No. 791
   2011年6月2日 
労働組合と合意なく法案提出強行の構え

= 片山総務大臣が、6月3日に賃下げ法案提出を表明 =

 6月1日から総務省前の座り込みがはじまった公務員賃金の「1割カット」の撤回を求めるたたかいは、2日には片山総務大臣との交渉が配置され、大詰めをむかえました。
  大臣交渉では、あらためて賃下げの理由に対する納得ある説明を求めるとともに、地方公務員や民間労働者の賃金に影響し、景気を引き下げる問題点をかさねて 指摘しましたが、片山大臣は、これまで通りの回答を繰り返したうえ、「合意は得られなくとも、法案を提出し、最終的には国会で判断してもらう」などとし て、強行姿勢を変えませんでした。
 政府は、明日3日にも、公務員賃金を最大で10%カットする「特例法案」を通常国会に提出する構えです。

内閣不信任案に賛成する鈴木副大臣、内山政務官は辞表提出

 片山総務大臣との交渉には、国公労連の宮垣委員長を先頭に、岩崎・阿部の各副委員長、岡部書記長、自治労連から野村委員長、全教から北村委員長が出席しました。総務省側は、片山総務大臣、村木人事・恩給局長らが対応しました。
  なお、これまで交渉対応してきた内山総務大臣政務官は、鈴木総務副大臣とともに、1日に提出された内閣不信任案に賛成するため辞表を提出したことで、大臣 を補佐すべき2人ともが欠席するという異例の事態となりました(実際には、2日の本会議では「反対票」を投じて「復職」)。
 宮垣国公労連委員長 は、この間の交渉の議論をふまえて、@公務員賃金を1割カットする納得のできる理由、A国家公務員の賃下げが地方公務員や民間労働者に影響し、賃下げがデ フレをさらに悪化させるということ、B被災地をはじめ現場の第一線で働く職員の士気を低下させること、C労働基本権制約のもとでは、一方的な賃金カットは 明確に憲法に違反すること、などへの説明をあらためて求めました。
 これに対して、片山大臣は、以下の通り回答しました。
 ● 給与削減の目的はマニフェストの実現にあるが、それを金科玉条にしているわけではない。公務員給与の現状、国の財政事情、国民世論とともに、そのうえ、震災で財政が厳しくなったことが理由だ。
 ●  景気の影響は国会でも議論があった。影響することは事実だが、景気は公務員給与だけで左右されるものではない。震災復興による2次、3次の補正で景気を 押し上げる効果が出る。なお、今回の給与削減は、国家公務員だけに限定したものであり、財政を圧縮すべきではなく、私自身やるつもりはない。
 ● 各地から被災地に派遣されている職員の苦労を考えれば、心苦しいことだ。菅総理もそうおっしゃっている。しかし、財政事情の厳しさを考えれば、あえてやらざるをえないと考えている。
 ●  人事院勧告にしたがうのがまっとうなやり方だが、極めて異例の措置として、自律的労使関係制度の先取りとしてやるものだ。労使双方が合意することが一番 だが、そうならなかった場合でも、最後は勤務条件法定主義にもとづいて国会が決めることだ。また、未来永劫の削減ではなく、あくまでも3年間の臨時的な措 置だ。
 ● みなさんが連日、庁舎の前で行動しているが、私も毎日、発言に耳を傾けている。それを聞くと共感できるところもある。財政事情を考えると、心苦しい措置をとらざるをえない。

「先取り」などではなく「いいとこ取り」に過ぎない

  これに対して宮垣委員長は、「賃下げしても、国の財政がどれほど好転するのか。他に削るものがある。消費税増税の話がでているが、公務員の賃金カットの次 に、増税で国民にいっそうの負担を求めることが目的だ。地方公務員に影響しないと言うが、財務省は地方交付金削減をあきらめていなという報道もある。国も 地方公務員も教員も、みんな現場で一生懸命やっている。政府は、その労苦に賃下げで応えるのか。自律的労使関係制度の先取りと言うが、まだ提出もされてい ない法案であり、『先取り』などではなく、『いいとこ取り』にすぎない」と一つ一つの回答を厳しく批判したうえ、「合意できない以上、賃下げの提案は撤回 せよ」とせまりました。
 片山大臣は、「他に削るものがあるとの指摘だが、公共事業費は半減し、社会保障費も改革のなかで圧縮している。また、地 方交付金の削減では、政府内では激しいやり取りをしてきた。給与引き下げは心苦しいが、被災地での住宅確保などに膨大な財源が必要であり、何とか支援した い」などと繰り返しましたが、「先取りをいいとこ取りと言われてもしかたがない」と認めざるをえませんでした。
 宮垣委員長は、「とうてい納得で きない。したがって、交渉を継続するよう求める。それができなければ白紙撤回せよ」と求めると、片山大臣は、「このまま議論しても、平行線をたどるだけ だ。一方で、流動的な政治情勢、国会の会期末を念頭にすれば、どこかで最終的な結論を出す必要がある。とくに、自律的労使関係制度の法案は、ほぼまとまっ て提出される予定である。みなさんとの合意にもとづき円満に国会提出できれば最良だが、どこかのタイミングで、政府として結論を出さなければならない」と のべ、法案提出を強行する考えを示しました。

アリバイ作りの交渉は断じて認められない

  交渉団は、「合意がないままに国会に提出を強行しようとしても、われわれには制度上、それに対する対抗手段がない。見切り発車は認められない」「賃金を下 げるというのなら、処分と同じであり、不服申し立てができることなどについて説明があってしかるべきだ。閣議決定を強行するならば、どんな権利があるのか 説明せよ」とせまりましたが、片山大臣は、「不服があっても、法律が決まればそれにしたがってもらう」などとあくまでも強行姿勢を変えませんでした。
  こうしたことから、宮垣委員長は、「大臣から、丁寧に説明したいとの申し出があったので、こちらも意を尽くしてやってきた。なのに、こちらの考えが伝わっ ていないことが誠に残念だ。このことを、被災地に働く職員にどう説明すればいいのか。『いいとこ取り』で交渉を押し切り、国会日程から時間切れだと言って 法案提出を強行するのならば、アリバイ作りの交渉ではないか」と厳しくせまりました。
 片山大臣は、「アリバイ作りなどでは決してない。みなさん からは、賛成してもらわなくとも、やむえないくらいの理解をもらいたいと願っていた。スケジュールを決めてやっているのではなく、政府部会でもさまざまな 意見があるなかで努力していることは理解してもらいたい。残念だが、法案は国会に提出したい。指摘のように、国会段階でも、みなさんの主張を堂々と示して いただければいい」との回答をふまえ、約1時間にわたる交渉を閉じました。
 なお、交渉では、賃下げ反対署名13,712筆を片山大臣に提出、総計では16万5千筆を超えました。

悪天候のなかで整然と仲間たちが座り込み(2日目)

 6月1日からはじまった総務省前・怒りの座り込み行動は、2日目はあいにくの雨が降るなかでの行動となりました。
 朝8時30分の行動開始から、国公労連・自治労連・全教など公務単産とともに、民間労組からも参加、全国食健連の坂口事務局長(全農協労連)らが参加者に激励のあいさつをおくりました。
 昼休みの要求行動では、全教の北村委員長(公務部会代表委員)が主催者あいさつし、直前におこなわれた片山総務大臣との交渉の様子を伝え、「まともな理屈もなく、法案提出を強行しようとしていることを断固阻止しよう」と最後までの奮闘を訴えました。
 連帯・激励のあいさつでは、全労連の小田川事務局長が、「自律的労使関係制度にかかわる法案の閣議決定も予定されているが、今回の賃下げは、その『先取り』などと言えるものではない」と批判し、全労連としても全面的にたたかうとの決意がのべられました。
 また、JALの不当解雇撤回でたたかう航空労組連の近村議長は、「国民の安全・安心を守る立場からも、公務・公共サービスの守り手である公務員の賃下げは認められない」と激励しました。
 行動は、降りしきる雨の中を18時すぎまでつづけられ、参加者のリレートークなどを通して、職場の怒りを政府・総務省にぶつけました。2日目の行動にはのべ400人が参加しました。

以 上