No.654
2008年3月19日
勧告制度の枠内の不満な回答
= 08年春闘要求に対して、政府・人事院と最終交渉 =
 公務労組連絡会は19日、「08年春闘要求書」への回答を求めて、総務省・人事院との最終交渉にのぞみました。
 民間組合への回答が出されてきた中、公務員労働者の賃上げや労働条件改善に向け、誠意ある回答を求めましたが、「国政全般との関係との関連を考慮しつつ・・・人事院勧告制度の維持尊重」(総務省)、「官民較差にもとづく適正な給与水準の確保」(人事院)など、極めて不満な回答にとどまりました。
 公務労組連絡会では、回答を受けて、幹事会声明を発表しました。

総務省交渉 労働基本権回復の要求には「ゼロ回答」

 総務省・人事院との最終交渉には、公務労組連絡会からは、大黒議長を先頭に、米浦副議長、黒田事務局長、熊谷・蟹沢事務局次長、柴田・高橋の各幹事が出席しました。
 総務省の交渉は、人事・恩給局総務課の平池総括課長補佐、西野課長補佐ほかが対応しました。
 はじめに、大黒議長は、「前回交渉の回答は、『勧告が出れば、それを尊重する』としたもので、公務労組連絡会の要求に正面から応えるものではなかった。国民の期待に応える公務・公共サービスを提供していきたいと真剣に願っている職員の思いを真摯に受けとめ、また、すみやかな回復を強く求めてきた労働基本権をめぐる課題や、臨時・非常勤職員の賃金・労働条件の改善を求める」として、回答を求めました。
 これに対し平池総括課長補佐は、以下のように回答しました。

【総務省最終回答】
(給与改定について)
1 人事院勧告制度は、労働基本権制約の代償措置であり、同制度を維持尊重することが政府としての基本姿勢である。
平成20年度の給与改定については、この基本姿勢の下、国政全般との関連を考慮しつつ適切に対処してまいりたい。
  昨年の給与改定について、職員団体から強い不満の意の表明があったことは承知しており、国家公務員の給与水準については、これまで同様に職員団体とも十分に話し合い、適切な水準が確保できるよう努力してまいりたい。
(退職手当について)
2 不祥事を起こした国家公務員に対する退職手当の在り方等については、専門家からなる検討会で本年春までをめどに結論を得る予定で検討を行っているところである。退職手当は職員の重要な関心事項であり、今後とも職員団体からの意見は十分承ってまいりたい。
(ILO条約について)
3 政府としては、従来よりILO条約尊重の基本姿勢をとってきたところである。また、ILO条約の批准について職員団体が強い関心を持っていることは十分認識している。
 なお、ILO結社の自由委員会第329、331、340次報告に対しては、関係機関と相談しつつ、誠実に対応する。
(労働時間の短縮等について)
4 労働時間の短縮については、「国家公務員の労働時間短縮対策」に基づき、超過勤務の縮減や年次休暇の計画的使用の促進に努めるとともに、関係機関とも連携しながら、政府一体となって更に実効性のある取組を進める。
(公務員の高齢者雇用について)
5 公務員の高齢者雇用については、平成25年度から60歳定年退職者について無年金期間が発生することを踏まえ、雇用と年金の連携を図り、高齢国家公務員の雇用を推進する観点から、その在り方について、職員団体の意見を聞きつつ検討してまいりたい。
(男女共同参画社会の実現について)
6 男女共同参画社会の実現に向け、「男女共同参画基本計画 (第2次)」「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」に基づき、関係機関とも連携をとりつつ、女性国家公務員の採用・登用の促進や職業生活と家庭生活の両立支援の充実等に着実に取り組む。
(人事評価の試行について)
7 新たな人事評価システムの構築に向け、現在実施中の試行に加え、改正国公法の施行に向けてリハーサル試行を実施することも必要と考えており、透明で納得性があり信頼性の高いシステムを目指して取組を進める。
 その中で、評価結果の開示や苦情処理システムの在り方が大きな論点であると認識しており、取組に当たっては、職員団体とも十分意見交換し、理解と納得を得られるよう努めてまいりたい。
(非常勤職員について)
8 国家公務員非常勤職員の実態については、現在、人事院において各府省から聴取していると聞いている。総務省としては、政府としての必要な協力を行ってまいりたい。その上で政府として必要な対応を考えてまいりたい。
(安定した労使関係の維持について)
9 安定した労使関係を維持する観点から、職員団体とは誠意を持った話合いによる一層の意志疎通に努めたい。

 これに対して、黒田事務局長は、「専門調査会の最終報告が人事院勧告の廃止まで打ち出されているとき、『人勧制度の尊重』という従来どおりの回答は認めがたい。政府全体として賃上げへの積極的な姿勢が求められている。公務員の労働基本権の回復については「ゼロ回答」であり、使用者としての姿勢が全く感じられない。非常勤職員の問題なども使用者責任を持って対処せよ」と追及しました。
 また、交渉参加者からは「労働基本権回復について、消防職員や行刑職員などへの団結権付与など使用者としての積極的な検討を求める」「公務労働は協働的なもので個々の業績をはかることは困難だ。職員が充分に納得できる人事評価制度へ努力せよ」「今、非常勤職員が安心して仕事に取り組める状況ではない。総務省として役割を果たせ」など、使用者としての責任を厳しく追及しました。
 これに対して、平池総括課長補佐は、「引き続き、みなさんと意見交換をして検討をすすめたい」とのべるにとどまりました。
 最後に大黒議長は、「従来通りの「勧告制度の尊重」とする回答は、使用者としての責任が感じられず、きわめて不満なものである。常勤・非常勤を問わず、職員が職務に精励できる賃金・労働条件の改善にむけて、引き続き努力するよう強く求める」として、交渉を閉じました。

人事院交渉 非常勤職員の給与決定で「指針」を検討

 人事院交渉では、人事院側は、給与局給与第一課の近藤課長補佐、職員福祉局職員福祉課の役田(やくでん)課長補佐が対応しました。
 大黒議長は、「税金や物価が上がる中で、公務員労働者にとっても、その要求の切実さは変わっていない」として人事院に回答を求めました。
 これに対し、人事院は、以下の通り回答しました。

【人事院最終回答】
1 官民較差に基づき、適正な公務員給与の水準を確保するという人事院の基本姿勢に変わりはない。
  官民給与比較方法の検討に関しては、まずは給与構造改革の着実な実施が肝要であると認識している。公務員給与のあり方については、情勢適応の原則に基づき常に検討を続けており、引き続き政府をはじめ広く各方面の意見を聞きながら適正な公務員給与の確保に向けて努めて参りたい。
現行の比較対象企業規模に関しては、これによって民間給与を適切に反映できるものと考えており、変更することは考えていない。
2 公務員の給与改定については、初任給を含め民間給与の実態を精確に把握した上で、適切に対処する。
3 給与勧告作業に当たっては、較差の配分、手当のあり方などについて皆さんと十分な意見交換を行うとともに、要求を反映するよう努める。
自宅に係る住居手当の廃止を含む住居手当のあり方及び特地勤務手当の見直しに関しても意見を聞きつつ検討を進める。
  また、給与構造の見直しに関しては、本府省手当のあり方を含め皆さんの意見を十分聞きつつ検討を進める。
4 一時金については、民間の支給水準等の精確な把握を行い、適切に対処する。
5 新たな人事評価制度の任用・給与への活用の在り方等については、関係者及び皆さんの意見を十分に聞きつつ検討する。
6 公務員の勤務時間・休暇制度の充実に向けて、関係者及び皆さんの意見を聞きながら引き続き検討を進める。
 (1) 超過勤務の縮減については、関係機関と連携しつつ本年春から各府省において具体的な施策を実施することができるよう努める。
(2) 所定勤務時間のあり方については、所要の準備を行った上で、本年の民間給与実態調査結果も踏まえ、民間準拠の原則に基づいて勤務時間の見直しに関する勧告を行いたいと考えている。
7 平成17年末に改定された「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」に基づく施策が着実に実行されるよう努める。
8 心の健康づくりについては、「職員の心の健康づくりのための指針」に基づいて、研修の充実、健康管理医による職場復帰相談室の拡充などの取組みを進める。
9 公務における雇用と年金の連携は重要な課題であると認識しており、平成25年度を見据え研究会の開催など鋭意検討を進める。
10 非常勤職員については、本年勧告時を目途として、その給与決定に係る指針の検討を進める。
非常勤職員の問題は多岐にわたる検討を必要とするものであり、民間の状況も見つつ、その位置づけ等も含め関係機関で幅広く検討される必要があると考える。

 これに対して、黒田事務局長は、「中間交渉と同様に、『民間準拠による給与改定』との回答は、極めて不満だ。民間では、史上最高の利益をあげながら、昨年同様の低ベアにとどまっているなかで、現場の第一線で奮闘している職員の期待に応え、生活改善できる賃金改善をおこなう姿勢が、『第三者機関』として必要だ」と追及し、また、「非常勤職員の給与・労働条件の改善にむけて、指針の検討をすすめるなど、人事院としての前向きな姿勢は受けとめたい。3月5日に臨時・非常勤職員の集会を開いたが、とりわけ雇い止めに対する不満や不安の声は大きいものがあった。賃金だけでなく、雇用など労働条件全体をふくめた検討を求めたい」とのべました。
 最後に大黒議長は、「要求に対する具体的な回答を求めてきたが、とりわけ賃金改善では、『民間準拠』とする回答は不満であることをあらためて表明したい。労働基本権制約の「代償措置」たる人事院として、職員が職務に精励できる労働条件の早期改善にむけた努力を求める。人事院勧告にむけては、公務労組連絡会の要求をふまえて、交渉・協議を続けるよう求める」とのべ、交渉を終えました。
以 上