No.695
2009年2月10日
経済危機のなか第一線で奮闘する職員の処遇改善を

= 地方公務員の給与改善を求めて全人連に要請 =

 公務労組連絡会は10日、自治労連・全教と共同して、全国人事委員会連合会(全人連)に対して、地方公務員給与の改善などを求めて申し入れをおこないました。
  申し入れでは、未曾有の経済危機のなかで日夜、自治体の現場で奮闘している地方公務員・教員の処遇・労働条件の改善、とりわけ、臨時・非常勤職員の賃金や雇用、諸権利の改善を求めました。

 

勧告無視の賃金カットには毅然とした対応を

 全人連への申し入れには、公務労組連絡会からは、米浦議長を先頭に、若井副議長、黒田事務局長、蟹沢事務局次長、渡辺幹事、松井書記、また、全教からは東森書記長が出席しました。
  全人連は、内田会長(東京都人事委員会委員長)をはじめ、中澤(北海道)、石附(宮城県)、井上(横浜市)、澤田(静岡県)佐宗(愛知県)、帯野(大阪府)、佐古(広島県)、富塚(徳島県)、永次(福岡県)の各人事委員会代表ほかが出席しました。

  はじめに、米浦議長は、内田会長に「要請書」(別掲)を手渡し、「地方財政の悪化を理由として、自治体による独自の賃金カットが各地で繰り返されている。そもそも、労働基本権制約の代償措置としての人事委員会勧告がないがしろにされることはあってはならないことであり、全人連としても毅然とした対応を求める。最低賃金ギリギリで働かされ、身分も不安定な臨時・非常勤職員への早急な対策が必要であり、各地の地方人事委員会でも、重点的な課題にすえて対応してもらいたい」と要請し、また、公務員制度改革にかかわって、「人事院機能の内閣人事・行政管理局への移管は、憲法の原則に違反する。労働組合としても強い関心を持っている」と態度表明しました。

  若井副議長(自治労連委員長代行)は、「小泉改革で地方財政5兆円が国に吸い上げられた。そのなかで、勧告無視の賃金カットが繰り返されている。民間では、派遣切りや期間工切りがひろがっているが、公務職場での雇い止めなどがおこらないよう自治体は模範を示すべき」と求め、また、東森書記長は、「不況が教育に否定的な影響を与えている。困難ななかで奮闘する教職員を励ます施策を求める。教員の給与水準の維持、臨時教職員の権利拡充をふくめた改善は急務の課題だ」と要請しました。

公務員制度改革の動向には全人連としても注視していく

 これに対して、内田会長は、以下のように回答しました。
(内田全人連会長回答)
  ただいまのみなさんからの要請は確かに承った。早速、全国の人事委員会に伝える。
  人事委員会の重要な使命は、公務員の給与等の勤務条件について、社会情勢に適応した適正な水準を確保することであると認識している。現在、人事院及び人事委員会では、民間給与実態調査の実施に向け、民間給与実態を的確に把握できるよう、その準備を進めているところだ。
  最近の経済情勢や春季労使交渉を巡る状況認識について、一言、申し上げたい。
  まず、去る1月20日に発表された月例経済報告で、政府は、景気の基調判断を「急速に悪化している。景気の先行きについても、当面、悪化が続くとみられ、急速な減産の動きなどが雇用の大幅な調整につながることが懸念される」などと、これまで以上に厳しい見方を示している。
  また、本年の労使交渉では、労使が共同で雇用安定に向けた宣言を発表するという異例の幕開けとなっている。日本経済を牽引してきた輸出産業は、海外経済の減速と円高の影響を受け、需要の急減から大幅な減産を余儀なくされている。
  今後、各人事委員会においては、こうした社会経済の動向などを踏まえながら、本日の要請内容を含め、本年の勧告に向けた検討を進めていくことになる。公務員の給与を取り巻く環境は、さらに厳しさを増しているが、私ども人事委員会は、本年も中立かつ公正な第三者機関として、その使命を果たしていく。
  また、全人連としても、人事院や各人事委員会との意見交換に、十分努めていきたい。
  なお、政府は、今月3日に、国家公務員制度改革推進本部において、公務員制度改革の「工程表」を決定した。全人連としても、こうした国の改革の動きが地方公務員の労働基本権や人事委員会勧告制度に少なからぬ影響を与えることから、引き続き、その動向を注視してまいりたい。

以 上

【別添:全人連への要請書】


全国人事委員会連合会
  会長 内田 公三 様

公務労組連絡会
議長 米浦 正

地方公務員の給与等の改善にかかわる要請書

 日頃から地方公務員の勤務条件の向上にご努力いただいていることに敬意を表します。
  ご承知のように、アメリカ発の金融危機を契機に、日本経済は昨秋から急激に落ち込み、製造業を中心とした大規模なリストラ計画の進行とともに、中小企業の倒産件数も増大しています。
  こうした経済情勢を背景に、財界・大企業が、雇用確保を口実にしながら労働者の賃金抑制をはかるなかで、景気後退とあいまって、生活改善にむけた要求はよりいっそう切実なものとなっています。
  公務員労働者にとっては、昨年の人事院勧告で給与・一時金ともに改善が見送られ、そのうえ、地方切り捨ての「構造改革」がもたらした地方財政の悪化のなかで、多くの自治体では、地方人事委員会からの給与勧告をないがしろにして賃金削減が強行されるなど、労働基本権制約の「代償措置」としての勧告制度の存在意義そのものが問われる事態となってきています。
  地方公務員の給与水準は、地域の民間労働者の賃金をはじめ、地域経済にも影響を与えます。経済危機による「貧困と格差」のいっそうのひろがりや、国民生活の悪化が懸念されるなか、正規・非正規を問わず、公務職場に働く職員の賃金改善は、内需主導で日本経済を活性化するという大儀に沿って、とりわけ重要な課題になっていると考えます。
  こうしたもと、貴職が積極的な立場に立って、厳しい地方の経済情勢の中で住民福祉の充実に日々努力している自治体・自治体関連職場で働く労働者の暮らしを改善するために、下記の要求事項の実現にむけて、尽力されることを要請するものです。

1、民間給与実態調査にあたっては、単に民間の給与水準と機械的に比較するのではなく、地方自治や地方公共団体のあり方、公務・公共サービスのあり方と密接不可分であることに十分留意して作業をおこなうこと。とりわけ、比較対象企業規模を100人以上にすること。

2、教員給与について、義務教育等教員特別手当削減の動向を考慮に入れ、文部科学省の勤務実態調査を踏まえた適切な給与水準を確保すること。

3、公務員総人件費削減のもとで増加している臨時・非常勤職員について、昨年8月に示された人事院の「指針」もふまえつつ、給与・労働条件の改善、均等待遇の実現、在職中の職員の雇用確保などにむけて必要な対策をおこなうこと。

以 上