No.662
2008年5月23日
野党議員が基本法案の問題点を追及
= 衆議院内閣委員会で公務員改革法案の審議を継続 =
 「公務員制度改革基本法案」は、5月23日、前日(22日)の参考人質問に続き、衆議院内閣委員会で3時間にわたり審議が続けられました。
 この日は、野党各党だけが、法案の問題点などについて政府を追及しました。
 全労連「公務員制度改革」闘争本部として6名の参加(国公労連4、自治労連1、公務労組連絡会事務局1名)で内閣委員会の傍聴・監視行動にとりくみました。

「法案修正は委員会として協議されている」と重大答弁

 この日の内閣委員会は、馬淵澄夫、楠田大蔵、佐々木隆博(以上、民主)、菅野哲雄(社民)、塩川鉄也(共産)の各議員が質問しました。
 民主党の馬淵議員は、まず天下り問題で政府のとりくみをただし、それと密接な関係にある「肩たたき」の慣行について政府の姿勢の弱さを追及しました。
 これに対し渡辺行革担当大臣は「能力実績主義の導入をはじめとする改革で構造的な天下り慣行がなくなる」と答弁しました。
 馬淵議員は、国家公務員の定数管理や給与など人事全体について、「現在、総務省・財務省・人事院による『三つ巴』状態で調整が図られていることが煩雑であり、人事の硬直化などを招いている」と指摘。
 渡辺大臣は、専門調査会でも「責任がバラバラでは問題」との認識が示されたことを紹介し「内閣人事庁でどこまでやれるか、これから検討することになる」とのべました。
 楠田議員が、国家公務員志望者や若手職員の退職が増えていることから「基本法で現在の過酷な勤務実態が解消できるのか」と質問すると、渡辺大臣は「法案にある様々な措置で現実の不合理な実態を改善できる」と答えました。
 また、楠田議員が地方分権改革とのかかわりについても質問したことに応え、渡辺大臣は「構造改革は、中央から地方へ、官僚主導から政治主導へということであり、内閣人事庁で『日の丸官僚』を育成・活用し、内閣一体の運営で地方分権改革も円滑にすすむ」などと、公務員制度改革の狙いを明らかにしました。
 続いて佐々木議員は「審議の中で法案をめぐる各論点が整理されてきた」とのべ、「労働基本権こそ整理されるべき」とこの問題にしぼって質問、「法案は協約締結権の付与を前提にしているのか」と追及しました。
 渡辺大臣は「与党内の調整の結果として、このような法案になった」としつつ、佐々木議員の「2条(基本理念)に『責任ある労使関係の構築』など専門調査会報告を反映せよ」とする求めには「法案の修正は内閣委員会として協議されているものと認識している。(修正意見は)前向きに検討する」などとのべ、民主党との修正協議にふみ込んだ答弁を行いました。

 政官接触ルールは、議員活動の制約にしかならない

 社民党の菅野議員は、「試験制度の変更だけでは、新たなキャリアシステムをつくるだけ。新たな幹部育成制度に選抜された職員の採用試験区分を公表すべきでは」と質問。渡辺大臣は「現在はT種試験合格で自動的に幹部となるが、総合職採用というだけでは幹部育成過程に選抜されるということにはならず、本人の希望と人事評価による」という答弁にとどまりました。
 さらに「人事評価制度導入に労働基本権はさせて通れない」とした過去の国会答弁についての指摘に、渡辺大臣は「人事評価制度は昨年の国公法改正で実現した。基本法はこれまでの経過を踏まえたものだ」とすり替えの答弁に終始しました。
  最後に質問に立った共産党の塩川議員は、国会議員には行政に対するチェック機能を果たす役割がある、という立場から新たな政務専門官について質問。渡辺大臣は「(政務専門官だけでなく)専門的なことは大臣の指示によって専門職員が説明する。現在は、国会議員と官僚が接触するルールがなく、官僚が内閣や大臣の考えと違うロビーイングをするという弊害まで生まれている」と答弁しました。
 これに対して塩川議員は「チェックすべき立場にある野党議員にとっては、そうした制限は議員活動への制約であり、お荷物にしかならない。政務専門官というのは、これまでの大臣政務官と何が違うのか」と追及。渡辺大臣は「法案の目的は真の議院内閣制の追求にあり、接触ルールは政治主導ではなく官僚主導という弊害を除くためだ」と抗弁しました。
 塩川議員は「官僚のロビーイングが問題だとすれば、それは受ける議員がいるからで、実際にどんな例があったのか、それを示すべき。問題は与党政治家の問題ではないのか。与党のルールをつくればいいではないか」と法案の問題点を鋭く指摘し質問を終えました。

「権利は損得で決めるべきではない」と加藤参考人が意見陳述(22日)

 衆議院内閣委員会は5月22日、参考人質疑をおこないました。参考人として、堺屋太一氏(作家)、加藤秀樹氏(構想日本代表)、田中一昭氏(拓殖大学名誉教授)、加藤健次氏(弁護士)から所見が述べられ、質疑がおこなわれました。
 自由法曹団の事務局長をつとめ、国公法弾圧事件や国公権利裁判などにかかわってきた加藤健次弁護士は、これまでの裁判経験をふまえ、公務員労働者の基本的権利の必要性を強調しました。
 とくに、2002年の本俸マイナスの勧告で、4月にさかのぼって「不利益遡及」が一方的に強行されたことにふれ、「不利益に対する救済措置が公務員にはなく、人事院勧告の代償措置としての限界が明らかになった。そうしたことと関わって、ILOが3度にわたって勧告している。法案は、権利保障にともなう便益や費用を問題にしているが、労働者の基本的権利を損得で判断するべきではない」と鋭く指摘しました。
 さらに、加藤弁護士は、(1)国民の権利を守るために仕事をしている公務員の権利が保障されて当然、(2)公務員の権利保障が、官民を問わず蔓延している長時間労働やワーキングプアの克服にもつながる、(3)人事評価は、だれがどのように判断するのか難しい。公務員の公共性を再認識して自覚するためにも、ゆとりある労働条件をつくることが重要、と改革に必要な3つの観点を主張し、「実際の職場の実態に目をむけ、国民の要望をもっとくみ上げて、改革をすすめる姿勢が重要だ」と、公務員制度改革のすすめ方への意見をのべました。
 また、共産党の塩川鉄也議員からの「法案は、専門調査会の最終報告や、公務員制度改革懇談会の報告からも後退しているとの意見が出ているが、どう思うか?」との質問に答えて加藤弁護士は、「労働基本権の回復は、2001年の行政改革で決着すべきだった。もともと労働基本権剥奪は、国民の議論を経ず、占領軍の一方的な命令によるものだ。であるならば、まず憲法どおりに権利を回復すべきであり、そうした方向を法律で国民に示してから、個々の問題についての国民的議論をしていけばよい」とし、法案に労働基本権保障を明記するように求めました。
以 上