは理解している」とし、また、高齢期雇用については、「政府決定は、『意見の申出を踏まえつつ、雇用と年金の接続の在り方について改めて検
討を行う』とされている。したがって、人事院としては検討を見守るという立場だ」などとする回答を繰り返しました。 野村議長は、
「要求アンケートでは、どの単産でも『生活が苦しい、やや苦しい』との回答が過半数をこえる。これに賃下げが強行されればさらに生活は苦しくなることは間
違いない。『情勢適用の原則』はあっても、生活できる賃金は保障すべきであり、生活実態に根ざした賃金改善を求める。雇用と年金の継続に関する政府の基本
方針も、意見の申出をふまえるべきとする労働組合の追及もあり、最終的にその点が盛り込まれたものだ。雇用に直接かかわる問題であり、人事院として政府に
意見表明をおこなえ」と重ねて求めました。これに対して、人事院側は、「みなさんのご意見はうけたまわった」とのべるにとどまりました。
最後に、野村議長は「民間準拠にとどまらない公務員の賃上げを繰り返し求めてきた点から、『官民比較による給与勧告』との回答は不満だ。政府による賃下げ
というかつてない状況下でむかえる今年の給与勧告は、ひときわ重要な意義を持つこととなる。引き続き、要求をふまえて検討を深め、公務労組連絡会との交
渉・協議を続けるよう求める」とのべ、交渉を締めくくりました。 |