No.719
2009年7月13日
民間給与・一時金の厳しさをことさら強調

= 夏の勧告にむけ、賃金・労働条件の改善を求めて人事院と交渉 =

 公務労組連絡会は13日、8日の総務省交渉に続き、6月に提出した「夏季重点要求」をめぐって、人事院 と交渉しました。
 交渉では、公務員賃金の社会的影響力をふまえて、「民間準拠」にとどまらない賃金改善を求めましたが、今年の春闘での賃上げ状況や、夏のボーナスなど状 況の厳しさなど「状況説明」に終始する人事院に対して、労働基本権制約の「代償措置」としての役割を果たせと、交渉参加者からは怒りの声もあがりました。


月例給引き下げの02・03年以上に厳しい勧告も示唆

 人事院との交渉には、公務労組連絡会から、山口議長をはじめ、若井副議長、黒田事務局長、蟹澤・鈴木の各事務局次長、木原・渡辺・門田の各幹事が出席、 人事院側は、給与局給与第1課の近藤課長補佐、職員福祉局職員福祉課の柳田課長補佐が対応しました。
 はじめに山口議長は、「景気回復のためにも消費拡大へ賃金改善は重要だ。民間賃金実態調査を経て、夏の勧告へ作業がすすむなか、公務員賃金が民間賃金や 地域経済にも影響をあたえることをふまえ、賃金・労働条件の積極的な改善を求める」とのべ、現在の検討状況を質しました。
 人事院側は、主に次のような回答を示しました。
● 世界的な経済危機による企業業績の悪化で、今年の民間の賃上げは、軒並みベアゼロになったばかりか、一部で賃下げなど厳しい状況だ。人事院としては、 民間給与実態調査にもとづき、4月時点での民間・公務の賃金をラスパイレス比較し、較差にもとづいて勧告することとなる。
● 給与実態調査は終了し、6月後半から集計などを始めており、勧告作業はほぼ例年のペースですすんでいる。調査を見ると、業績悪化による一時休業などで の月例給の減額措置も見られ、そうした民間企業の対応にも留意していく。
● 各種統計をみると、一時金は、去年の年末が微減、今年の夏が二桁を上回るマイナスとなるなど、例年以上の厳しさが伝えられている。0.2月分の「凍 結」勧告は、あくまで暫定的なものであり、民間実態を調査した結果を勧告に反映させる。
● このように、月例給、一時金ともに下がっており、月例給を引き下げた02年・03年以上に厳しい勧告となることもありうる。
● 超過勤務の縮減については、在庁時間の短縮にむけて、実態把握などの具体的な対応を検討していく。交替制勤務の連続勤務時間の短縮は、実態に即して対 応していきたい。
● パワーハラスメント対策は、人事院としても認識しており、防止にむけて職場への情報提供などをはかっていきたい。

 比較対象企業の事業所規模を「100人以上」に引き上げよ

 回答をうけて、黒田事務局長は、主に以下の点を指摘しました。
○ 民間の厳しさだけをことさら強調し、月例給を引き下げた時よりも厳しいなどという回答は認められない。厳しさはあったとしても、公務労働者の労働条件 改善に努力するのが第三者機関としての人事院の役割だ。比較対象事業所規模を「100人以上」に引き上げるなどの検討を求める。
○ とくに、初任給は、昨年よりさらに官・民の格差がひろがっている。優秀な人材確保の観点からも、初任給引き上げは急務の課題だ。
○ ルール無視で一時金を削減したことは認められない。民間の一時金の厳しさが指摘されたが、一時金が生活費の一部となっていることもふまえて、一時金水 準を維持せよ。
○ 持ち家にかかわる住居手当の廃止を含めた検討が表明されているが、国よりも地方公務員の方が影響は大きい。一時金が「凍結」されるなど、賃上げをめぐ る情勢が厳しいもとで、あえて住居手当に手を付けるというやり方が適切なのか、これまで以上に慎重な検討が必要だ。
○ 臨時・非常勤職員は、本来常勤職員が担当する業務までこなしている。非常勤職員の処遇改善や均等待遇の実現にむけて、「指針」にとどまらず、勧告の中 に盛り込むなどの対応を求める。
 また、交渉参加者からは、「住居手当は、歴史的・制度的に国と地方は違う。自治体では、中高年は公務員宿舎がなく、自力で持ち家を探す必要がある。手当 の廃止は慎重な検討を求める」「不況の中で、生活保護などで公務が果たす役割が大きくなっており、臨時・非常勤職員の仕事も増えている。法律の狭間におか れている非常勤職員の改善は、人事院として検討すべき課題だ」「パワーハラスメントは、各県ではきめ細かな指針が示されている。国をあげての対策が必要で あり、人事院として早急に指針を作成すべき」「育児・介護休暇は、民間法改正をふまえて、公務の改善が必要だ。要介護者だけに限定しないような制度を求め る」などと人事院を追及しました。

国 の住居手当の廃止は、地方にもストレートに影響する

 人事院側は、「公務員賃金改善の要請はあったが、情勢適応の原則に基づき、官民較差にもとづいて勧告するのが人事院の立場だ」などと のべ、また、「初任給は、民間との均衡、公務内部のバランス、人材確保などを総合的に勘案して決める。持ち家に係る住居手当は、すでに廃止を検討すると表 明してきた。地方への影響も指摘されが、人事院としては、国家公務員の手当を検討している」などと回答しました。
 これに対して、若井副議長は、「国の手当が廃止されれば、総務省の通知によって地方自治体にもストレートに影響する。国だけと言うことにならない。ま た、民間の状況だけを強調するが、労働基本権制約の代償措置という、人事院勧告の原点に沿って検討せよ」と強くせまりました。
 最後に、山口議長は、「第三者機関としての人事院の存在意義が問われている。総人件費削減という政府方針にしたがい、人事院は賃下げ機関になるべきでは ない。公務・公共サービス向上のために日夜努力している職員の期待に応える給与・労働条件の改善が必要だ」とのべ、引き続く誠意ある検討を求めて交渉を閉 じました。

以 上