No. 764
 2010年8月11日
賃下げ勧 告に追随せず、働きがいの持てる職場に

= 10年人勧をうけて全人連に賃金・労働条件改善を要請 =

 人事院勧告が10日に出されたことをふまえて、公務労 組連絡会は11日、自治労連、全教と共同して、全国人事委員会連合会(全人連)に対して、地方公務員の賃金・労働条件の改善を申し入れました。
  要請では、2年連続の「マイナス勧告」、55歳以上の定率賃下げなどを内容とした人事院勧告に追随せず、働きがいの持てる賃金・労働条件の改善を強く求め ました。
 また、同日、給与関係閣僚会議の一員である財務大臣に対して、10人勧の取り扱いにかかわる「要求書」を提出しました。


人事院勧告の内容は十分に吟味する必要がある(全人 連会長)

  全人連への申し入れには、公務労組連絡会からは、山口議長、野村副議長、黒田事務局長、蟹沢・松本の各事務局次長、中川・米田の各幹事、自治労連から猿橋 書記長、全教から北村書記長が出席しました。
 全人連側は、関谷会長(東京都人事委員会委員長)をはじめ、中澤(北海道)、高橋(宮 城県)、白井(千葉県)、福間(愛知県)、綾田(大阪府)、林(広島県)、桑城(香川県)、常盤(福岡県)、岡部(横浜市)の各人事委員会代表ほかが出席 しました。
 はじめに、山口議長は「申し入れ書」(別添)を関谷会長に手交し、「今年の人事院勧告は、2年連続のマイナス勧告とな り、55歳以上の職員の給与を1.5%引き下げることも盛り込まれた。今後、各地の人事委員会で今年の勧告にむけた作業がすすめられるが、賃下げの人事院 勧告に追従するのではなく、地方公務員の生活改善にむけた積極的な立場での検討が求められている。地方財政悪化など厳しい情勢のもとで、住民サービス向上 へ日々奮闘している職員の努力に応えるためにも、全国の人事委員会では、地方公務員の給与・労働条件改善にむけて尽力していただきたい」と要請しました。
  また、自治労連の猿橋書記長は、「貧困と格差が深刻になるなか、窓口には生活保護の申請が押し寄せている。一方では、定員削減で十分な体制がとれず、職員 の献身的な努力に支えられている。こうした実態をふまえて、公務員給与がどうあるべきなのかを考えていただきたい。全国の人事委員会は、公務労働者の実態 を伝える社会的な役割を果たすよう求める」とのべ、全教の北村書記長は、「要求アンケートでは、若年層よりも50歳代のほうが生活の苦しさを訴えている。 教職員は、調整額のカットなどにより、生活はさらに厳しくなっている。今後、全人連のモデル給料表の検討にあたっては、マイナスの人事院勧告に追随するこ となく、教職員の実態をふまえた改善を求める」と要請しました。
 これに対して、関谷会長からは、以下の回答が示されました。

【全人連・関谷会長回答】
  ただいまのみなさんからの要請については、確かにうけたまわった。さっそく、役員県を通じて、全国の人事委員会に伝える。
 昨日、人 事院勧告が行われたが、本年の民間給与との較差は、757円、率にして0.19%、公務員給与が民間給与を上回るとしている。この較差を解消するため、一 定の級以上の55歳を超える職員について、俸給及び俸給の特別調整額の支給額を一定率減額するとともに、中高齢層について、俸給表の引き下げ改定を勧告し ている。また、特別給については、民間給与実態調査を踏まえた結果として、0.2月の引き下げ改定を勧告している。
 給与構造改革に 関する言及の中では、経過措置解消により生じる制度改正原資を用いて、来年4月に、若手・中堅層について、抑制してきた昇給を1号俸回復するとしているほ か、定年延長の検討の中で、50歳台の給与のあり方についても検討するとしている。
 また、公務における高齢期雇用の基本的な方向と して、公的年金の支給開始年齢の引き上げに合わせ、平成25年度から定年を段階的に65歳まで延長することが適当であるとし、定年延長に向けた制度見直し の骨格を示した上で、本年中を目途に立法措置を行うための意見の申出を行うとしている。このほか、公務員の労働基本権問題等に関する報告や、育児休業等に 関する意見の申出が行われた。
 人事院の勧告は、必ずしも、これに従うべきものではないとは言え、今後、各人事委員会が勧告作業を行 う上で参考となるものであることから、その内容については、十分に吟味する必要があると考えている。現在、各人事委員会では、秋の勧告に向けて、鋭意、作 業を進めているところだ。今後は、みなさんからの要請も十分考慮しながら、それぞれの人事委員会が、地域の実情を踏まえつつ、主体性をもって対処していく ことになるものと考えている。
 公務員の給与を取り巻く環境は、引き続き厳しい状況にあるが、人事委員会といたしましては、本年も、 中立かつ公正な第三者機関として、その使命を十分に果たしていく。全人連としても、各人事委員会の主体的なとりくみを支援するとともに、人事院、各人事委 員会との意見交換に十分努めていきたい。

以 上

【全人連あての要求書】
2010年8月11日

全国人事 委員会連合会委員長
  会 長  関谷 保夫 殿

公 務 労 組 連 絡 会
議 長   山口 隆
地方人事委員会の勧告に関する要請書

  貴職の地方公務員の賃金・労働条件の改善に向けた努力に敬意を表します。
 人事院は10日、官民較差がマイナス0.19%になったと して、40歳代以上を対象に月例給を引き下げるとともに、一時金を0.2月減額することなどを内容とした勧告をおこないました。
 こ れらは、年収で平均15万4千円の過去最大規模の減収となった昨年につづく2年連続の「マイナス勧告」であり、とくに一時金は、年間で4か月を割り込み、 昭和30年代の水準にまで一気に逆戻りさせる大幅な引き下げとなりました。
 重大なことは、55歳を超える職員に対して、給与に一定 率を乗じて引き下げる方法をとって賃下げ勧告をおこなったことです。そのことは、政府や人事院みずからが公務員給与の決定基準としてきた「職務給の原則」 に反するばかりか、年齢による新たな賃金差別を職場に持ち込むことなど、数々の問題を持っています。
 また、「50歳台後半の逆格 差」についても、この間の数次に及ぶ公務労組連絡会との交渉の中で、その根拠となる明確なデータも示さずに定率賃下げ勧告を強行するなど、最低限の説明責 任さえ放棄したものと言わざるをえません。
 このような理不尽な賃下げは、公務員の生活悪化につながるだけでなく、経験豊富な55歳 を超える職員の働きがい、生きがいを失わせることともなり、住民サービス低下の観点からも断じて認められるものではありません。
 私 たちは、地方公務員の給与・勤務条件が、人事行政や職員の人材確保等とも深く関わるなど、地方自治の有り様とも不可分に結びついていること、さらに地域で の給与水準において「標準性」を持っており、地方の公務・公共関連労働者の給与等の水準、年金・生活保護など社会保障の給付水準、最低賃金など「ナショナ ルミニマム」などに影響を及ぼし、住民の暮らしや地域経済に大きな影響を与えるものと考えます。
 これから各地の人事委員会において も、本年の勧告にむけた作業にとりかかるものと考えますが、各地の人事委員会勧告にあたっては、下記事項をふまえて、その実現に向けて努力されることを強 く要請するものです。


1、 地方公務員・関連労働者の暮らしを守り、「全体の奉仕者」として誇りと尊厳を持って職務に専念できるよう、55歳を超える職員の給与を引き下げることなど を内容とした人事院勧告に追随することなく、初任給をはじめ生活に見合った賃金・労働条件の改善・充実をはかること。

2、 一時金については人事院勧告の大幅減額に追随せず、働きがいを持てる職場をめざして現行水準を改善すること。

3、 地域経済の活性化などをめざして、今年度については、比較対象企業規模を「100人以上」にするなど積極的な改善を行うこと。

4、 超過勤務縮減へ向けた具体的措置を講じること。

5、人事委員会の勧告と関わりなく行われている「賃金カット」な どの労働条件の切り下げに対しては、即時中止を求めるなど毅然とした対応を行うこと。また、独自に「賃金カット」を行っている自治体では、実態賃金との比 較で公民較差に基づく賃金改善を行うこと。

6、非常勤職員等非正規職員の雇用の安定をはかるとともに、賃金及び 労働条件の改善を行うよう勧告すること。

7、地方公務員の給与水準問題について、「同一価値労働、同一賃金」の 立場に立ち、地方公務員給与の水準を守り、地域間格差拡大をおこなわないこと。

8、給料表については、職務によ る格差の拡大、中高年層の給与の抑制をやめ、生計費原則に立った構造とすること。査定昇給及び勤勉手当の格差拡大の導入は、人事評価制度の未確立の状況を 踏まえ、当該労働組合との交渉経過等を尊重し、慎重に対処すること。

9、教員の給与勧告にあたっては、義務教育 費国庫負担金の見直しなどの動向に影響されず、地方公務員法および教員人材確保法にもとづき、勤務実態に応じた適切な給与水準を確保すること。特に、義務 教育等教員特別手当と調整額のさらなる引き下げは勧告しないこと。

10、憲法とILO勧告に基づき公務員労働者 の労働基本権を保障するなど民主的公務員制度確立にむけ積極的に政府に働きかけること。

11、現在の職場実態を 改善し、健康で働きがいを持てる職場環境を実現し、定年まで働き続けられる条件整備をはかること。定年年齢の引き上げにむけては、給与制度の引き下げ改悪 をおこなわず、制度の検討にあたっては、労働組合との交渉・協議にもとづき、労使合意のもとですすめること。

以 上