No.655
2008年3月20日
「非常勤職員を差別するな」と国の責任を追及
= 「官製ワーキングプア」をめぐって参議院予算委員会で質疑 =
 3月19日の参議院予算委員会において、「官製ワーキングプア」として問題になっている公務職場の臨時・非常勤職員問題が取り上げられました。
 質問に立った日本共産党の山下芳生参議院議員は、地方自治体の一般事務や保育の職場で働く臨時・非常勤職員の実態を具体的に示し、政府を追及しました。
 同じ職場で同じ仕事をしながら、賃金や休暇制度で差別を受けている非常勤職員に対し、増田総務大臣は、「同じように働く人に違いがあってはならない。実態を直視して検討していく必要がある」と答弁しました。
 公務労組連絡会が3月5日に開いた「官製ワーキングプア告発集会」には、山下議員も駆けつけ、国会開会中の多忙ななかを最後まで同席し、発言者の一言一句に熱心に耳を傾けました。こうしたとりくみも通して、この日の質問が実現したものです。

月給10万円、生活保護を下回る低賃金で働く実態を指摘

 予算委員会で山下議員は、約30分の質問時間を、「官製ワーキングプア」の問題だけに絞って政府の姿勢をただしました。
 山下議員は、「臨時・非常勤職員は、補助的業務にとどまらず、正規職員がやるような基幹業務をまかされ、専門的な知識も要求されている。勉強もしなければならない。非常勤職員がいなければ、公務の仕事がまわらなくなっているが、最低賃金ぎりぎりで生活保護費よりも低い月10万円程度の賃金しか支給されていない。自治体が大量にワーキングプアをつくりだしていいのか」と、見解をただしました。
 増田総務大臣は、「臨時・非常勤職員の採用は、地方の財政状況が厳しいなかで、それぞれの自治体の判断のもとでおこなわれているものだ。臨時的・補助的に業務に従事すべきであり、そうした本来の趣旨をふまえて任用すべきだ」とのべ、あくまで自治体が判断すべきだと責任を転嫁しました。
 これに対して、山下議員は、「ある自治体の保育の職場では、約半数が非常勤の保育士で、同じ仕事をしていても、賃金は正規の保育士の3分の1で、年収は200万円以下だ。政府として、こうした差別を許していいと思っているのか」と厳しく追及しました。増田総務大臣は、「それぞれの自治体の任命権者の判断があると思う。また、新たに任期付きの短時間職員制度もできたので、そうした制度も活用できる」などとのべ、話をすり替えました。

「パート労働法の趣旨を反映する法整備も必要」(桝添厚労大臣)

 山下議員が、「保育園の園児にとっては、保育士に正規・非正規の区別はない。臨時の保育士さんたちも、子どもたちのことを一番に考え、プロフェッショナルとして仕事をしている」とのべると、桝添厚生労働大臣が答弁に立ち、「高いこころざしで仕事をしていると認識している。改正パートタイム労働法では、同じ職場に働く正規と非正規労働者の差別的処遇を禁止している。公務と民間では仕組みは違うかもしれないが、改正パート労働法の趣旨が反映されるような公務員法制の検討があってしかるべきだ」と見解をのべました。
 この答弁も受けて、山下議員は、中野区の非常勤保育士の雇い止め事件に関して、昨年11月に出された東京高裁判決を例に出し、約10年にわたって雇用更新が繰り返されたあげく、突然雇い止めにした中野区に対して、「解雇濫用法理を類推適用すべき程度にまで違法性が強い」と判断し、非常勤職員に関する任用について「実質面に即応した方の整備が必要」と裁判所も指摘していることを示し、政府としての法整備を求めました。
 しかし、増田総務大臣は、「裁判所が、特別な事情を判断したものだ。各自治体が、臨時・非常勤職員の採用制度に沿って適切な運用をしてもらう必要がある」などと、山下議員の質問に正面から答えず、不誠実な答弁に終始しました。
 山下議員は、「政府の対応はきわめて不十分だ。常勤的な非常勤職員が増えていることを直視せよ。自治体をそこまで追い込んだのは、自治体リストラを押し付け、地方交付金を削減してきた政府にこそ責任がある。東京高裁の判決を真摯に受けとめよ」と求めました。

「同じように働く人に違いがあってはならない」と総務大臣が答弁

 さらに、千葉市が非常勤嘱託職員の育児休業を認めず、雇い止めにしたことに対して、日弁連が2004年に、「常勤職員と同様の取得を認めないのは、不合理な差別に当たる」として、条例改正などを求める勧告を国と千葉市に出したことをとりあげ、山下議員は、「千葉市は、この勧告を真摯に受けとめ、非常勤職員も育児休暇を取れるように改善した。しかし、国はこの勧告に何ら応えようとしていない。無責任きわまりない。差別していいのか!」と声を高めました。
 厳しい追及の前に増田総務大臣は、「指摘されたような実態を直視して、検討すべきだと考える。同じように働く人たちに処遇で違いがあってはならない。処遇を検討していかなければならない」と答弁しました。
 これを受けて、山下議員は最後に、「重要な答弁だ。仕事が同じならば、権利も賃金もみんな同じだ。平等の精神からいけばあたり前のことだ。差別を放置し、官製ワーキングプアを増やし続けるのは許されない」と重ねて指摘し、質問を終わりました。
以 上