No. 786
   2011年5月13日 
「1割 カット」の賃下げは断じて認められない!

= 国公労連・自治労連・全教の委員長が出席して総務大臣と交渉 =

 昨年来、政府が公務員総人件費削減へ「給与法案」提出 をねらうもと、片山総務大臣は13日、賃金引き下げにむけた方針を労働組合に提案しました。
 その内容は、今後、約3年間にわたっ て、俸給・ボーナスの1割をカットするというもので、これを基本にして労働組合との交渉をすすめることを表明しました。
 総務大臣交 渉には、国公労連をはじめ、自治労連、全教の代表も参加、東日本大震災の被災地で日夜奮闘する国・地方の公務員の努力もふみにじる道理のない賃下げ提案に 対して、一致して怒りの声をぶつけました。

3年間の時限措置として賃下げを検討

  片山総務大臣との交渉には、国公労連の宮垣委員長を先頭に、岩崎・阿部の各副委員長、岡部書記長、自治労連から野村委員長、全教から北村委員長が出席しま した。総務省側は、片山総務大臣とともに、鈴木総務副大臣、内山総務大臣政務官ほかが対応しました。
 はじめに、片山総務大臣から、 以下の通り提案がありました。
 ● 政府は、現下の社会情勢や厳しい財政事情などをふまえ、国家公務員の人件費削減について、まず は、現在の人事院勧告制度のもとでは極めて異例ではあるが、自律的労使関係制度が措置されるまでの間においても、その移行を先取りする形で、給与の引き下 げを内容とする法案を今通常国会に提出すべく検討をおこなってきたところだ。
 ● 先月の春闘要求に対する回答では、国家公務員の給 与引き下げについては、具体案がまとまった段階でよく説明し、理解が得られるよう話し合いたい旨お伝えしたところであるが、本日、政府として、方針がまと まったのでみなさんお示しする。
 ● 今回の給与引き下げは、我が国が厳しい財政事情にあり、特に今般の東日本大震災への対処を考え れば、さらなる歳出削減は不可欠となっており、国家公務員の人件費も例外ではないと考えているからおこなうものである。
 ● このた め、みなさんの理解がえられるよう話し合ったうえで、給与の引き下げをおこないたいと考えており、具体的には、平成25年度末までの間、俸給・ボーナスの 1割をカットすることを基本として、国家公務員の給与引き下げをおこなうことについて、政府代表として提案したい。
 ● 今回の給与 引き下げは、職員のみなさんには大きな痛みをともなう措置ではある。震災対応をふくめ、日夜、公務に精励していただいているなか、大変心苦しく思うが、ぜ ひともご理解いただき、ご協力をお願いしたいと考えている。

公務員 総人件費2割削減の方針はただちに撤回せよ

 これに対して、国 公労連の宮垣委員長は、「提案された内容は、公務労働者の労働条件の大幅な切り下げであり、かねてから主張してきたように重大な問題を持っており、認めが たい」とのべたうえ、以下の点を主張しました。
 ○ 震災復興の財源確保の一環として公務員給与を削減することは認められない。復興 財源は、国家公務員の賃金の一部をカットして確保できる金額とは桁違いであり、それに見合った財源論議が必要だ。復興のために公務員もみずからの給料を差 し出して貢献せよという考え方を、使用者たる総務大臣が持つとすればきわめて重大だ。
   「全体の奉仕者」としての使命にもとづい て、被災地の復興に全力をあげることが公務労働者としての貢献のあり方であり、賃下げで貢献せよという考え方にはくみしない。
 ○  今回の提案にあたっては、次の3点について、総務大臣としての考え方が明確に示されるべきだ。
  一点目は、政権公約である国家公務 員総人件費2割削減の方針は、もともと道理のないものだが、民主党のマニフェストがことごとく破綻するもとで、なぜ公務員総人件費削減にしがみつくのか。 震災を通して、公務・公共サービスの重要性があらためて明らかとなっているとき、公務・公共サービスを切り捨ててきた「構造改革」の見直しが急務であり、 何よりもまず公務員総人件費削減の方針を撤回すべきだ。先進主要国の中で日本の公務員数・公的部門職員数は最も少なく、フランス、アメリカ、イギリスの半 分以下だ。今やるべきことは、賃下げよりも震災の復興のために公務員の数を増やすことが必要だと思うが、大臣はどのように考えているのか。
 ○  二点目は、公務員の賃下げの影響力についてだ。震災で日本経済の落ち込みが懸念されるもと、労働者の賃金底上げや雇用の安定、確保こそが求められてい る。公務員の賃下げは、民間労働者の賃金にも影響し、賃下げによる消費の冷え込みが避けられず、ひいては、国内生産の減少、国と地方の税収の減少にもつな がり、景気回復をめざす流れにも逆行する。さらには、地方自治体の交付金にも連動する部分があり、自治体財政にも影響がおよぶこととなる。
   公務員の賃金を下げるならば、広範囲におよぶ否定的な影響もふまえた検討が必要であるという認識を持っているのか。
 ○ 三点目 は、「きわめて異例の措置」と言うが、人事院勧告にもとづかない労働条件の切り下げは明確に憲法違反だ。憲法を踏み破る措置を、「異例の措置」などとして 検討すること自体が不当だ。
  片山大臣は、国会答弁で鳥取県知事時代に県職員の賃金をカットした経験をのべられているが、それに準 じて国でも賃金カットが可能というお考えならば、納得ができる合理的な説明を求めたい。

 自治労連の野村委員長 は、「経済状況が厳しいなかでも大企業は、この間、利益を上げてきている。利益の分配が必要であり、政府としてそれを実行する決断が求められている。復興 財源確保のためにも、公務員の人件費削減は例外ではないと言うが、被災地の自治体労働者はみずからの生活を犠牲にして住民のために働き、公務労働者として の役割を担っており、賃下げなど考えられない。復興に必要な財源は、30兆円とも40兆円とも言われ、財界の内部留保の還元などが必要だ。地方公務員の給 与削減も伝えられているが、交渉当事者能力のない財務省が、地方公務員の労働条件に圧力をかけるべきではない。また、それを理由とした交付金削減は、財政 が厳しいなかで苦労している自治体の努力を無にするものであり、怒りを禁じ得ない。地方自治体への賃下げの強要は、民主党政権がかかげる地域主権改革にも 反するものだ」と厳しく指摘しました。
 また、全教の北村委員長は、被災地での学校再開にむけた教職員の奮闘にも触れながら、「提案 された賃下げの理由は理解できない。国家公務員の賃下げが、地方公務員の賃下げの圧力にならなかった例はない。民主党のマニフェストは、『ムダづかいの根 絶』として公務員総人件費削減が位置づけられている。公務員給与は『ムダづかい』なのか。復興財源の全体的な議論なくして、国家公務員の給与削減を先行さ せることは認められない。また、理解を得るというのなら、今国会への法案提出というゴールを決めて交渉し、結論を押しつけることはあってはならない」と厳 しく指摘しました。

「鳥取県知事時代には給与カットを実行してきた」と強弁

  これらの主張に対して片山大臣は、以下の通り回答しました。
 ● お話はうかがった。極めて異例のことであり、心苦しい提案である。 いただいた厳しいご意見は受けとめたい。
 ● 総人件費2割削減の公約との関係は、選挙で国民に示した政策を実現しなければならない のは、民主政治の原則だ。国の財政の問題とともに、(公務員の給与が高いという)国民感情もあると思う。政府としては、与党の政策を実行する立場だ。公務 員の国際比較はいろいろされているが、基本的には仕事の量との比較が必要だ。数を減らすならば、仕事を軽減すべきであり、総務省としてこれからも努力して いきたい。
 ● 公務員給与のカットが景気の冷え込みにつながることは、理論的にはあると思う。消費が減れば、景気も下向きになるこ とは確かだ。ただし、今回は、2次補正の公的支出がかなり増えることで、景気が上向きとなる要素を持っていると言える。
 ● 憲法違 反という指摘は、議論があるところだ。かつて鈴木内閣の時に人勧を凍結・値切りしたことがある。鳥取県知事の時も、県民の代表である議会の同意を得て給与 カットをやってことがある。今回も、労働基本権が制約されているなかだが、無視しているわけではない。しかし、今は、財政事情が非常に厳しく平時ではな い。異例の取り扱いがあっても許されると考える。また、あくまでも期限を区切った臨時的な措置だ。その点でも一定の整理をしている。
 ●  地方公務員についての指摘があったが、あくまでも今回は国家公務員の給与について、考え方を示したものだ。同様のことを自治体に求めることはいっさい考 えていない。国が自治体に圧力をかけるという点は、昨年の人事院勧告の閣議決定でも、従来の文言を盛り込まず、あらためたところだ。その考え方は、今も変 わっていない。
 ● 公務員給与は、必要な経費であり、決して「ムダづかい」などではない。必要な経費だ。ただ、民間準拠とともに、 財政事情が要素であり、必要なものをどのようなどのような水準におちつけるのかということだ。民主党のマニフェストでも、「ムダ」とはなっていなかったは ずだ。
 ● 復興財源の議論との関係は、昨年の段階ですでに菅政権として給与引き下げの検討を表明していたもので、復興財源が目的で はない。財政事情と国民感情を念頭に置きながら国会に提出することにしていた。そうしたなかで震災が起こり、引き下げた分を復興財源に使うというのは当 然、予想されることではないか。
 ● 結論ありきではなく、できるだけご理解とご協力をいただきながらやっていきたい。したがって、 今日もこのような場を設けさせてもらったものだ。

 最後に宮垣委員長は、「本日は、納得できる回答は何ら示され なかった。引き続き、納得のできる合理的な考え方を示すよう求める。労働組合との合意をめざすというのならば、今後、使用者責任にもとづいて労働組合との 誠意ある交渉・協議を求める。その入口に過ぎず、具体的な内容が示された段階で必要な意見ものべる。道理のない賃金引き下げの強行は断じて認められない」 と表明し、これに対して、片山大臣は、「みなさんにすんなりと受けいれてもらえないとは思うが、意のあるところを汲んでもらいたい。主張の開きはあるが、 それはそれとして今日は有意義だった。近日中に、具体案を示したい」とのべ、交渉を閉じました。

12万5千名分の「賃下げ反対署名」を片山大臣に提出

 大臣交渉では、この間、職 場や地域でとりくんできた「公務員賃金の引き下げに反対する署名」を持ち込み、公務部会として集約した125,457筆分を政府に提出しました。
  給与とボーナスの「1割カット」の提案が正式に示されたもとで、道理のない大幅な賃金引き下げに反対して、来週の16日から配置されている「統一行動強化 ゾーン」でのとりくみ強化を呼びかけます。

以 上