No. 722
2009年8月11日
「マイナ ス勧告」は断じて実施するな

= 人事院勧告の取り扱いをめぐっ て、使用者・政府と交渉 =

の平均0.2%(管理職層は0.3%)の引き下げ、 0.35月の一時金引き下げ、自宅に係る住居手当の廃止などを内容とした勧告および報告をおこないました。
 完全失業率が5%を突破 し、景気が悪化するなかで、賃上げで不況打開を求めてきた公務労組連絡会の要求に背をむけ、年収にして15万4千円もの減額となる過去最大規模の「マイナ ス勧告」を人事院が強行したことは、断じて認められません。
 勧告の取り扱いは政府にゆだねられ、本日午前に第1回の給与関係閣僚会 議が開かれています。
 こうしたもと、公務労組連絡会は11日、使用者・政府(総務大臣)に要求書を提出し、交渉を開始するととも に、給与関係閣僚の一員である厚生労働大臣に申し入れました。12日には、財務大臣への申し入れを予定しています。

& nbsp;不利益変更に際して時間をかけて労働組合と十分に話し合え

 総務省との交渉には、公務労組連絡会から 山口議長を先頭に、黒田事務局長、蟹澤・鈴木の各事務局次長、木原・渡邊・門田の各幹事が出席しました。総務省は、人事・恩給局総務課の砂山総括課長補 佐、遠山課長補佐ほかが対応しました。
  はじめに山口議長は、別添の「要求書」を提出し、「日頃の職員の奮闘に何ら応えることなく、賃下げ勧告を強行したことには、職場から怒りの声があがってい る。公務員賃金の引き下げは、不況をいっそう深刻にする。政府全体として景気回復がめざされているなか、勧告内容に追随するのではなく、賃金改善による消 費拡大にむけて検討をすすめるよう求める」とのべ、また、勧告時の報告に盛り込まれた非常勤職員の休暇制度や雇用の改善にむけて、使用者として積極的な対 策実施を求めました。
 黒田事務局長が「要求書」のポイントを示し、「マイナス勧告が強行されたもとで、『勧告尊重』とする通り一遍 の対応は認め られない。とりわけ、賃下げという労働条件の不利益変更がともなう内容であり、勧告の取り扱いにあたっては、時間をかけて労働組合と十分に話し合うように 求める」としつつ、「非常勤職員の休暇制度の改善、任用、勤務条件の見直しなども示された。使用者・政府として、臨時・非常勤職員の早急な労働条件改善に むけて努力すべき」とのべました。
 また、参加者からは、「勧告が明らかになったとたん、次々と内容の問い合わせが来るなど、職場の 怒りは高まっ ている。使用者として、職場で奮闘している職員を励ます方向での検討が必要だ」「公務員賃金は、さまざまな指標ともなっており、マイナス勧告の影響は大き い。景気回復という政策的な目標達成のため、過去のように勧告を凍結する政治的な判断があってもおかしくない」「マタニティーブルーなど育児で精神的に不 安定になる女性もいて、夫婦そろって子育てできる育休制度の改善は評価できる。今後、さらに所得保障にむけた検討を求める」などの意見が出され、マイナス 勧告の実施に反対しつつ、休暇制度などのすみやかな改善を求めました。
 砂山総括課長補佐は、「みなさんの要求はうけたまわった。本 日、人事院勧 告を受け取り、第1回の給与関係閣僚会議を開いてその取り扱い検討に着手したところだ。人事院勧告制度は、労働基本権制約の代償措置の根幹をなすものであ り、政府としては、同制度を尊重するとの基本姿勢を堅持してきたところだ。国の財政事情をはじめ国家公務員給与を取り巻く環境にはきわめて厳しいものがあ るが、総務省としては、従来からの基本姿勢のもと、国民の理解を得られるような結論を得るべく国政全般との関連を考慮し、誠意をもって検討をすすめたい」 と回答しました。
 山口議長は、「繰り返しになるが、労働組合との十分な話し合いのもとで勧告の取り扱いについて検討をすすめるよう 求める」とのべ、交渉を終えました。

雇用破壊をくい止めるためにも消費拡大で不況打開を

  総務省交渉に先立っておこなわれた厚生労働省への申し入れでは、山口議長を先頭とした公務労組連絡会の参加者に対して、厚生労働省側は、谷中労使関係担当 参事官ほかが対応しました。
  山口議長は、「完全失業率は5%をこえ、有効求人倍率も0.4倍台に落ち込んでいる。厚生労働省としても雇用促進が重要なテーマとなり、政府全体で景気回 復がめざされているなか、労働者の賃金改善による消費拡大という観点からの検討こそ必要だ」と指摘し、要求書に示された各項目の実現を申し入れました。
  谷中参事官は、「要求はうけたまわった。勧告は、人事院が経済情勢や民間賃金もふまえて検討された結果だと考える。労働基本権制約の代償措置としての性格 からすれば、それを尊重して検討することととなる」とのべました。
  山口議長は、最後に、「100年に1度と言われる経済危機であり、景気対策が求められる。公務員賃金も、不況打開の観点からの検討が必要だ。また、労働条 件の不利益変更であることをふまえ、労働組合との十分に時間をかけた話し合いを求める」とのべ、給与関係閣僚の一員としての誠意ある対応を求めました。

                                                                          以 上

【総 務省への要求書】

                                                            2009年8月11日

内閣総理大臣  麻生 太郎 殿
総 務 大 臣   佐藤  勉  殿

                                                            公 務 労 組 連 絡 会
                                                            議  長   山 口 隆

公務員賃金等に関する要求書

  人事院は本日、国会と内閣に対して、「0.22%、863円」とする官民逆較差にもとづき、若年層など一部を除いて月例給の平均0.2%(管理職層は 0.3%)の引き下げをはじめ、一時金の0.35月分の引き下げ、自宅に係る住居手当の廃止などを内容とした勧告および報告をおこないました。
  月例給引き下げは05年勧告以来ですが、一時金の大幅削減とあわせた年収減は15万4千円にもなり、不況のもとで悪化する公務労働者の生活を直撃する最悪 の勧告となりました。
  とりわけ、私たちが、賃上げでこそ景気回復がはかられることを春闘期から繰り返し主張し、民間賃金や地域経済にも影響する公務員賃金の改善を強く求めてき たことからすれば、人事院が、民間賃金の厳しさだけに目をむけ、「マイナス勧告」を強行したことは断じて認められません。
 いま、完 全失業率が 5%を超えて上昇を続け、有効求人倍率も0.43倍にまで低下するなど、日本経済は悪化の一途をたどっています。実効ある景気対策は、総選挙後の新しい政 府や国会にとっても、最優先で取り組むべき課題と言えますが、公務員賃金が削減されれば、消費をさらに冷え込ませ、景気への悪影響は避けられません。
  本日の勧告をうけて、政府としての取り扱い方針が議論されることとなりますが、世界と日本をめぐるかつてない経済情勢をふまえれば、「勧告尊重」の立場に とどまらず、国民の雇用と暮らしの改善という観点からの検討が求められています。
 以上をふまえて、公務労組連絡会として下記要求を とりまとめました。貴職の誠意ある対応を強く求めるものです。


1、 月例給、一時金をともに引き下げる09年人事院勧告は実施せず、公務員賃金の持つ社会的影響力をふまえて賃金の改善をはかること。

2、 使用者としての責任をふまえ、勧告の取り扱いをはじめ公務員労働者の賃金・労働条件は、労使対等の交渉にもとづき決定すること。

3、 非常勤職員の賃金・労働条件の改善、均等待遇の実現など処遇の改善をはかること。

4、地方自治体、独立行政法人 等の賃金決定に不当な介入・干渉をおこなわないこと。

5、労働基本権回復などILO勧告に沿った民主的公務員制 度を確立すること。

以 上