No. 802 
    2011年8月30 日
「夏季重点要求」に対して総務省が最終回答

= 人事院勧告よりも「賃下げ法案」 を優先させる政府を追及 =

 「8・30人事院前要求行動」に500人が結集するも と、公務労組連絡会は同日、「夏季重点要求」の実現を求めて、総務省との最終交渉に臨みました。
 交渉では、通常国会閉会を翌日にひ かえて、この間、一度も審議されなかった「賃下げ法案」(給与臨時特例法案)の撤回を重ねて求めるとともに、9月中の人事院勧告がひかえるもとで、あらた めて労働基本権制約の「代償措置」としての勧告制度について政府としての見解を質しました。
 これに対して、総務省側が、一部の労働 組合と合意しただけの「賃下げ法案」を、勧告よりも優先させるかの回答を示したことから交渉は紛糾しましたが、公務労組連絡会の追及によって、人事院勧告 制度を尊重するとの基本姿勢を明らかにさせました。
 こうした交渉の到達点をふまえて、今後、人事院勧告後には、その取り扱いをめ ぐってあらためて総務省との交渉を配置します。

今も困 難がつづく被災地の仲間をはげます勧告を

 総務省との交渉には、公 務労組連絡会から野村議長、北村副議長、黒田事務局長、米田・九後の各事務局次長、自治労連から熊谷中執が参加しました。総務省側は、人事・恩給局総務課 の越尾(こしお)総括課長補佐、小泉課長補佐ほかが対応しました。
 はじめに野村議長は、「前回の交渉では、給与臨時特例法案の撤回 を求めるとともに、公務員総人件費削減方針の撤回、東日本大震災もふまえた公務・公共サービスの拡充を求めてきたところだが、その際の回答は納得できるも のではなかった。菅内閣が本日、総辞職するもと、法案は撤回すべきであるとかさねて指摘する」とのべたうえ、「切実な要求を真摯に受けとめ、夏季重点要求 に対する使用者としての誠意ある回答を示していただきたい」として最終回答を求めました。
 これに対して、越尾総括課長補佐は、以下 の通り回答しました。
(総務省最終回答)
 ● 賃金改善の要求については、みなさんの切実な要求であると受けと める。なお、現時点においては、従来からの考え方に変更はない。
 ● 超過勤務縮減は、職員の健康はもとより、自己研鑽、家庭の時間 確保のために重要課題と認識している。従来から定時退庁などにとりくんできているが、4月からは超過勤務手当の割り増し、代休制度が新設されたことでコス ト意識を持ったとりくみが求められている。また、超過勤務縮減を管理職の人事評価の対象としている。今後とも、こうしたとりくみをすすめることによって超 過勤務縮減を推進する。
 ● 高齢期雇用については、人事院から「意見の申出」が出された場合には、関係省庁と連携しながら検討をす すめていきたい。また、退職手当の水準は、5年ごとに民間の実態調査を実施しており、これをふまえて官民均衡をはかっていく。いずれにしても、退職手当 は、退職後のライフプランにかかわる職員の重要な関心事項であることは十分に承知しており、検討に際しては、組合からの意見を聞いてすすめる。
 ●  非常勤職員の処遇改善は、昨年から期間業務職員制度が導入され、育児休業も改善した。これらについての運用状況を見守りつつ、勤務条件の改善にむけて、 みなさんの意見をうかがいながら検討をすすめる。
 ● 民主的公務員制度確立、労働基本権回復にかかわっては、自律的労使関係制度の 措置にむけて国会に関連法案が提出された。法案の審議状況を引き続き見守っていきたい。
 ● 職員の健康・安全について、4月に国家 公務員の福利安全基本計画の改定をおこない、メンタルヘルス対策の充実などを盛り込んだ。引き続き対策強化にとりくんでいきたい。

「労働 基本権制約の代償措置として人勧制度を尊重する」と回答

 賃金改善 要求にかかわって、「従来からの考え方に変更はない」との回答に対して、交渉参加者からは、「前回の交渉で『国会の判断をあおぐ』としてきた給与特例法案 に対する考え方なのか、それとも、人事院勧告制度尊重とする政府の基本姿勢をのべたものなのか」と追及が集中しました。
 越尾総括課 長補佐は、「特例法案に関する考え方をのべたものだ。閉会中審査(継続審議)になるかどうかは明日の会期末になってみないとわからないが、いずれにして も、政府としては、国会の判断をあおぎたいと考えている」とのべたことから、交渉団は、「審議される見通しもない法案であるとともに、もともと憲法違反の 法律であることからも、国会の判断をあおぐことなく、政府みずからで法案を撤回すべきだ」とせまりました。
 また、公務労組連絡会側 が、「人勧尊重という従来の政府としての基本姿勢にも変更はないと受け取ってもいいのか」とただすと、越尾総括課長補佐は、「臨時特例法案を政府が提出し ている点で、従来とは状況が違っており、その状況のうえに、人事院から出された勧告の内容をふまえて判断したい」とあいまいな回答に終始したことから、交 渉団は、「人勧制度尊重の政府の基本姿勢を変更するのか?」と厳しくせまりました。
 これに対して、総務省側が、「出された勧告につ いては重く受けとめる」としつつも、「今年に限っては、勧告制度のもとで極めて異例の措置となるが、連合・公務員連絡会との間の交渉によって給与引き下げ を合意してきている。それをふまえて提出した特例法案をベースにして、今年の人事院勧告の取り扱いを検討したい」などとのべたことから、「勧告よりも、一 部の労働組合との妥結内容を優先させるのか」と参加者から激しい声があがり、交渉は紛糾しました。
 こうした追及をうけて総務省側 は、「人事院勧告制度を労働基本権制約の代償措置として尊重していくという基本姿勢には変更はない」と明確に回答したうえ、「ただし、今年の勧告について は、給与臨時特例法案が出されている状況をふまえつつ、新しい内閣のもと検討していきたいと考えている」と補足しました。

地方公 務員・教職員の労働基本権を早期に回復せよ

 その他の要求にかか わって、交渉参加者からは、「被災地では保育園が流されて、非常勤の保育士が雇い止めされたりしている。単に政府の制度を見守るのではなく、使用者として 雇用などの改善などについて考えるべきだ。また、国家公務員に対する賃下げ法案は、地方公務員にも影響する問題であり、法案の撤回を求めるとともに、総務 省として地方自治体に波及させないように対応せよ」「自律的労使関係制度では国家公務員の関連法案が提出されるもと、地方公務員・教員の労働基本権の早期 回復にむけて、総務省として積極的に対応すべきだ。その際、労働組合との交渉・協議の場を求める」などの意見が出され、越尾総括課長補佐は、「関係する部 局には伝える」と回答しました。
 最後に野村議長は、「賃下げ法案の撤回要求に対しては、前回と同様の回答にとどまったことは、きわ めて不満だ。公務員総人件費削減の方針とともに、法案はただちに撤回すべきだ」とのべ、「その他の回答についても、使用者として、要求に正面から応えたも のではなく、不満である。9月中に人事院勧告が予定されているもと、勧告内容をふまえて、公務労組連絡会として勧告後にあらためて要求書を提出する。その 際、本日の回答にもとづき、賃金・労働条件改善へ使用者としての責任ある対応を求める」とのべ、交渉を閉じました。

約8万筆の「公務・公共サービス拡充署名」を政府に提出

  交渉では、5月からとりくんできた「公務・公共サービス拡充を求める要求署名」(内閣総理大臣あて)を提出しました。
 この日までに 集約された署名は、全体で79,815筆となり、交渉の場に段ボール箱を積み上げ、公務員総人件費2割削減の方針撤回、国の地方出先機関廃止反対、国の責 任による30人学級の実現などの要求項目の実現を強く求めました。
 署名運動は今後とも継続し、政府に対して公務・公共サービスの拡 充を求めていきます。

以 上