No. 754
2010年5月31日
混乱国会 のなか、公務員制度改革法案の審議すすむ

= 民主・自民の両党が公務員総人件費削減を競い合う =

  普天間基地問題をめぐる社民党の連立政権離脱、わずか6時間の審議による郵政改革法案の強行採決など、大荒れのなかで終盤国会をむかえているもと、公務員 制度改革関連法案は、参議院内閣委員会での審議がつづいています。
 この間、25日、27日に各党による質疑がおこなわれ、31日に は公聴会が開かれています。公聴会開催は、委員会採決にむけた条件ともなるもので、法案の取り扱いは予断を許さない状況となっています。

「転任」の場合の何らかのルール化は真剣に検討したい

 27日の参議院内閣委員会 では、山本香苗(公明)、平野達男(民主)、礒崎陽輔・森まさこ(自由)、糸数慶子(無所属)の各議員が質問に立ちました。
 幹部職 員人事の「弾力化」にかかわって、民主党の平野議員は、実質的に降任となる事務次官から部長級への「転任」にあたって、人事院規則を定めるなど、明確な判 断基準をつくるための「ルール化」を求めました。これに対して、仙谷公務員制度改革担当大臣は、「ルール化できるかどうか、真剣に考えてみたい。その際、 総理大臣の指示にするのか、閣僚間の申し合わせ事項にするのか、何らかの格好で規範化することを考えてみる」と答弁しましたが、人事院など第三者機関の介 在については言及しませんでした。
 これに関連して、糸数議員は、人事の「弾力化」にむけて、事務次官から部長級までの標準職務遂行 能力をひとまとめにする方法が考えられていることに対して、「幹部職の標準職務遂行能力の統一により、能力のともなわない人間が事務次官になる可能性もあ り、疑問符が付く」と問題点を指摘したことに対して、仙谷大臣は、「適格性審査を通った幹部職員であれば、すべて次の日から次官になっても立派に職務を果 たすはずだ。指摘されたような懸念はほとんどない」と強弁しました。
 また、糸数議員が、「次官から局長、部長への異動は、恣意的に 職を奪われないように、本人の意に反する降任等を厳しく限定している国公法の趣旨に反する。給与の減額をふくめて、格下げのような人事に幹部職員は納得で きるのか」と質しました。大島内閣府副大臣は、「民間有識者等の意見も聞いて適性を判断していく。恣意的な人事は許されないと考えている」とのべ、給与の 減額については、「転任後の官職に応じて決められる号俸で給与が決定される結果だ」としつつ、「はなはだしく不利益な処分を受けた職員は、人事院に対して 不服申し立てをすることができる」などと、一般論を繰り返しました。

65歳に定年を延長すれば人件費は2割増える

  質疑では、今後、公務員制度改革の焦点の一つとなる「定年延長」についてもやり取りがありました。平野議員は、「人件費の抑制が求められるなかで、定年延 長をどうやって実現していくのか。年金の支給開始年齢が65歳になるもとで、定年制をどうしていくのか」と政府の見解を求めました。階(しな)総務大臣政 務官は、「民間では定年を引き上げているところは12.8%にとどまっており、それ以外は再雇用で対応している。公務でも、定年延長の議論はあるが、一方 では、再任用もおこなわれている。いろいろな議論があり、引き続き検討して良い方向性を見出したい」と答弁しました。
 また、自民党 の磯崎議員は、仮に65歳に引き上げれば人件費は20%増えるとの試算をあげて、「民主党がかかげる20%人件費削減の方針からすれば、差し引き40%を どうにかする必要がある。何か考えはあるのか」と質すと、仙谷大臣は、「中堅どころの働きぶりを補完するような、高齢者がその経験をいかしてサポートする ような仕組みを作らなければいけないと思う」などと場当たり的な答弁しか示されませんでした。
 また、磯崎議員は、「国の財政状況が 悪いなかで、税金の問題は考える必要があるが、その前に公務員の改革をやれというのが国民の意思だ。公務員の数を減らすか、給与を減らすか、どちらかしか ない」などとのべ、消費税をふくむ増税の「露払い」として公務員総人件費削減をすすめるよう主張しました。
 さらに、磯崎議員は、 「こうした財政状況のなかで、給与水準を引き下げにむけて、人事院と政府が連携したら可能ではないのか」と求めたことに対して、江利川人事院総裁が、「民 間賃金に準拠して給与勧告をおこなうのが、人事院に与えられた任務だ」とのべると、「その限りでは、民間の水準までは引き下げられるが、それ以上の行政改 革としての給与水準の引き下げはできない。政府の方針として、公務員の給与を引き下げられる制度にしていくべきだ」などとのべ、公務員の労働基本権を無視 した乱暴な論理を展開しました。

以 上