No.701
2009年4月6日
人事院が一時金「特別調査」を開始

= ルール無視、一時金カットを求める与党の議員立法の動きに追随 =

 人事院は6日、公務労組連絡会に対して、本年夏の一時金に限定して民間企業2,700社を対象とした「特別調査」を実施することを明らかにしました。
  人事院は、今年の春闘における民間企業の夏の一時金の妥結額が、前年に比べ10%以上マイナスになるなど、かつてない下げ幅のなかで臨時に実施するものとしています。
  しかし、一方では、夏の一時金をカットする法案が与党の議員立法により国会提出がねらわれており、人事院の「特別調査」は、こうした与党の動きにも追随するものです。
  公務労組連絡会は、調査実施の中止とともに、引き下げ勧告などは断じておこなわないよう求めました。

 

2,700社を対象、昨年夏との増減額を緊急調査

 人事院の説明には、公務労組連絡会から、黒田事務局長、蟹澤事務局次長、柴田・篠原の各幹事が出席、人事院は、職員福祉局の上山参事官が対応しました。
  はじめに、上山参事官は、特別調査の概要について説明したうえ、以下のように補足しました。
● 昨年末からの未曾有の経済変動に注視してきた。また、与党内で公務員の一時金を引き下げる動きにも注視してきた。民間の夏のボーナスは、昨年の一時金に比べて2割から3割のマイナスとなっている。連合の調査でも、夏だけに限ると13%以上マイナスだ。
● これまで最大でも下げ幅は5%程度だったが、これだけ下がると、情勢適応の原則を考えれば、人事院として何もしないわけにはいかない。そこで、緊急措置として、2,700社を対象として、夏のボーナスを調査することとした。
● 夏の人事院勧告にむけた民間給与実態調査は、例年どおり5月から開始し、そこで精緻な調査をおこなうが、今回の特別調査は、昨年の一時金との増減を見るためのものだ。調査は、人事院から各社に調査票を郵送して実施する。通常の民間実態調査は、地方人事委員会との共同調査だが、今回は、人事院単独の調査となる。
  これに対して、「この時期に特別調査を実施するのは、与党の議員立法の動きに対応したものではないのか。与党などからの要請があったのではないのか」と質すと、上山参事官は、「かつて、寒冷地手当が議員立法で新設されたことがあったり、74年の狂乱物価の際には、国会決議を受けて人事院が勧告を出したことがあるが、今回の調査は、あくまでも国公法28条の情勢適応の原則にもとづいて人事院の責務として実施するものだ。政府や与党からの要請などはない」と否定しました。
  また、調査結果が出た後の取り扱いについては、「結果を見てみないとどうこう言えない。その時点で人事院として判断する」として、引き下げ勧告などを前提にした調査ではないことを強調しました。
  最後に、黒田事務局長は、「夏の一時金がダウンしていることは承知している。しかし、それは、5月から通常の調査で官民比較して8月に勧告を出せば事足りるものだ。あえて4月に調査することは、民間の中小組合の交渉にも影響を与える。特別調査に反対する」とのべ、調査を中止するよう求めました。

中小組合の賃金交渉に悪影響、景気回復の道筋にも逆行

 以上のように、人事院の特別調査は、労働基本権制約の「代償措置」としての人事院勧告制度を踏みにじる、与党の議員立法による一時金引き下げ法案提出の動きを背景に、夏の一時金だけの調査を前倒しで実施するという異例の措置をとるなど、これまでのルールを無視するものです。
  同時に、厳しい状況のなかで、現在もねばり強くたたかいを継続している中小組合の賃金交渉にも冷水をかけることとなります。そのことは、麻生内閣が「定額給付金」を配ってまでもめざす消費拡大による景気回復の方向とも逆行することにもなります。不況打開にむけては、個人消費の拡大が求められており、労働者の賃上げは不可欠です。
  こうしたことから、公務労組連絡会では、民間組合との共同を強めながら、賃下げ攻撃に反対し、人事院・政府に対する「職場決議」や「要求打電」の集中、人事院地方事務局への交渉・行動の配置などを緊急にとりくみます。
  また、国民的な規模で配置されている「4・22中央総行動」では、人事院前の行動を配置するとともに、全労連がの「第2次最賃デー」の5月15日にも、人事院や政府に対する行動を具体化していきます。
  ルール無視の攻撃を許さないため、職場・地域からの積極的なたたかいを呼びかけます。

以 上