No. 756
 2010年6月10日
人事院勧 告にむけて「夏季重点要求書」を提出

= 「定年延長」の検討にかかわって基本要求を提示 =

 公務労組連絡会は10日、政府・人事院に対して 「2010年夏季重点要求書」(別掲)を提出しました。
 要求書は、10春闘で提出した要求書を基本にしつつ、人事院勧告にむけて焦 点となる賃金・労働条件改善にかかわる要求を重点的に取りまとめたもので、景気回復にむけた公務員賃金の積極的な改善、初任給引き上げ、臨時・非常勤職員 の「日々雇用」廃止、超過勤務の縮減などを求めています。
 また、定年延長にかかわって「意見の申出」にむけた作業が人事院ですすめ られるもとで、「公務労働者の定年延長に関する要求書」を同時に提出しました。


景気回復の観点から、企業規模「100人以上」で給 与比較を

 政府・人事院への要求書提出には、公務労組連絡会か ら黒田事務局長を先頭に、蟹澤・松本の各事務局次長、門田幹事が参加しました。
 人事院では、黒田事務局長は、「景気回復のために は、民間準拠にとどまらない公務員賃金の積極的な改善が求められている。そのために、比較企業規模の『100人以上』への見直しをふくめて検討すべきだ。 また、非常勤職員の『日々雇用』廃止とあわせて、3年間の雇用期間の上限も示されたが、安定した公務サービスを提供するためには、期限を設けるべきではな い」などとのべ、要求の要点を示しました。
 参加者からは、「賃金の地方間格差がひろがっているが、生計費では地域による相違はな い。格差を縮小する方向での改善を求める。非常勤職員の雇用期間の上限設定は、自治体職場に直接影響する。雇用安定とサービスの質を維持するために、上限 を設けることに反対する」「定員削減で長時間過密労働を強いられる職員の努力に応え、モチベーションにつながる賃金改善を求める」などの発言があり、要求 をふまえて勧告にむけた誠意ある検討を求めました。
 対応した人事院職員福祉局の井上主任職員団体調査官は、「要求は各部局に伝え て、検討していきたい」とのべました。
 また、総務省への要求書提出にあたっても、「職場では3人に1人がパワハラを受けたという調 査結果がある。パワハラをした本人に自覚がないというのが深刻だ。そのためにも、指針の作成などを使用者責任でおこなえ」「協約締結権が回復しても、不当 な賃下げなどには対抗措置がない。争議権をふくめた労働基本権回復にむけた検討を求める」「超過勤務解消は重要課題だ。基本的には人の手立てが必要であ り、増員なくしては、問題の根本解決はありえない」などと、厳しい職場の状況を示して、要求実現を強く求めました。
 対応した総務省 人事・恩給局総務課の遠山課長補佐は、「要求はうけたまわった。お互いの話し合いのなかで、知恵も出し合いながら、いい方向が示されるように努力したい」 とのべました。
 人事院・総務省とは、今後、交渉を積み重ね、誠意ある最終回答を求めていきます。

定年延長にむけては、働き続けられる環境作りこそ重要

  この日の要求提出では、夏季重点要求とともに、政府・人事院に対して「公務労働者の定年延長に関する要求書」(別掲)を提出しました。
  要求書は、人事院の「意見の申出」にむけた作業が本格化するにあたって、公務労組連絡会としての基本的な要求を取りまとめたもので、「雇用と年金の接続」 とともに、とりわけ、働き続けられる職場環境の実現を求める内容となっています。
 要求書提出にあたって、参加者からは、「定年延長 にあたっては、現行の再任用制度とは違う制度の確立が必要だ。その点で、給与削減は認められない」「労働強化がすすむなかで、とても65歳まで働く自信が ないという率直な声があがっている。まず、職場の環境整備が大前提だ」などとのべ、充実した制度となるように基本要求もふまえた検討を求めました。
  人事院の井上主任職員団体調査官は、「今後、検討がすすむなかで、その内容をみなさんにも提示し、意見をうかがっていきたい」とのべました。
  黒田事務局長は、公務労組連絡会との交渉・協議のもとですすめること、地方公務員・教員の定年延長にかかわる制度は、地方自治体の自主性にゆだね、国の制 度を押しつけないことをあらためて申し入れました。

以 上


【別掲:夏季重点要求書(人事院のみ掲載)】

2010年6月10日

人 事院総裁 江利川 毅 殿

公 務労組連絡会
議長 山口 隆
2010年夏季重点要求書

  公務員賃金は、昨年の人事院勧告により史上最大規模の年収減となり、公務関連労働者はもとより、民間労働者の賃金改善にも否定的な影響を与えてきました。 とりわけ、所得減少による個人消費の停滞が、日本経済に「デフレ」をまねいており、賃上げで景気回復をはかるためにも、10春闘では「誰でも1万円以上」 の賃金底上げ要求を前面に、その実現を強く求めてきたところです。
 しかし、人事院から示された春闘期の回答は、「官民比較に基づく 適正な給与水準の確保」という従来の域を出ないきわめて不満な内容でした。
 一方で、非常勤職員の「日々雇用」の廃止、定年延長、病 気休暇制度の見直しなど、具体的な検討事項も示され、今夏勧告にむけた労使間の課題となっています。
 春闘要求に込められた組合員の 要求の切実さには何ら変わりはありませんが、公務労組連絡会として、人事院勧告にむけた重点要求を下記のとおりとりまとめました。
  公務員労働者の労働基本権制約の「代償措置」として、人事院が果たすべき役割を発揮するとともに、民主的な行財政・司法・教育の確立を求める国民の期待に 応えて、公務労組連絡会の要求を真摯に受け止め、誠意ある回答を行うよう求めます。


1、 賃金の改善等について
 (1) 公務員給与について、景気回復にむけて内需拡大をはかるためにも、比較企業規模を100人以上に戻 し、精確な官民給与水準の比較をおこなうこと。
 (2) 一時金について、現行比較方法の対象職種等を見直すとともに、現行水準を維 持・改善すること。一時金に占める勤勉手当の割合を縮小すること。役職傾斜支給、管理職加算制度を見直し、全体の上下格差を縮小すること。
(3)  官民較差の配分に当たっては、以下の点を踏まえるとともに、労働組合との十分な交渉・協議の上で行うこと。
@ 俸給表改定にあたっ ては、民間を明らかに下回っている初任給近辺の官民較差の解消及び前回引き下げ分の回復に努めること。
A 諸手当については、住居手 当(高額家賃の負担軽減)、通勤手当(地方の自動車通勤者の負担軽減)、単身赴任手当(生活・交通負担の軽減)、寒冷地手当(寒冷地生計費の増嵩)の改善 を重視すること。
 
2、新たな高齢期雇用制度の検討について
  (別添「要求書」の通り)
 
3、 非常勤職員の処遇改善について
(1) 非常勤職員の雇用の安定のため、常勤なみの勤務時間となる非常勤職員の「日々雇用」形態をただ ちに廃止すること。
(2) 非常勤職員の任用更新に上限は設けないこと。
(3) 非常勤職員の採用にあたって は、可能な限り長い任期を設定するとともに、更新の有無とその基準・理由をあらかじめ職員に明示する仕組みを確立すること。
(4)  非常勤職員の希望にもとづき、新たなステップアップやキャリア・アップ(職業能力育成)のための機会提供に努めること。
(5) 非常 勤職員の均等待遇確立に向けて新たな法整備を図ること。当面、2008年の「給与指針」に基づき経験等を勘案した経験加算や期末手当の支給、非常勤職員の 休暇等のあり方について均等待遇の観点から見直すとともに、常勤職員と同様の制度に改善すること。

4、労働時間 短縮、休暇制度改善等について
 (1) 健康で安全なディーセント・ワークの実現およびワークライフバランス確立の観点から、交替制 勤務者の勤務時間および交替制勤務のあり方等に関して検討すること。
 (2) 超過勤務時間の縮減をはじめ、総実労働時間短縮に向け た実効ある取り組みを引き続き強力に推進すること。そのため、現実の障害となっている定員と業務量の関係について、公務員の勤務条件改善の観点から必要な 意見を表明すること。
 (3) 長期勤続休暇(リフレッシュ休暇)を早期に新設すること。病気休暇制度については、実態に合わせ改善 すること。

5、民主的な公務員制度と労働基本権の確立について
 (1) 中立・公正な行政 を確立するために、公務員の身分保障を形骸化させる動きに対しては、専門・中立的な人事行政機関の責務として毅然として対処すること。
 (2)  公務員の市民的・政治的自由を保障する観点から、国公法を改正し、人事院規則14−7(政治的行為)を廃止すること。

6、 健康・安全の確保について
 (1) 心の病の発生を予防するための施策を充実すること。「職場復帰と再発防止のための受け入れ方針」 については、その実効性を上げるための改定を進めるとともに、その趣旨をすべての管理者・職員に周知徹底するための措置を講じること。
 (2)  パワーハラスメントの防止のための人事院規則及び指針を早期に作成すること。そのための検討をただちに開始すること。

以 上


【定年延長に関する要求書】

2010年6月10日

内 閣総理大臣 菅  直人  殿
総務大臣   原口 一博  殿
人事院総裁  江利川 毅  殿

公 務 労 組 連 絡 会
議  長   山 口 隆
公務労働者の定年延長に関する要求書

 04 年の「年金改革」によって年金支給開始年齢が65歳に引き上げられたことにともない、「雇用と年金の接続」にむけて、官民あげてさまざまな対策がとられて きました。
 公務においては、民間企業の定年年齢の引き上げなどが06年から義務付けられたこともふまえ、07年の人事院勧告におけ る報告で公務員の高齢期における雇用問題が指摘され、人事院の「公務員の高齢期の雇用問題に関する研究会」の「最終報告」では、13年度から段階的に定年 年齢を65歳に引き上げることが提言されました。
 一方、定年延長問題は、「天下り」根絶、定年まで勤務できる環境づくりとかかわっ て、政府の「公務員制度改革」の重要課題として位置づけられ、08年6月に成立した公務員制度改革基本法で、定年年齢の65歳までの段階的な引き上げを検 討することが定められました。
 このように、公務労働者の定年延長が国政上の課題となるもとで、公務・公共サービスの安定的な提供 や、健康で働き続けられる職場環境を確立する観点から、今後、十分な検討を深めていく必要があります。とりわけ、労働条件と密接にかかわる問題であり、労 働組合の納得と合意は不可欠と考えます。
 政府が、定年延長の11年中の法制化をめざすもと、現在、人事院では、本年中の「意見の申 出」にむけた検討作業が開始されているものと承知します。こうした情勢をふまえつつ、公務労働者が、長年培ってきた知識と経験を生かし、国民の命とくらし を守るため、安心して働き続けられる制度の構築にむけて、公務労組連絡会としての基本的な要求を下記の通り取りまとめました。
 これ らの要求をふまえて、充実した制度の確立にむけて検討を深めるよう求めるものです。


1、 定年年齢の引き上げについて
(1)雇用と年金の接続を図るため、定年年齢を65歳に引き上げること。
(2)少な くとも、年金の報酬比例部分の支給開始年齢にあわせ、2013年度から定年年齢を段階的に引き上げること。

2、 働き続けることができる勤務環境の整備について
(1)長時間過密労働を解消し、健康で働き続けることができるようにすること。
(2) 加齢により就労が困難な職種を考慮すること。
(3)退職給付は現行水準を維持すること。

3、 給与水準について
(1)定年年齢の引き上げを口実に、現役世代の給与水準を引き下げないこと。
(2)職務に変化 がないにも関わらず、一定年齢に到達したことをもって、賃金を引き下げないこと。

4、その他
(1) 定年延長等が重要な労働条件の変更となることから、制度検討にあたっては、労働組合との交渉・協議にもとづき、納得と合意のもとですすめること。
(2) 地方公務員・教員にかかわる制度確立は、各地方自治体の自主性にゆだね、国の制度の押しつけなどはおこなわないこと。

以 上