No. 810
    2011年10月27日
「憲法違反の暴挙」と政府を追及

= 勧告の実施見送りをめぐって、公 務3単産委員長が政務官と交渉 =

 11年人事院勧告の取り扱いについて、野田内閣が28 日にも「勧告実施見送り」の閣議決定をねらうなか、労働基本権を踏みにじる憲法違反の暴挙をくい止めるため、政府決定ぎりぎりまで交渉を続け、27日夜に は主濱(しゅはま)総務大臣政務官(参議院議員・岩手県選挙区選出)と、公務3単産による交渉が配置されました。
 政務官交渉では、 賃下げ法案の撤回とともに、勧告実施見送りの不当性を厳しく追及し、閣議決定しないよう求めましたが、主濱政務官は、「臨時の特例措置としておこなうもの であり、みなさんにもご理解いただきたい」との回答に終始し、態度を変えませんでした。

賃下げ 法案は「人事院勧告の趣旨も内包している」と強弁

政務官交渉 政務官交渉には、国公労連の宮垣委員長、自治労連の野村委員長、全教の北村委員長 らが出席し、はじめに、宮垣委員長が、「これまでの政府の回答は、私たちが求めているものにはほど遠い内容だ。とりわけ人事院勧告の取扱いについては、実 施のための法案提出を行わず給与臨時特例法案の成立に努める、というものであり、納得のできるものではない」とのべ、あらためて政府としての回答を求めま した。
 それに対し、主濱政務官は以下のように回答しました。
 ● 本年の人事院勧告の取扱いについては、去る 9月30日の提出を受けて以来、政府部内で検討を続けてきた。
 ● その結果、明日予定されている第3回目の給与関係閣僚会議及び閣 議において、国家公務員の労働基本権がなお制約されている現行制度の下においては、人事院勧告制度を尊重することが基本である一方、提出中の臨時特例法案 が、東日本大震災に対処する必要性等に鑑み、一層の歳出削減が不可欠であることから、臨時の特例措置として、今般の人事院勧告による給与水準の引下げ幅と 比べ、厳しい給与減額支給措置を講ずるものであること、また、その他の人事院勧告の趣旨も内包しているものと評価することができることなどを総合的に勘案 し、人事院勧告を実施するための給与法改正法案は提出せず、既に提出している臨時特例法案の早期成立を期すものとする方向性で、政府としての方針が決定さ れるものと考えている。
 ● みなさんにとっても非常に厳しい内容となるが、現下の厳しい状況を何卒ご理解願うとともにご協力をお願 いしたい。

憲法と国家公務員法に照らして断じて認められない

 この回答を受けて、宮垣委 員長は次の点を主張しました。
 ○ 政府は労働基本権が制約されている現行法の下では、基本的に人勧を尊重しなければならないはず だ。日本では国民の権利は法で守られており現行法の定めに従うべきと考える。また、使用者として職員の生活を守る責任からも、今年の勧告について、労働組 合との誠意ある交渉・協議を行うべきであり、その前提として給与臨時特例法案の撤回を求める。給与臨時特例法案の提出に加え人事院勧告を無視することは 「2重のルール違反」となる。
 ○ 「特例法案は人事院勧告の趣旨も内包する」としているが、法案はもともと「現下の社会経済情勢や 厳しい財政事情を踏まえ、国家公務員の人件費を削減する措置」として提案されたものであり、情勢適応の原則に基づく人事院勧告とは全く性格を異にするもの であり、引き下げ幅等の数値的なことで「内包する」とは詭弁にすぎない。
 ○ 給与臨時特例法については、私たちは一貫して、@財政 事情悪化の責任を公務員に転嫁する総人件費2割削減に道理も根拠もないこと、A公務員賃金の引き下げがデフレを加速し、経済をいっそう冷え込ませて復興に も悪影響を与えること、B震災からの復旧復興を含め、全国で行政を支え奮闘している公務員の士気を下げること、C労働基本権が制約されている下で現行制度 にもとづかない賃金引き下げは憲法違反であること、などを主張して撤回を求めてきた。
 人事院も勧告の中で、@労働基本権が制約され た状況のもとで国家公務員法を無視していること、A反対を表明している職員団体があること、B給与減額支給の間は労働基本権制約の代償措置が本来の機能を 果たさないこと、などの問題点を改めて指摘し、強い懸念を表明したが、当然の主張であると考える。
 ○ 人事院勧告を見送ることは、 明確な憲法違反だ。過去の判例でも、人勧制度が労働基本権制約の代償措置としての本来の機能を果たさず、実際上画餅に等しいとみられる状態になった場合 は、争議権の行使も適法・合憲との判断も示されている。
 給与臨時特例法案は、労働基本権制約の代償措置で最も重要な人事院勧告に基 づかない給与引き下げであり、かつ、人勧を無視し3年度間にわたり勧告に基づかずに給与を決定づけ、また、一部の職員団体との合意を理由に強行するもので あり、国家公務員法と憲法の規定に反していることは明らかだ。あらため撤回を求める。
 また、自治労連の野村委員長は、「賃下げ法案 は断固認められない。民主党のマニフェストのほとんどが実現していないなかで、なぜ公務員総人件費削減に固執するのか。財政的に見ても、民間をふくめた労 働者の年収が下がり、それで税収が減るという悪循環が起こる。政務官は被災地自治体である岩手県庁での経験もあるならば、公務労働者の熱い思いも十分感じ 取られていると思う。この時期に賃下げすることに大きな憤りを感じる。被災地の住民からは、われわれを理由にしてこんなに一生懸命働いている公務労働者の 賃金を削減するのかという声も届いていることを伝えておく。また、総務省が地方人事委員会の担当者を集めた会議の席上、国が特例法を提出していることを留 意してもらいたいとの発言があったと伝えられる。地方自治体での自主的な解決に関して、総務省が不当な介入をしないように強く求める」とのべました。
  全教の北村委員長は、「回答は受けいれられない。民主党は、国民の生活第一を公約に掲げて政権をとった。また、マニフェストでは、憲法とは公権力の行使を 制限するために主権者がさだめる根本基準であるとし、国民主権などの憲法原理を大切にするとしている。勧告の取り扱いをめぐる方針は、憲法に違反するもの であり、国民への約束をみずから投げ捨てるものだ。国民に対する背信行為だ。また、政府は、『地方公務員への遮断』を強調してきたが、すでに義務教育費国 庫負担金削減の検討が伝えられている。『遮断』の何よりの担保は、賃下げ法案を撤回することだ」とのべました。

28日の閣議決定強行の態度を変えない政府に抗議

 これらの追及に対して、主 濱政務官は、以下のように再回答しました。
 ● 「今回の人事院勧告の内容及び趣旨は、給与臨時特例法案の内枠であると評価すること ができる。」とは、給与臨時特例法案は、@東日本大震災への対処等のため、臨時の特例措置として、平均7.8%の削減を行わざるを得ないという状況に鑑み れば、今回の人勧のマイナス0.23%は、この内数であると評価できること、Aまた、減額率は職責に応じて傾斜 (係員級▲5%、中堅層▲8%、管理職層▲10%)を設けており、結果として、総体的にみれば、給与カーブのフラット化の趣旨も図られていると言えること から、人事院勧告の趣旨も内包していると評価できると考えている。 
 ● 繰り返しになるが、給与臨時特例法 案は、我が国の厳しい財政状況と東日本大震災という未曽有の国難に対処する必要性に鑑み、一層の歳出削減が不可欠であることから、臨時の特例措置として行 うものであり、政府としては、改めて皆さんにも御理解いただきたいと考えており、また、国会において早期に成立させていただくようお願いしているところで ある。
 ● 自治労連ならびに全教の委員長から要請いただいた地方公務員の給与については、地方公務員法の趣旨をふまえて、それぞれ の地方公共団体が条例で定めるものであり、引き続き地方公共団体において、住民の納得が得られるよう情報公開を徹底させるなど、自主的なとりくみをすすめ て適切に決定することが大切だ。したがって、国家公務員の給与引き下げと同様の引き下げを地方公共団体に強制することは考えていない。

  最後に、宮垣委員長は「本日の回答を受け止めることはできない。あらためて給与臨時特例法案の撤回と公務労働者の労働条件の改善を求める。明日の閣議決定 が表明されたが、このように大きな隔たりがある中であえて決定する政府の姿勢に強く抗議する。特例法案の国会での審議段階では、各議員にも訴え、政府私た ちの主張のどちらに大義があるかを判断してもらうと同時に国民にも判断してもらうため、私たちは最後まで努力を惜しまない」と強調し、交渉を締めくくりま した。

 こうした交渉経過をふまえて、全労連公務部会・公務労組連絡会では、28日の12時すぎから総務省前で の要求行動にとりくみ、政府の閣議決定強行に抗議しつつ、あらためて賃下げ法案の撤回を求めることとしています。

以 上