No. 775
 2011年2月2日
政府によ る賃下げに意見表明を要請

= 全国人事委員会連合会に公務労組連絡会が要請 =

 公務労組連絡会は2日、自治労連・全教と共同して、地 方公務員の給与改善を求めて、全国人事委員会連合会(全人連)への要請にとりくみました。
 申し入れでは、臨時・非常勤職員をふくめ てすべての公務労働者の賃金・労働条件の改善をはかるため、人事委員会としての役割発揮を求めました。また、公務労働者の賃下げが政府によってねらわれて いるもとで、憲法違反の問題や自治体財政・地域経済への影響をふまえて、人事委員会としても意見表明するよう求めました。

公務員 の賃下げは地域経済や自治体の交付金にも影響

関谷委員長に手交  全人連への申し入れ には、公務労組連絡会からは、山口議長、野村副議長、黒田事務局長、蟹沢・鈴木の各事務局次長、自治労連から猿橋書記長、全教から北村書記長が出席しまし た。
 全人連側は、関谷会長(東京都人事委員会委員長)をはじめ、中澤(北海道)、高橋(宮城県)、浜名(千葉県)、千先(愛知 県)、服部(大阪府)、高升(広島県)、桑城(香川県)、常盤(福岡県)、宮崎(横浜市)の各人事委員会代表ほかが出席しました。
  はじめに、山口議長は、政府・人事院には平均10,000円の賃金引き上げ、初任給の改善などを要求していることを紹介し、同時に、政府が公務労働者の賃 金を引き下げるため「給与法案」の国会提出をねらっていることにふれて、「労働基本権制約の代償措置である人事院勧告にもとづかずに政府が給与を引き下げ ることは、明らかに憲法違反であり、きわめて重大な事態だ。公務員の賃下げは、地域経済や自治体への交付金にも波及することとなり、地方への影響も大き い。そうした立場から、政府が検討している公務員給与の引き下げに対して、人事委員会として何らかの意見表明について検討してもらいたい」と求めました。
  また、自治労連の猿橋書記長は、「退職手当や共済年金もふくめた総人件費削減が検討されている。賃下げは、公務・公共サービスへの住民の期待に応えようと している職員の努力に逆行する。憲法ともかかわる政府のルール違反に対して、人事委員会としても何らかの意思表明を要請する」とのべ、全教の北村書記長 は、「長時間労働など教育職場の厳しい労働の実態が、休職者の増加につながっている。教職員のモチベーションを高めるため、全人連としても努力を要請す る。なかでも、給与引き下げの問題はとくに重視すべきだ。地方への影響をふまえて全人連としても政府に意見をのべてもらいたい」と要請しました。

社会情勢に適応した適正な水準を確保する(全人 連会長)

 これに対して、関谷会長からは、以下の回答がしめさ れました。
【関谷全人連会長の回答】
 ただいまの皆様からの要請につきましては、確かに承りました。さっそく、 役員府県市を通じて、全国の人事委員会にお伝えします。
 去る1月21日に発表された月例経済報告において、政府は、景気の基調判断 を、「一部に持ち直しに向けた動きがみられる」が、「失業率が高水準にあるなど依然として厳しい状況にある」とし、先行きについては、景気がさらに下押し されるリスクの存在や、デフレの影響、雇用情勢の悪化について注意が必要である、としています。
 また、1月に発表された日銀の地域 経済報告においては、全国9地域のうち7地域において景気判断が下方修正され、景気の足踏み状態が全国に広がったとの指摘がなされています。
  このようななか、すでにスタートしている本年の春季労使交渉においては、諸手当や一時金を含めた給与総額の引上げが争点となるものと見られ、その行方が注 目されるところです。
 今後、各人事委員会においては、こうした社会経済の動向などを踏まえながら、本日の要請内容を含め、本年の勧 告に向けた検討を進めていくことになろうかと思います。現在、人事院及び各人事委員会では、本年の民間給与実態調査の実施に向け、民間給与実態を的確に把 握できるよう、その準備を進めているところです。あああ
 一方、国においては、公務員の自律的労使関係制度や高齢期雇用問題に関する 検討が行われているところですが、こうした動きは地方にも大きな影響を与えることから、全人連といたしましても、引き続き、その動向を注視してまいりたい と考えております。
 あらためて申すまでもないことですが、人事委員会の重要な使命は、公務員の給与等の勤務条件について、社会情勢 に適応した適正な水準を確保することであると認識しています。
 公務員の給与を取り巻く環境は、大変厳しい状況にありますが、私ども 人事委員会は、本年も中立かつ公正な第三者機関として、その使命を果たしていきます。
 全人連といたしましても、各人事委員会の主体 的なとりくみを支援するとともに、人事院、各人事委員会との意見交換に十分努めていきたいと考えております。

以 上

【全 人連への要請書】

2011年2月2日

全 国人事委員会連合会委員長
  会 長  関谷 保夫 殿
公 務 労 組 連 絡 会      
議 長    山口 隆

日 本自治体労働組合総連合   
中央執行委員長 野村 幸裕

全 日 本 教 職 員 組 合     
中央執行 委員長  山口 隆

地方公務員の給与等の改善にかかわる要請書

  日頃から地方公務員の勤務条件の向上にご努力いただいていることに敬意を表します。
 完全失業率は依然として5%を超え、今春に卒業 予定の大学生の就職内定率が過去最低となるなど雇用状況は深刻です。政府の月例経済報告も、景気は「足踏み状態」との判断を変えておらず、景気回復にむけ た実効ある対策が切実に求められています。
 景気回復には個人消費の拡大が不可欠であり、そのためにも今春闘での労働者の賃上げは国 民的にも重要な課題となっています。ところが、大企業は膨大な内部留保をため込みながらも、財界は労働者の賃上げを否定しつづけています。
  一方、公務労働者も連年にわたって賃金が下がり続けていますが、それに加え、菅内閣は、「国の財政事情の深刻化」を理由にして、さらなる賃下げを目的とし た「給与法案」の国会提出をねらう異例の事態となっています。
 言うまでもなく、労働基本権制約の代償措置としての人事院勧告をふま えず、政府が一方的に賃下げを強行するならば、労働三権の保障を定めた憲法28条に違反することとなります。そのことは、賃金の決定要素として国家公務員 給与を考慮して給与勧告をおこなう役割を持ち、第三者機関として設置されている地方人事委員会にとっても、看過できない重大な問題であることと考えます。
  また、公務労働者に対する賃下げの動きは、公務員給与に連動する地方交付税や義務教育費国庫負担金の引き下げにもつながりかねず、自治体財政への波及も懸 念されます。
 厳しい地方の経済・財政状況のなかで、住民福祉の充実に日々努力している自治体・自治体関連職場で働く労働者の暮らし を改善するために、貴職が積極的な立場に立ち、下記の要求事項の実現にむけて尽力されることを要請するものです。



1、 民間給与実態調査にあたっては、単に民間の給与水準と機械的に比較するのではなく、地方自治や地方公共団体のあり方、公務・公共サービスのあり方と密接不 可分であることに十分留意して調査をおこなうこと。とりわけ、勤続・経験年数の加味、民間一時金水準の厳正な把握をするとともに、比較対象企業規模を 100人以上にすること。

2、連続して引き下げられている地方公務員給与について、勤務実態に応じた適切な給与 水準を確保すること。とりわけ、子どもたちのさまざまな困難に対応している教職員のモチベーションを支えるためにも、賃金引き下げはおこなわないこと。

3、 公務員総人件費削減のもとで増加している臨時・非常勤職員について、人事院の「指針」等をふまえつつ、給与をはじめ休暇制度など労働条件の改善、雇用の安 定・均等待遇の実現などにむけて必要な対策をおこなうこと。

4、新たな高齢期の雇用施策の基本方向について、 「雇用と年金の接続」を大原則とし、制度設計にあたっては労使での十分な協議をおこなうこと。

5、政府で検討さ れている国家公務員の給与引き下げにかかわって、憲法にも違反するという問題点や、自治体財政や地域経済への影響などについて、人事委員会としての意見表 明をしていただくこと。
以 上