全人連として政府に対する何らかの意見表明を求める
全人連への要請行動には、
公務労組連絡会から野村議長、北村副議長、黒田事務局長、蟹澤・鈴木の各事務局次長、小畑幹事、また、自治労連から猿橋書記長が参加しました。
全人連側は、関谷会長(東京都人事委員会委員長)をはじめ、中澤(北海道)、藤崎(宮城県)、市川(長野県)、那須(愛知県)、帯野(大阪府)、森信(広
島県)、山本(高知県)、常盤(福岡県)、岡部(横浜市)の各人事委員会代表ほかが出席しました。 はじめに、野村議長(自治労連委
員長)は、「要請書」(別掲)を提出したうえで、「被災地では、自治体労働者が被災した住民のために昼夜分かたぬ業務を続け、教職員も学校の再開にむけて
奮闘してきた。全国からも多くの職員が派遣されている。こうした苦労に報いる賃金・労働条件の改善が必要だ。しかし、一方で、国家公務員の賃金1割カット
がねらわれ、私たちも、賃下げに反対して片山総務大臣との交渉の場に参加してきたが、結局は明確な理由も示されず閣議決定が強行された。この間、国民の声
も変わってきていることを実感しており、人事院総裁が、遺憾であるとの談話を発表する異例の事態ともなっている。全人連としても何らかの意見表明について
検討いただきたい。また、地域経済への影響をふまえ、地方公務員や教職員の賃金に波及しないよう努力を求める」と要請しました。 北
村副議長(全教委員長)は、「国家公務員の賃下げをめぐって、片山総務大臣との交渉に参加してきた。その際、地方公務員や教職員の賃下げをやめるよう求め
たが、片山大臣が地方には影響させないと回答する一方で、野田財務大臣は地方自治体にも国と同様の対応を求めている。政府部内で見解が統一されていないな
かで、全人連として地方に賃下げが押しつけられないように努力を求める。また、厳しい労働条件のなかで勤務している教職員の給与改善を求める」とのべまし
た。 自治労連の猿橋書記長は、「国家公務員の賃下げは、消費税増税で国民に新たな負担を押しつけるための露払いとしての役割を持っ
ている。被災地では、みずからの生活よりもまず住民のために仕事している。公務公共業務の役割がいっそう重要になるもとで、安心して働くことのできるよう
に、賃金・労働条件の改善を求める」と要請しました。
公正な人事行政の専門機関としての使命を果たしていく
これに対して、関谷会長
は、「みなさんからの要請については、確かに承りました。さっそく、全国の人事委員会にお伝えする」とのべたうえ、以下の通り回答しました。 【関
谷全人連会長の回答】 本年は、例年にない様々な状況が生じております。広範な地域に甚大な被害をもたらした東日本大震災は、発生か
ら3か月ほど経過した現在も、依然、社会生活や経済活動に大きな影響を及ぼしております。また、公務員制度改革や国家公務員の給与に関する動きをめぐっ
て、これまで以上に活発な議論が行われております。 政府の月例経済報告は、「東日本大震災の影響により、このところ弱い動きとなっ
ている」とし、景気の先行きについても、「当面は東日本大震災の影響から弱い動きが続くと見込まれる」として、厳しい状況との認識を示しております。ま
た、厚生労働省が発表した4月の毎月勤労統計調査の速報値では、1人平均の現金給与総額は、前年同月比で1.4%のマイナスとなっており、震災による民間
賃金への影響が推測されます。 毎年、各人事委員会が人事院と共同で行っている民間給与実態調査につきましては、震災の影響により、
当初予定していた5月1日からの開始は見送ったところですが、被害が甚大であった岩手県、宮城県、福島県及び仙台市の人事委員会を除いて、現在、6月下旬
から8月上旬までの調査期間での実施へ向け、準備を進めているところです。例年と異なる日程ではございますが、本年も引き続き民間給与の水準を適切に把握
し、公務員の勤務条件が社会情勢に適応した水準となるよう、努めてまいります。 本日、要請をいただいた個々の内容につきましては、
各人事委員会において、調査の結果や各自治体の実情等も踏まえながら、本年の勧告へ向け、検討を行っていくことになることと思います。
公務員の給与を取り巻く環境は大変厳しい状況にありますが、私ども人事委員会は、本年も中立かつ公正な人事行政の専門機関として、その使命を果たしてまい
ります。 また、公務員制度改革や、高齢期における雇用問題など、公務員の人事給与制度に関する動向につきましては、全人連といたし
ましても、引き続き適切に対応していきたいと考えております。 全人連は、今後も、各人事委員会の主体的なとりくみを支援するととも
に、各人事委員会や人事院などと十分な意見交換に努めてまいります。
以 上
【全
人連への要請書】
全国人事委員会連合会委員長 会 長 関谷 保夫 殿
公務労組連絡会 議長 野村幸裕
地方公務員の給与勧告に関わる要請書
日頃から地方公務員の勤務
条件の向上にご努力いただいていることに敬意を表します。 東日本大震災から3か月が経過するもと、地元の自治体職員はもとより、全
国から被災地に派遣された職員・教員は、今なお不眠不休で献身的な奮闘を続けています。しかし、政府は被災地における公務労働者の奮闘に背をむけ、国家公
務員賃金の1割引き下げの「特例法案」を、労働組合との合意もないまま国会提出を強行しました。政府による賃下げは、地方公務員をはじめ正規・非正規の公
務関連労働者の賃金をはじめ、地場賃金や地域経済にも影響を与えることとなります。また、労働基本権制約の代償措置である人事院勧告にもとづかない賃下げ
は、明確に憲法違反であり、人事院も「遺憾と言わざるを得ません」とする総裁談話を発表し、政府の措置に警鐘を鳴らしています。 い
ま、かつて経験のない大災害に立ちむかい、被災地の復興をはじめ住民の生活再建をはかるために、公務公共業務が果たすべき役割が重要となっており、それを
支える公務労働者に対する賃金・労働条件の改善が求められています。 すでに貴連合会に対しては、4月19日に要請書を提出してきた
ところですが、国家公務員の賃下げ法案提出という新たな情勢とともに、約1か月半遅れで民間給与実態調査が開始されるにあたり、下記の要求をあらためて取
りまとめました。貴職が積極的な立場に立ち、要求事項の実現にむけて尽力されることを要請するものです。
記
1、
被災地や全国の避難所で、住民の暮らしや子どもたちの教育のため、日夜、献身的に奮闘している自治体労働者・教職員を励ますとともに、誇りを持って公務公
共業務に従事できるように、正規・非正規を問わずすべての公務労働者の賃金・労働条件を改善すること。
2、現行
制度に基づかない公務員賃金引き下げという事態にあたって、労働基本権制約の代償機関として、政府に対して自治体財政や地域経済への問題点など、人事委員
会として意見表明をしていただくこと。
3、民間給与実態調査にあたっては、単に民間の給与水準と機械的に比較す
るのではなく、地方自治や地方公共団体のあり方、公務・公共サービスのあり方と公務員賃金水準とが密接不可分であることや、民間労働者の賃金や地域経済へ
の影響を十分留意して作業をおこなうこと。とりわけ、比較対象企業規模を100人以上にすること。 4、教員給
与については、勤務実態に応じた適切な給与水準を確保すること。
5、住民に信頼される中立・公正な地方行政を確
保する観点から、競争原理、「成果・業績」にもとづく給与・人事管理制度実施などの勧告をおこなわないこと。
6、
公務員総人件費削減のもとで増加している臨時・非常勤職員について、人事院の「指針」等をふまえつつ、給与をはじめ休暇制度など労働条件の改善、雇用の安
定・均等待遇の実現などにむけて必要な対策をおこなうこと。
7、介護休暇制度について、日数の増加や対象者の拡
大、休業手当金の上限規制の撤廃、十分な所得保障など改善をおこなうこと。また、育児休業制度についても、無給規定の撤廃をはじめ、十分な所得補償をおこ
なうこと。 当面、育児休業手当金については、適用要件をなくし取得者全員に1歳6か月まで支給すること。
8、
新たな高齢期の雇用施策の基本方向について、「雇用と年金の接続」を大原則とし、制度設計にあたっては労使での十分な協議をおこなうこと。
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