No. 790
   2011年5月27日 
片山大臣から政府としての統一見解を示せ

= 公務員賃下げに反対して、3度目の政務官交渉 =

 公務員賃金の引き下げの提案をめぐって、27日に内山総務大臣政務官との交渉にのぞみました。
  国公労連・自治労連・全教の書記長を中心にした3度目の政務官交渉では、賃金引き下げは人事院勧告制度にもとづかないものであり憲法違反であること、「国 の財政事情」や「震災の復興財源の確保」が賃下げの理由とはなりえないことなどに追及の重点を置き、政府側からの回答を通して、これらの基本的な問題点を あらためて明らかにしました。
 内山政務官は、組合側の追及に追い込まれると、最後には、「無理を承知でお願いしている。なんとか協力してほし い」「頭を下げるしかない」などの発言を繰り返し、そのうえ、「みなさんも身を削って震災復興に貢献してほしい」とのべたことから、交渉団の怒りがさらに 高まりました。

交渉決裂の救済措置もなく無権利状態で賃下げ強要

 総務省との交渉には、前回と同様に、国公労連の岡部書記長を先頭に、自治労連の猿橋書記長、全教の今谷書記長らが出席、総務省側は、内山晃総務大臣政務官、村木人事・恩給局長ほかが対応しました。
 はじめに、内山政務官から、25日に取り組んだ国公労連との交渉(国公労連ニュース参照)もふまえて、「その際に、後日お答えすることとした事項について回答したい」として、以下のようにのべました。

問1 団結権がない職員等への対応について
 ●  今般の給与引下げは、労働基本権制約の代償措置である人事院勧告に基づかない極めて異例の措置であることから、使用者である政府としては、職員の皆さん を代表している立場である職員団体の皆さん達と、自律的労使関係制度を先取りし、今般の措置の理解が得られるよう、真摯に話し合いを行ってきているところ だ。
 ● また、各府省に対しては、内閣官房副長官から各省事務次官に対し、給与引下げを行う趣旨などについて説明を行い、総務省から、団結権の無い職場も含め、各府省人事当局に対しても同様の説明を行っているところだ。
 ● さらに、しかるべきタイミングで、国家公務員全体に対するメッセージを政府から発し、今般の措置について、職員の皆さんの理解が得られるように努めてまいりたい。

問2 交渉が決裂した場合の救済措置について
 ● 今般検討している給与減額措置は、@極めて厳しい財政状況等に鑑み、A極めて異例の措置として、B時限的な措置として行うものであり、皆さんとも真摯に話し合った上で行おうとしているもの。
 ● 我々としては、皆さんとの交渉を通じ、本措置の必要性について十分に理解いただけるよう、努力したいと考えている。

問3 職員の生活は非常に厳しいという点への理解について
 ● 職員の皆さんには、今回の東日本大震災への対応を含め、日夜公務に精励していただいていると認識している。
   一方で、現下の経済社会情勢や厳しい財政事情に加え、東日本大震災の復旧・復興支援のために多額の経費が必要となることを踏まえれば、歳出の削減は待ったなしの課題であり、国家公務員の皆さんにもご協力をいただかなければならないと考えている。
 ● 今回提案させていただいている給与引下げ案については、大変厳しい内容であり、職員の皆さんの生活にも大きな影響を与えるものではあることはよく理解している。
 ● このため、俸給の減額率について、給与額の少ない中堅・若手層には一定の配慮を行うこととしたほか、東日本大震災への対応等の業務に関する超過勤務手当について、その実態を踏まえて実績に応じた支給が確保されるよう努めてまいりたいと考えている。
 ● いずれにしても、今回の給与引下げについては、大変心苦しく思うが、是非とも事情をご理解いただき、ご協力をお願いしたい。

「身を削って貢献しているというモチベーションを持て」と暴言

  国公労連の岡部書記長は、「こちらの要求を正面から受けとめた回答とは言い難い。23日に一部の組合が合意したことが報道されると、職場からの怒りはさら に高まっている。また、賃下げはするが、モチベーションを持ってがんばれという政務官の発言にも、仲間たちの怒りが沸騰している」と厳しくのべ、「例え ば、財政事情をどのように改善していくのか、そのことと公務員賃金との関係は解明されていない。交渉不調の場合の調整システムなど救済措置もないなかで、 労働組合と合意しないまま、政府による一方的な賃下げが可能なのか、納得できる法的根拠を明確に示せ」とせまりました。
 村木局長は、「交渉不調 の際のルールは現行制度にはない。その通りだ。だから、臨時・異例の3年間の時限措置として提案し、みなさんとできるだけ誠意ある話し合いをして合意を得 る努力をしている。さらに、勤務条件法定主義があり、最終的には法案として出して国会の判断をあおぐこととなる」と、あくまでも正当性を主張しました。
  これに対して、交渉団は、「明確に憲法に違反する行為を、『臨時・異例の措置』などとして検討すること自体が不当だ。自律的労使関係制度の『先取り』など というが、公務員制度改革関連法案は、現時点では国会提出もされていない」と追及すると、内山政務官は、「法案は足並みをそろえて同時に提出する。きわめ て異例の措置と言うことは本当によくわかっている。国民全体で、少しずつ復旧・復興の財源を捻出しなければならない。頭を下げてお願いしている。身を削っ ても震災復興と財政再建に貢献しているのだという点で、逆にモチベーションを持ってほしい」などと無責任に回答しました。
 交渉団からは、「身を 削っても貢献する貢献せよと言う発言は聞き捨てならない。被災地では、家族を失い、家も失いながらも、まさに身を削っても貢献している公務労働者がたくさ んいる。全国からも、自治体や国の職員が被災地に派遣されている。さらに、労働組合としてもボランティア活動をしている。賃金をカットすることが身を削る ことなのか。法律を破ろうとしていることをこちらが指摘しているのに、根拠は何ら示されていない」と怒りが集中しました。

勤務条件法定主義のもとでは政府は何をしてもいいのか!

  内山政務官に代わって回答した村木局長は、「通常のルールを破ることとなるが、違法ではない。許容の範囲内だ」と強弁しましたが、「権利保障という点で は、細かいところについてすべて完備していないということは、その通りだ」と認めざるをえませんでした。しかし、村木局長は、「3年間の時限措置であり、 勤務条件法定主義の原則にかえって、最終的には国会で判断してもらう」などと法律論を繰り返しました。
 これに対して、交渉団からは、「勤務条件 法定主義があると何度も言うが、それでは、現行法にもとづかない措置が、異例だからできるのだという理屈が成り立つのか」とせまると、「今回の措置が、通 常ではないことはその通りだ。しかし、違法ではない。国家公務員法28条の趣旨は、公務員の勤務条件は国会が決めることとなっている。これを変更するとき は、人事院が勧告を怠ってはならないとしているだけで、逆に言うと、人事院の勧告がなければ、勤務条件の変更ができない訳ではない」などと開き直ると、交 渉団からは、「詭弁だ」との大きな声が上がりました。
 さすがに、村木局長は「法律がそうなっているからと言って、何でも自由にできるわけではない」とつけ加えたうえ、「だから、節度を持ってやっている。3年間だけやらせてもらう」などと主張しました。
  交渉団は、「良くないことをするが、期限つきだから許されると言っているようなものだ。いままでの話を総合すると、勤務条件法定主義をタテにとれば、政府 は、労働者の権利を無視しても、何でもやれるという論理になる。それが、政府がめざしている自律的労使関係制度なのか」と理屈立てて主張しても、内山政務 官からは、「無理を承知でお願いしている」との回答しか示されませんでした。

膨大な赤字をつくり出した責任は誰にあるのか

  政府が、「国の財政事情」を理由にしていることに対して、交渉団は、「地方自治体でも賃下げをしていることをあげているが、複数年次で賃金カットしている 自治体はほとんどない。その場合でも、将来の財政の見通しがきちんと示したうえで交渉する。それも示されないのに、3年にもわたって賃金カットするのか。 3年先はどうなるのか」とせまると、内山政務官は、「3年先はどうなるかわからない」と無責任にのべ、「しかし、震災復興には天文学的なお金が必要だ。み なさんにも少しずつ協力してもらいたい。政府の代表として、何としてもお願いするしかない。私としては頭を下げるしかない」と繰り返しました。
  交渉団からは、「膨大な財政赤字をつくり出した政府の政策を、根本的に検証せよ。公務員の賃金を下げれば、すべての労働者の賃金に影響し、消費が冷え込ん で景気も税収も落ち込み、財政事情はさらに悪くなる。労働者の賃上げで景気を良くすることが、財政再建にもつながる」と指摘すると、内山政務官は、「みな さんのおっしゃることは、本当によくわかる」と回答するだけで、まともな交渉とはなりませんでした。
 交渉は平行線をたどったことから、岡部書記 長は、「政務官と3度にわたって交渉してきたが、依然として私たちが求めている賃下げの理由と根拠、経済・景気へのマイナス波及、職員へのモチベーション 低下、現行制度化でのルール違反の問題など、いずれも納得できる説明は果たされていない。おっしゃる通りと、われわれの主張に納得するのなら、提案は白紙 に戻すのがスジだ。一方的に国家権力で賃下げを強要することは断じて認められない」と厳しく指摘すると、内山政務官が「理解をいただけず残念だ。今後の対 応は、片山大臣とも相談したい」とのべたことから、岡部書記長は、「そうであれば、これまでの論点をしっかりと整理し、次回は大臣出席のもとで、明確な説 明とともに、政府としての統一的な見解を示せ」と求めました。
 内山政務官が、「次回は、大臣からお話しいただけるよう、私から大臣によく申し上げておく」と回答したことをうけ、交渉を閉じました。

賃下げ反対署名2万5千筆分を追加提出

 政府が賃下げを強行しようとしているもと、職場からの怒りが急速に高まり、公務員賃金の引き下げに反対する署名の集約がすすんでいます。
 この日の交渉では、2万5千筆の署名を追加で提出しました。総計では、15万筆を超える到達点となっています。署名を通して職場からさらに怒りを集中させ、賃下げ撤回を求めて最後の最後までの奮闘が求められています。

以 上