No.680
2008年8月12日
職員の生活改善につながる積極的な検討を

= 地方人事委員会勧告にむけて全人連へ要請 =

 11日の人事院勧告をうけて、公務労組連絡会は12日、自治労連・全教と共同して、地方公務員、教職員の給与・労働条件改善を全国人事委員会連合会(全人連)に要請しました。
  要請では、「ベアゼロ勧告」に対する強い不満を表明しつつ、地方の人事委員会勧告にあたっては、「民間準拠」にとどまらず、職員の生活改善につながる積極的な検討を要請しました。

 

勤務時間短縮、非常勤職員の賃金・労働条件改善をはかれ

 全人連への申し入れには、公務労組連絡会からは、米浦副議長を先頭に、黒田事務局長、熊谷・蟹沢両事務局次長、鈴木・高橋の各幹事、自治労連から野村書記長、全教から東森書記長が出席しました。全人連は、内田会長(東京都人事委員会委員長)をはじめ、中澤(北海道)、石附(宮城県)、井上(横浜市)、中沖(静岡県)、近藤(愛知県)、帯野(大阪府)、高升(広島県)、富塚(徳島県)、谷水(福岡県)の各人事委員会代表ほかが出席しました。

要請書手交  はじめに、「要請書」(別掲)を内田会長に手渡し、米浦副議長は、「物価上昇で生活が厳しくなっているなかで、改定見送りの人事院勧告は極めて不満であり、賃金格差をひろげる本府省手当新設も認められない。各地の人事委員会では、『民間準拠』にとどまらず、地方公務員の生活改善にむけた積極的な立場での検討を求める。また、所定勤務時間の15分短縮、非常勤職員の処遇改善を強く要請する」とのべました。

 続いて自治労連・野村書記長は、「地方人事委員会においても、臨時・非常勤職員の実態の把握やガイドラインを示すなど、人事委員会としての役割が大いに発揮されるよう要請する」とのべ、全教・東森書記長は、「教育をめぐる困難が増大する中、教員の勤務実態は過労死ラインを超えている。子どもと向き合う教員を励ます勧告を求める」と訴えました。

 これに対して、内田会長は、以下のように回答しました。

(内田全人連会長回答)

 ただいまの皆様からの要請につきましては、確かに承りました。早速、役員県を通じて、全国の人事委員会にお伝えいたします。
 まず、最近の経済状況ですが、政府の8月の月例経済報告では、「景気は、このところ弱含んでいる。」とし、先月の報告まであった「回復」という表現を削除しております。2002年2月から始まった戦後最長の景気回復が終わり、景気が後退局面に転じている可能性を示唆しております。また、先行きにつきましても、「アメリカ経済や原油価格の動向などによっては、さらに下振れするリスクがある。」と警戒感を示しております。
 このようなアメリカをはじめとする世界経済の減速に加え、原油や原材料の価格高騰により、企業収益が悪化するとともに、食料品やガソリンの相次ぐ値上げが家計を圧迫し、国民生活を取り巻く環境は厳しいものとなってきております。
さて、本年の人事院勧告ですが、既にご承知のとおり、昨日、国会及び内閣に対して、勧告が行われました。
 人事院勧告によると、民間給与との較差は、136円(0.04%)と極めて小さく、俸給表の適切な改定には不十分であるなどの理由から、俸給表及び諸手当の改定を見送り、昨年、見直しに着手するとしていた住居手当については、引き続き検討を進めるとしております。
また、特別給につきましても、民間の支給割合と概ね均衡しており、支給月数の増減を行なわないとしております。
 その一方で、医師の人材を確保するため、来年4月から、年間給与を平均で約11%引き上げることが適当であるとして、医師の初任給調整手当の大幅な改善を行なうこととしました。
職員の勤務時間につきましても、過去5年間の調査結果を踏まえ、来年4月から、1日あたりの勤務時間を7時間45分とするよう勧告しました。
 詳細につきましては、これから人事院の説明を受けるところです。各人事委員会にとりまして、人事院の勧告は、必ずしも、直ちに、これに従うべきものではありませんが、今後の各人事委員会の勧告作業に影響を及ぼすものと考えられます。
 現在、各人事委員会では、秋の勧告に向けて、鋭意、作業を進めているところです。今後は、皆様からの要請の趣旨も十分考慮しながら、それぞれの人事委員会が、各自治体の実情を踏まえ、主体性をもって対処していくことになるものと考えております。
全人連としても、各人事委員会の主体的な取組を支援し、人事院や各人事委員会と、十分な意見交換や連携を行なえるよう、努めてまいります。
 公務員の給与を取り巻く環境は、引き続き厳しい状況ですが、各人事委員会におきましては、本年も、中立かつ公正な第三者機関として、その使命を十分に果たしてまいる所存でございます。

【別掲:全人連への要請書】
全国人事委員会連合会
   会長  内田 公三 様

公 務 労 組 連 絡 会     
議   長     大黒 作治
                  日本自治体労働組合総連合
中央執行委員長   大黒 作治
            全日本教職員組合
中央執行委員長   米浦  正

地方人事委員会の勧告に関する要請書

 貴職の地方公務員の賃金・労働条件の改善・向上に向けたご努力に敬意を表するものです。
  人事院は11日、国会と内閣に対して、官民較差がわずかなものとなったことを理由に、俸給表改訂を見送ることを主な内容とする勧告を行いました。勧告は、原油など原材料費の高騰が生活を直撃している現実に目をつぶる一方で、中央・地方の格差を拡大する「本府省業務調整手当」は導入するという極めて不当なものです。
  ここ数年、多くの地方自治体が、財政危機を口実にした賃金の独自カットを行っていますが、中には、住民サービスの切り捨ての露払いであるかのように、自治体当局や地方議会が勧告や労使合意を無視して給与切り下げを強行するといったことまでが起きており、地方公務員の生活水準の低下を招いています。
  今日の地方財政の危機的な状況は、「三位一体の改革」など政府の「骨太方針」によってもたらされたものであり、総務省の「リストラ方針」等により、いっそうの地方行政の営利企業化、切り捨て・減量化、地方公務員の定数及び人件費の削減となってすすめられようとしています。
  私たちは、地方公務員の給与・勤務条件が人事行政や職員の人材確保等とも深く関わるなど地方自治の有り様とも不可分に結びついていること、さらに地域での給与水準において「標準性」を持っており、地方の公務・公共関連労働者の給与等の水準、年金・生活保護をはじめとした社会保障の給付水準、最低賃金など「ナショナルミニマム」のあり方、それらを通じて住民の暮らしに重大な影響を及ぼし、地域経済にも大きな影響を与えるものと考えます。
  これから各地の人事委員会においても本年の勧告にむけた作業にとりかかられるものと考えますが、各地の人事委員会勧告にあたっては、こうした見地から下記事項を十分に尊重いただき、その実現に向けて努力していただくことを強く要請するものです。

1、地方公務員・関連労働者の暮らしを守り、「全体の奉仕者」として職務に専念できるよう各地の労働組合の要求に応え、急激な物価高騰に見合った賃金・労働条件の改善・充実を図ること。
2、今年度については、比較企業規模100人以上をもとにするなど積極的な改善を行うこと。
3、所定勤務時間短縮について直ちに実施するとともに、超過勤務縮減へ向けた具体的措置を講じること。
4、人事委員会の勧告と関わりなく行われている「賃金カット」などの労働条件の切り下げに対しては、毅然とした対応を行うこと。
5、独自に「賃金カット」を行っている自治体は、実態賃金との比較で公民較差に基づく賃金改善を行うこと。
6、非常勤職員等非正規職員の賃金及び労働条件の改善を行うよう勧告すること。
7、地方公務員の給与水準問題について、「同一労働・同一賃金」の立場に立ち、地方公務員給与の水準を守り、地域間格差拡大を行わないこと。
8、給料表については、職務による格差の拡大、中高年層の給与の抑制をやめ、生計費原則に立った構造とすること。査定昇給及び勤勉手当の格差拡大の導入は、人事評価制度の未確立の状況を踏まえ、当該労働組合との交渉経過等を尊重し、慎重に対処すること。
9、教員の給与勧告にあたっては、義務教育費国庫負担金の見直しなどの動向に影響されず、地方公務員法および教員人材確保法にもとづき、文科省「教員勤務実態調査」の結果を踏まえた適正な教員給与水準を確保すること。なお、教員モデル給料表を提示するにあたっては、級間格差を拡大せず、1級水準を改善するとともに、2級の水準引下げを絶対におこなわないこと。
10、持ち家に係る住居手当について、人事院の検討に追随することなく、地方自治体の住宅保障として充実する立場で検討すること。
11、憲法とILO勧告に基づき公務員労働者の労働基本権を保障するなど民主的公務員制度確立にむけ積極的に政府に働きかけること。

以 上