No. 794
    2011年7月7日
賃下げ 「臨時特例法案」は撤回せよ

= 総務省に「2011年夏季重点要求書」を提出 =

 公務労組連絡会は7日、総務省に「2011年夏季重点要求書」(別掲)を提出しました。
  要求書は、春闘統一要求を基本にしつつ、賃金・労働条件改善にかかわる重点要求をとりまとめたものとなっています。とりわけ、国会提出が強行された「賃金 1割カット」の「給与臨時特例法案」の撤回を求めるとともに、東日本大震災の救援・復旧に従事する職員の勤務条件改善、緊急な増員などを要求しています。
 また、人事院がこの秋にも「意見の申出」を予定している定年延長の制度見直しでは、働き続けられる職場環境の整備とともに、60歳以上の賃金引き下げをやめることなどを求めています。
 今後、7月28日の中央行動などを節目にして交渉を配置し、8月中の回答引き出しをめざしていきます。

被災地復興のためにも行政体制の拡充は重要課題

 総務省への要求書提出には、公務労組連絡会から黒田事務局長、蟹澤・鈴木の各事務局次長、門田幹事が参加し、総務省は、人事・恩給局総務課の小泉課長補佐ほかが対応しました。
 はじめに、黒田事務局長が重点要求の趣旨をのべ、公務員総人件費削減をやめることや、震災復興のためにも行政体制の確立・拡充をはかること、臨時・非常勤職員の委員等待遇にむけて法整備をふくめた具体的措置などを強調しました。
 また、国会に提出されている「給与臨時特例法案」に触れ、「政府から十分な説明もされず、政府に対して交渉継続を求めたが、国会会期を理由にして一方的に閣議決定が強行された経過からも認められるものではなく、ただちに法案を取り下げるべき」と強く求めました。
  交渉参加者からは、「定員が減らされるなかで、長時間勤務がすすんでいる。超過勤務手当も十分に出ていない。業務に見合った増員は緊急の課題だ」「震災か ら4か月が経ち、国の対策の遅れに対する住民の怒りが、自治体労働者にぶつけられている。公務・公共サービス拡充が求められており、地域主権改革を粛々と すすめることは認められない」「使用者として公務労働者の生活改善の立場に立つよう求める。人事院勧告制度を踏みにじる賃下げ法案は撤回せよ」「定年延長 にかかわって、早期退職者への退職手当割り増しなどを総務省として検討するよう求める」「地方公務員の自律的労使関係が総務省で検討されているが、労使交 渉の仕組みを決めるうえで、労働組合との協議は不可欠だ。早く開始するよう求める」「メンタルヘルスや、その背景にもなっているパワハラの具体的な防止策 を求める。メンタルヘルスの改善は、効率的な行政体制にもつながる」などの要求がのべられました。
 小泉課長補佐は、「要求項目は多岐にわたるものであり、検討したうえで、後日、あらためて回答を示したい」とのべました。これをうけて、公務労組連絡会として、節目での交渉配置をふくめた誠意ある対応をかさねて求めました。

以 上

【政府への要求書】

2011年7月7日

内閣総理大臣 菅  直人  殿
総務大臣   片山 善博  殿

公 務 労 組 連 絡 会
議長   野村 幸裕


2011年夏季重点要求書


 政府は6月3日、国家公務員の俸給・一時金の1割カットなどを内容とした「給与臨時特例法案」の閣議決定を、国公労連など労働組合の反対を押し切って強行しました。
  法案の提出は、労働基本権制約の「代償措置」としての人事院勧告にもとづかないもので、労働基本権保障をさだめた憲法に違反する暴挙であり、断じて認めら れません。人事院総裁も、遺憾であるとする異例の談話を発表し、西岡参議院議長が参議院での審議入りは拒否すると表明するなど、矛盾が一気に吹き出してい る法案は、ただちに撤回すべきです。
 また、東日本大震災の被災地では、政府の支援対策の遅れもあり、復旧・復興がはかどっていないなかで、住民 のいのちと暮らし、安全・安心を守るために公務・公共業務の役割がますます重要となっています。そのためにも、公務員総人件費削減の方針をあらため、公 務・公共サービス拡充が求められています。同時に、公務労働者の生活と労働条件の改善にむけて、政府が使用者としての責任を果たすべきです。
 8月末の概算要求の取りまとめや9月の人事院勧告も念頭にして、春闘期に提出した統一要求もふまえながら、以下の重点要求を取りまとめました。貴職が、この要求に対して誠意を持って検討し、実現にむけて努力するよう求めます。


1、国の責任による公務・公共サービス拡充にむけて
 (1) 公務員総人件費削減をやめること。11年1月28日の関係閣僚会議で確認された「総人件費削減に関する今後の検討の進め方」は、ただちに撤回すること。
(2)  東日本大震災の復旧・復興のために行政体制の確立・拡充をはかること。「地域主権改革」にかかる検討作業を中止し、復旧・復興が実現した段階で、国と地方の責任・役割を白紙から再検討すること。
(3) 行政サービスの拡充と職場の労働条件改善をはかるため、総定員法・行革推進法を廃止すること。
(4) 国の責任を放棄することにつながる事務・権限の移譲や地方出先機関などの廃止・自治体への委譲を行わないこと。
(5) 競争の導入による公共サービスの改革に関する法律(市場化テスト法)を廃止すること。
(6) 定員削減計画を中止するとともに、総人件費の削減ではなく、必要な予算・要員を確保すること。
(7)社会保険庁職員の分限免職を撤回し、安定した雇用を確保すること。

2、公務員賃金の改善等について
 (1) 俸給・一時金を1割カットする「給与臨時特例法案」を撤回し、職員の生活と労働の実態もふまえて公務員給与の改善をおこなうこと。
 (2) 一時金について、大幅な改善をはかること。一時金に占める勤勉手当の割合を縮小すること。役職傾斜支給、管理職加算制度を見直し、全体の上下格差を縮小すること。
(3) 民間を明らかに下回っている初任給を改善すること。
(4) 諸手当については、住居手当(高額家賃の負担軽減)、通勤手当(ガソリン代高騰のもとでの自動車通勤者の負担軽減)、単身赴任手当(生活・交通負担の軽減)、寒冷地手当(寒冷地生計費の増嵩)の改善を重視すること。
 
3、労働時間短縮、休暇制度改善等について
(1) 東日本大震災の救援・復旧に従事する職員の勤務条件を改善し、住民サービスを向上させるため、緊急に増員をおこなうこと。
(2) 超過勤務時間の縮減をはじめ、総実労働時間短縮に向けた実効ある取り組みを引き続き強力に推進すること。とりわけ、政府の節電対策もふまえて具体的な方策を検討すること。また、業務量に見合った必要な増員をおこなうこと。
 (3) 長期勤続休暇(リフレッシュ休暇)を早期に新設すること。
 (4) 健康で安全なディーセント・ワークの実現およびワークライフバランス確立の観点から、勤務時間および交替制勤務のあり方等について検討すること。

4、新たな高齢期雇用制度の検討について
 (1) 雇用と年金の接続を図るため、定年年齢を65歳に引き上げること。少なくとも、年金の報酬比例部分の支給開始年齢にあわせ、2013年度から定年年齢を段階的に引き上げること。
 (2) 仕事の内容が変わらないにもかかわらず、60歳以上の賃金引き下げは行わないこと。また、50歳台後半層の賃金水準は維持すること。
 (3) 職員が健康で働き続けられるよう職場環境整備や職域開発に努めること。加齢により就労が困難な職種を考慮すること。
 (4) 退職金については、現行の水準を維持し、早期退職に対する割り増しなどの拡充をはかること。

5、非常勤職員の処遇改善について
(1) 非常勤職員の均等待遇確立に向けて新たな法整備を図ること。当面、08年の「給与指針」に基づき経験等を勘案した経験加算や期末手当の支給、非常勤職員の休暇等のあり方について均等待遇の観点から見直すとともに、常勤職員と同様の制度に改善すること。
(2) 非常勤職員の雇用の安定のため、非常勤職員の任用更新に上限は設けないこと。
(3) 非常勤職員の採用にあたっては、更新の有無とその基準・理由をあらかじめ職員に明示する仕組みを確立すること。
(4) 非常勤職員の希望にもとづく職業能力育成のための機会提供に努めること。

6、民主的な公務員制度と労働基本権の確立について
(1) 公務員労働者の労働基本権を、憲法原則にたって全面的に回復すること。交渉による労使対等の労働条件決定システムを確立すること。
(2) 地方公務員・教職員の協約締結権を早期に回復させること。新しい制度の確立にむけては、労働組合との交渉・協議のもとで検討をすすめること。
(3) 労働組合の団結と自治を破壊する組織介入、不当労働行為は一切行わないこと。また、労働組合所属による人事・給与、交渉、組合活動などへの差別的取扱いを行わないこと。
(4) 公正・中立な行政の実現と民主的な公務員制度の確立に向けて、国民的な議論を保障するとともに、関係労働組合との十分な交渉・協議を行うこと。
(5) 基本的人権である言論・表現の自由を守り、公務員の市民的・政治的自由を保障する観点から、国公法を改正すること。

7、健康・安全の確保について
 (1) 心の病の発生を予防するための施策を充実すること。
 (2) パワーハラスメントに対する防止指針を策定し、具体的な対策を講じること。

以 上