No.693
2008年12月22日
国の出先機関の拙速な見直しは認められない

= 公務労組連絡会が地方分権に関わる「第2次勧告」で申し入れ =

 地方分権推進委員会が12月8日に発表した地方分権「改革」に関わる「第2次勧告」にかかわって、公務労組連絡会は18日、政府に対する申し入れをおこないました。
  「第2次勧告」では、国の出先機関の統廃合によって3万5千人の公務員削減が打ち出されるなど、国の責任を放棄し、公務・公共サービスを大幅に後退させるものとなっています。また、道州制にむけた議論と一体で地方分権が推進されていることなど、「第2次勧告」は地方自治ともかかわって問題を持っています。
  申し入れでは、「第2次勧告」をうけて、国の出先機関の統廃合などを拙速に決定しないことなどを政府に求めました。

 

国・自治体それぞれの果たすべき役割をふまえた議論を

 政府への申し入れには、公務労組連絡会から黒田事務局長、秋山・蟹澤の両事務局次長とともに、自治労連から熊谷中執が参加し、政府側は、地方分権改革推進室の担当者が対応しました。
  はじめに、黒田事務局長は「要求書」(別掲)を手渡し、「第2次勧告の内容は、国の出先機関の統廃合などにより公務員の大幅な削減を示すなど、きわめて重大な問題を持っている。勧告をうけて、政府としては拙速な検討をおこなわず、また、当事者たる労働組合との十分な話し合いのもとに検討していくべきだ」と対応を求めました。
  申し入れ参加者からは、「派遣労働者の首切りなど雇用情勢が最悪だ。こうしたときこそ、国の行政体制を強化することが重要だ。その点からも、国が果たす役割の最低基準をきちんと決めたうえで、地方分権を議論すべきだ」「住民にとって必要な規制は強化すべきだ。行政を担うのは市町村であり、道州制は、それをベースにした議論が求められている。そのうえで、本来あるべき地方分権の姿を考えるべきだ」「財政的な裏付けのないままで地方分権の議論がすすめば、地方財政の疲弊は必至だ。教育の現場でも、貧困が子どもたちをおそっている。格差拡大の『改革』は認められない」などの意見がのべられました。
  推進室側は、「今日は、全般的に意見をいただいた。地方分権は、幅と深みのあるテーマであり、政府としては、推進委員会の勧告も受けて、みなさんの意見もふくめて、多方面に目配りしながら実行に移していく必要があると考えている。今後、第3次勧告にむけてヒアリングも考えられており、各方面の意見を聞いてきたい」とのべました。
  公務労組連絡会では、引き続き推進委員会や政府の動向に注視しつつ、節目節目で申し入れなどにとりくんでいくこととしています。

以 上

【別添資料:政府への要求書】

  内閣総理大臣 麻生 太郎 殿
(地方分権改革推進本部長)

公務労組連絡会  
議 長 米 浦  正

「地方分権改革」第2次勧告に対する要求書

 政府の地方分権改革推進委員会は、12月8日、国による義務付け・枠付けと国の地方出先機関の見直しについて第2次勧告をとりまとめました。
 その特徴は、勧告の最後にもあるように、「将来の道州制を実現に向けて確かな道筋をつける」として出されたものであり、「出先機関職員のうち、合計3万5,000人程度の削減を目指すべき」とした「人員削減ありき」のものということができます。
 今、地方自治体には住民のくらしを守るための政策を機敏に実行することが求められており、そのために国から地方への権限の移譲など、制度の見直しが必要なことは言うまでもありません。しかしながら、今次勧告は、住民のくらしに大きな困難をもたらしてきた「構造改革路線」にもとづく「小さな政府」をさらに推し進めるものです。
 勧告では、「義務付け・枠付け」の存置を許容する場合のメルクマール(指標)として、私有財産制度や法人制度など現行諸制度の根幹に関わる事務などを除き、国が法令上、自治体に課している手続きや基準の廃止・軽減をすすめる方向を明確にしていますが、「義務付け・枠付け」廃止・軽減といった「改革」によって、最低基準があいまいにされ、すべての国民に対し実現すべき「健康で文化的な最低限度の生活を営む」(憲法25条)権利や「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」(同13条)が、地方自治体独自の判断で侵害されることがないかが懸念されるところです。
 国と地方自治体の責任と役割の検証と議論を抜きに、地方出先機関が担っている事務・権限を地方移譲することに主眼が置かれており、国の責任を放棄するものとなっています。これでは、国民福祉の増進や住民自治を拡充するものとはなり得ません。
 また、この間の地方分権改革論議が道州制導入と一体となって進められていること、財政的な裏付けの議論が先送りされていることも重大な問題といえます。
つきましては、下記の項目について、政府として誠意ある対応をされるよう要求するものです。

1.国による義務付け・枠付けの見直しによって国民のくらしに弊害が生じないよう国の責任で必要な規制(最低基準)は維持すること。
2.国の責任を放棄し、公共サービスを破壊する国の出先機関の統廃合を拙速に決定しないこと
(1)国が直轄で整備・管理している道路・河川・港湾行政は国の責任を明確にし、安易な地方整備局の廃止や地方移譲は行わないこと
(2)国が実施している無料職業紹介事業の都道府県への移譲は行わないこと。また、利用者の利便性と労働者保護を大幅に後退させる都道府県労働局のブロック化は行わないこと。
(3)中小企業・地域経済振興、消費者行政拡充に逆行する経済産業局の業務の移譲は行わないこと
(4)登記など法務局の仕事は国が責任を持って実施すべきであることから、地方移譲は行わないこと
(5)行政の専門性を損ない、権力の集中化による弊害を惹起することから、地方支分部局の総合化は行わないこと
3.見直しの検討は、道州制導入を前提としたものにせず、現行の都道府県制及び市町村制にもとづきすすめること。
4.見直しにあたっては、自治体ごとに恣意的な判断が行われないよう、客観的基準の明確化や都道府県を含めた二重のチェック体制などについて、個別事業ごとに検討すること。
5.財政や人事など本来自治体の責任で行うべき自治事務について、国による不当な干渉は行わないこと
6.見直しにあたっては、今後、財政的裏付け(税財源)を含む検討をすすめること。
7.当事者たる労働組合と誠意ある交渉・協議を行うこと

以 上