No. 745
 2010年4月9日
公務員賃金の改善でこそ地域経済の活性化を

= 地方公務員の給与・労働条件改善を求めて全人連に要請 =

 公務労組連絡会は4月9日、自治労連・全教と共同して、全国人事委員会連合会(全人連)に、人事委員会勧告にむけた「要請書」を提出、地方公務員の賃金・労働条件改善にむけた各地の人事委員会の努力を求めました。
 申し入れでは、政府・人事院の春闘回答において、非常勤職員の「日々雇用の廃止」が表明されるもとで、自治体で働く臨時・非常勤職員の待遇改善などを強く求めました。

公正・中立な第三者機関として、職員の生活を守れ

関谷会長への申し入れ 全人連への申し入れには、公務労組連絡会からは、山口議長(全教委員長)、野村副議長(自治労連委員長)、黒田事務局長、自治労連から猿橋書記長、中川書記次長、松本中央執行委員、全教から蟹沢・木原の各中央執行委員が出席しました。
 全人連は、関谷会長(東京都人事委員会委員長)をはじめ、中澤(北海道)、石附(宮城県)、井上(横浜市)、江橋(茨城県)、那須(愛知県)、帯野(大阪府)、高升(広島県)、池田(愛媛県)、常盤(福岡県)の各人事委員会代表ほかが出席しました。
  はじめに、山口議長は、別添の「要請書」を関谷会長に手交し、「春闘における民間大手組合の妥結状況では、軒並みベースアップが見送られている。デフレの なかで、消費拡大による景気回復が必要だ」として、民間賃金や地域経済に影響をあたえる公務員賃金の改善を求めました。また、人事院が、非常勤職員の日々 雇用の廃止を示すなかで、臨時・非常勤職員の雇用・勤務形態の改善を要請しました。
 自治労連の猿橋書記長は、大阪府人事委員会で、橋下知事の方 針にもとづき、民間実態調査の比較対象企業規模を引き下げたり、「賃金センサス」を使って公務員賃金の引き下げをねらう動きがあることを示し、不当な賃下 げをおこなわず、中立の第三者機関として、職員の生活改善にむけた役割を果たすよう強く求めました。
 全教の蟹澤中央執行委員は、教員の賃金改善とともに、政府・人事院で定年年齢の延長が検討されるもとで、平均退職年齢が50歳すぎという教職員の実態もふまえ、地方自治体では、労使間の十分な協議のもとで検討するよう求めました。

要請内容は、民間実態調査や自治体の実情をふまえて検討する

 これに対して、関谷会長は以下の通り回答しました。
(全人連・関谷会長回答)
 ただいまの皆様からの要請につきましては、確かに承った。早速、役員府県市を通じて、全国の人事委員会に伝える。
  去る3月15日に発表された月例経済報告において、政府は、景気の基調判断を「着実に持ち直してきているが、なお自立性は弱く、失業率が高水準にあるなど 厳しい状況にある」とし、先行きについて、「景気の持ち直し傾向が続くことが期待される」とする一方、「海外景気の下振れ懸念、デフレの影響など、景気を 下押しするリスクが存在することに留意する必要がある」として、引き続き警戒感を示している。
 民間賃金の状況については、3月31日に発表された「毎月勤労統計調査」において、2009年冬のボーナスが前年冬の実績に比べ過去最大の減少率となったという厳しい結果が示されている。
 また、本年の春季労使交渉では、3月中旬の大手企業の一斉回答において、定期昇給については維持とする一方、賃金改善についてはゼロ回答とする企業が大半を占める状況が見受けられ、今後の中小企業の回答を含めて、結果を注視していく必要があると考えている。
 今後、各人事委員会においては、5月初旬から、民間給与実態調査を人事院と共同で実施していくことを予定しており、民間の賃金水準の適切な把握に引き続き努めていく。
 本日、要請をいただいた個々の内容は、各人事委員会において、その調査結果や各自治体の実情等を踏まえながら、本年の勧告に向けて検討をしていくことになる。
 公務員の給与を取り巻く環境が非常に厳しい中、私ども人事委員会は、本年も中立かつ公正な第三者機関として、公務員の給与等の勤務条件について社会情勢に適応した水準となるよう、その使命を果たしていく。
 全人連としても、人事院や各人事委員会との意見交換に、十分努めていきたい。(以上)


【全人連への要請書】
全国人事委員会連合会委員長
  会 長  関谷 保夫 殿

公 務 労 組 連 絡 会
議 長   山口 隆

地方公務員の給与勧告に関わる要請書

 日頃から地方公務員の勤務条件の向上にご努力いただいていることに敬意を表します。
  政府が月例経済報告で景気回復の見通しを示しているものの、失業率は依然として高水準にあり、個人消費も伸びていません。内需拡大による景気回復が求めら れているなかにあっても、労働者の賃金は下がり続け、今春闘の民間大手企業の賃金回答も、軒並みベースアップが見送られています。大企業がため込んだ膨大 な内部留保が労働者に還元されないことに対して、鳩山首相も「内部留保への課税」に言及する状況となっています。
 こうしたもと、公務労組連絡会 は、今春闘では、「賃上げでこそ景気回復を」と呼びかけ、その実現を追求してきたところです。とりわけ、公務員賃金の動向は、正規・非正規の公務関連労働 者の賃金に直接連動するだけでなく、地場賃金や地域経済にも影響を与えることとなります。住民の暮らしを守り、不況にあえぐ地域の中小企業や商工業者の営 業を改善するうえでも、今年の給与勧告では公務員賃金の積極的な改善が重要になっています。
 同時に、公務・公共サービスを日々支える職員が、働きがい・生きがいをもって仕事をしていくため、処遇の改善はもとより、労働時間の短縮、休暇制度改善、さらには、メンタルヘルスや近年重要性を増している職場でのセクハラ・パワハラへの対応強化も求められます。
 このような問題意識に立ち、下記の要求を取りまとめました。厳しい地方財政のもとで、住民福祉の充実に日々努力している自治体・自治体関連労働者の奮闘に応えるうえでも、貴職が積極的な立場に立ち、要求事項の実現にむけて尽力されることを要請するものです。


1、 民間給与実態調査にあたっては、単に民間の給与水準と機械的に比較するのではなく、地方自治や地方公共団体のあり方、公務・公共サービスのあり方と密接不 可分であることや、民間労働者の賃金や地域経済への影響を十分留意して作業をおこなうこと。とりわけ、比較対象企業規模を100人以上にすること。
2、 教員給与が連続して引き下げられてきたもとで、「貧困と格差」がもたらす子どもたちの困難に対応している教職員のモチベーションを支えるためにも、勤務実 態に応じた適切な給与水準を確保すること。特に、義務教育等教員特別手当と調整額のさらなる引き下げは勧告しないこと。
3、住民に信頼される中立・公正な地方行政を確保する観点から、競争原理、「成果・業績」にもとづく給与・人事管理制度実施などの勧告をおこなわないこと。
4、公務員総人件費削減のもとで増加している臨時・非常勤職員について、人事院の「指針」等をふまえつつ、給与や休暇制度など労働条件を改善すること。とくに、人事院が表明した「日々雇用の廃止」をふまえて、雇用・勤務形態の改善をはかること。
5、介護休暇制度について、日数の増加や対象者の拡大、休業手当金の上限規制の撤廃、十分な所得保障など改善をおこなうこと。また、育児休業制度についても、無給規定の撤廃をはじめ、十分な所得補償をおこなうこと。
  当面、育児休業手当金については、適用要件をなくし取得者全員に1歳6か月まで支給すること。
6、定年年齢の延長をはじめ高齢雇用の基本方向について、「雇用と年金の接続」を大原則とし、制度設計にあたっては労働組合との十分な協議をおこなうこと。

以 上