「厳しい財政事情」を理由にして勧告制度を踏みにじる
総務省との交渉には、公務労組連絡会から山口議長を先頭に、野村副議長、黒田事務局長、蟹澤・鈴木の各事務局次長、米田・門田の各幹事が出席、総務省側は、人事・恩給局総務課の西水(にしみず)総括課長補佐、遠山課長補佐ほかが対応しました。
はじめに、山口議長は、「消費の低迷がつづいており、消費者物価も下がっている。景気はいっこうに回復する兆しが見えない。政府による景気対策が急がれて
いるが、その中心は、労働者の暮らしを改善することだ。公務労組連絡会として、景気回復にむけた賃上げを求めてきたが、こうした要求に背をむけて、政府が
今国会に公務員の賃下げ法案の提出をねらっていることは重大だ」と指摘し、公務員賃金の積極的な改善を求めました。 これに対して西水総括補佐は、点時点での検討状況として、以下のように回答しました。 ●
公務員の総人件費削減については、昨年11月1日の閣議決定をふまえ、現下の経済社会情勢や厳しい財政事情等などから、国家公務員の給与の引下げを内容
とする法案を今通常国会に提出すべく検討を進めている。この問題については、具体案がまとまった段階で、よく説明し、理解が得られるよう話し合いたいと考
えており、その場でしっかり議論したい。 ● 労働基本権について、「自律的労使関係制度に関する改革素案」が提示されたところであり、今通常国会での提出にむけた関係法律の改正案の策定作業が進められている。総務省としても、これに連携・協力してまいりたい。 ● 非常勤職員の処遇改善について、新たに期間業務職員制度を導入したところだ。また、非常勤職員に対しても育児休業等の取得を可能とすることを内容とする法改正が行われた。総務省としても、まずは、これらの制度の適切な運用の確保に努めていく。 ●
賃金要求について、国家公務員の給与改定は、社会一般の情勢に適応させるとの原則の下、官民の給与実態の客観的調査に基づいて行われる人事院勧告制度を
尊重することが基本姿勢だ。他方、政府としては、現在の人事院勧告制度のもとで極めて異例の措置となるが、給与の引き下げを内容とする法案を検討してお
り、具体案がまとまった段階で、よく説明し、理解が得られるよう話し合いたいと考えている。 ● 国家公務員の退職手当の支給水準については、民間企業退職給付実態調査の結果を踏まえ、官民均衡をはかっているところである。検討に際しては労働組合からの意見を十分にうかがっていく。 ●
超過勤務の縮減では、昨年4月から60時間を超える超過勤務手当の割増や、超勤代休時間制度の新設によりコスト意識を持った超過勤務抑制に努め、超過勤
務縮減を管理職員の人事評価の対象として明確化した。今後とも、引き続き、超過勤務縮減のためのとりくみをすすめる。 ● 雇用と年金の接続の観
点から、定年の段階的延長について、民間の状況も踏まえて検討を進めることとしている。65歳への定年延長にむけて「意見の申出」が人事院において検討さ
れている。人事院の意見の申出も踏まえ、関係機関とも連携をしながら政府全体としてとりくんでいきたい。 ● 国家公務員の福利厚生では、「国家
公務員福利厚生基本計画」の見直し作業を行っている。基本計画の改正案においては、心の健康づくり対策について、これまでの対策に、「職場復帰の際の受入
方針のモデルの作成」や、「管理職員に対する教育を徹底すること」などを加え、その充実を図ることとし、予算要求もしているところだ。
賃上げ、超勤規制など切実な要求実現へ使用者責任を果たせ
この回答に対して、黒田事務局長は、「『極めて異例の措置』などとして、賃金引き下げの法案提出が示されたことは重大だ。勧告制度を尊重するといいなが
ら、一方で、人事院勧告制度を踏みにじって給与法案を提出することは断じて認められない」とのべ、賃下げ方針の撤回を求めました。 西水総括補佐
は、「勧告制度は尊重することは基本だが、厳しい財政事情を考慮して公務員の給与引き下げを政府として検討が必要と考える」などとのべたことから、交渉参
加者からは、「国の借金と公務員総人件費は比較にならない金額だ。公務員の総人件費を削減したからと言って、財政事情が好転するのか」「憲法にもかかわる
法案を提出すること自体が異常だ。到底認められない」などの怒りの声が集中しました。 黒田事務局長は、「理解を得るなどと言うが、11月の総務
省決定の際、公務員の賃金・労働条件にかかわる決定であるにもかかわらず、労働組合には何の相談もなかった。勧告もないままの政府による賃金引き下げの方
針は、道理のないものだ。公務労働者の生活にかかわる問題が、きわめて政治的にすすめられていることは重大だ。仮に給与法案の提出を検討するならば、納得
できる説明をきちんとおこない、労働組合と誠意を持って話し合え」と求めました。 西水総括補佐は、「あくまでも臨時的、異例の措置だ。具体案がまとまった段階で、よく説明し、理解が得られるよう話し合いたい」と重ねて回答しました。 その他の課題にかかわって、示された中間回答にもそって、黒田事務局長は、以下の点を強調しました。 ○ 総務省は、使用者として、臨時・非常勤職員に対する雇用責任を持っていることは言うまでもない。とりわけ、賃金などを「物件費」として扱い、不安定な身分に置かれている現状の改善は急務となっている。 ○ 公務員の賃下げが民間賃金にも影響を与え、消費の冷え込みにより不況をいっそう深刻にしている。賃上げでこそ景気回復がはかられることは明らかだ。消費の拡大が求められているとき、政府みずからが公務員賃金改善などにより不況打開の方向をめざすべきだ。 ○ 異常な超過勤務の実態など長時間・超過密労働は依然として改善されていない。職員の健康、効率的な公務サービスを遂行する立場から、長時間労働を解消するための実効ある対策を使用者として強化するよう求める。 ○ 高齢期雇用のあり方は、年金給付が65歳に延長されるなかで重要な課題だが、定年延長には、職場にはさまざまな意見もあり、今後、労働組合との話し合いにもとづいた制度化を求める。 ○ メンタル不全は、パワーハラスメントとも結びついている場合が多く、自治体でも取り組みがすすむパワハラ指針策定などは緊急の課題だ。 交渉参加者からも、「慢性的な超過勤務のうえ、予算もなく超勤手当も出ていない。そのなかでメンタル不全も増えている。その背景には人員不足がある。まず増員すべきだ」などの声が上がりました。
最後に、山口議長は、「賃下げ法案の提出は認められない。公務・公共サービスの切り捨てがすすむなかで、働きがいを持って仕事ができる職場環境を作ること
が使用者としての総務省の役割だ」とのべ、「明日3日は、総務省の前で座り込み行動を配置している。政府による賃下げへの怒りを示すため全国から組合員が
結集する。総務省は職場の声を真摯に受けとめ、要求の実現にむけて引き続き誠意ある検討を求める」とのべ、交渉を閉じました。 |