No.650
2008年2月17日
職員の努力に応える勧告を
= 地方公務員の給与改善を求めて全人連に要請 =
 公務労組連絡会は2月15日、自治労連・全教と共同して、全国人事委員会連合会(全人連)に対して、地方公務員給与や勤務時間短縮にかかわって申し入れを行いました。
 申し入れでは、諸物価高騰の中で、地域経済にも影響をあたえる地方公務員の給与の改善、とりわけ行政の現場に増え続ける臨時・非常勤職員の均等待遇実現ヘむけた地方人事委員会としての努力を要請しました。

臨時・非常勤職員の給与・労働条件改善へ向けた対策を

 全人連への申し入れには、公務労組連絡会からは、米浦副議長を先頭に、黒田事務局長、熊谷・蟹沢両事務局次長、柴田・鈴木・木原の各幹事、自治労連から野村書記長、全教から東森書記長が出席しました。全人連は、内田公三会長(東京都人事委員会委員長)はじめ、主要な都道府県・政令市の人事委員会委員長・事務局長らが出席しました。
 はじめに、米浦副議長は、内田会長に「要請書」(別掲)を手渡し、「昨年の人事院勧告は、8年ぶりの俸給表改善で9年ぶりの年収増となったが、地方自治体の状況を見ると、「マイナス勧告」や自治体独自の賃金カットなど、地方財政悪化のもと厳しい状況がつづき、地域間の格差もひろがっている。住民サービスの向上をめざして、第一線で日々奮闘している職員の努力に応えるうえでも、地方公務員・教員の給与等の改善にむけた全人連・地方人事委員会での努力を要請する」と申し入れました。
 続いて、自治労連の野村書記長は、「メンタルヘルスとの関係でも時間短縮は重要な課題だ。時間外縮減やサービス残業をなくすよう踏み込む必要がある。また、官製ワーキングプアといわれる臨時・非常勤職員の問題についても、その責務にふさわしい処遇の実現のため具体的な調査に基づく勧告を求める」とのべ、また、全教の東森書記長は、「昨年の文科省調査によって教員の長時間労働の実態が明らかになった。真剣に子どもと向き合う多くの教員のために、現在の2級の水準を維持、改善が不可欠だ」と、人事委員会がその責任を果たすよう強く要請しました。

 これに対して、内田会長は、以下のように回答しました。

(内田全人連会長回答)
 ただいまの皆様からの要請につきましては、確かに承りました。早速、全国の人事委員会にお伝えいたします。
 あらためて申すまでもありませんが、人事委員会の重要な使命は、公務員の給与等の勤務条件について、社会情勢に適応した適正な水準を確保することであると認識しております。
 現在、人事院及び各人事委員会は、本年の民間給与実態調査の実施に向け、民間給与実態を的確に把握できるよう、その準備を進めているところです。
 折角の機会ですので、最近の経済情勢や春闘を巡る状況認識について、一言、申し上げます。
 まず、去る1月18日に発表された政府の月例経済報告では、景気の「先行きについては、企業部門が底堅く推移し、景気回復が続くと期待される」とする一方、「サブプライム住宅ローン問題を背景とするアメリカ経済の下振れリスクや原油価格の動向等が内外経済に与える影響等に留意する必要がある」としております。
 先週のG7の声明においても、「世界経済はより不確実な環境に直面しており、G7各国の成長は幾分減速」するとされており、最近の株式市況の低迷もあって、景気の先行きが懸念されるところです。
 また、既に2月上旬から始まっている本年の春季労使交渉では、企業業績が、過去最高を更新すると見られる好調な企業がある一方、円高や原材料価格の高騰により陰りが見えはじめた業種も見受けられることから、賃上げは企業によりまちまちになるだろうとの観測もあり、今後の春季労使交渉の行方が注目されるところです。
 今後、各人事委員会においては、こうした社会経済状況の動向などを踏まえながら、本日の要請内容を含め、本年の勧告に向けて検討をしていくことになろうかと思います。
 全人連といたしましても、必要な点について、人事院や各人事委員会と十分意見交換が行えるよう、努めてまいりたいと考えております。
 公務員の給与を取り巻く環境は引き続き厳しい状況ではありますが、本年も中立かつ公正な第三者機関として、その使命を果たしてまいります。


【全人連への要請書】

地方公務員の給与等の改善にかかわる要請書

 日頃から地方公務員の勤務条件の向上にご努力いただいていることに敬意を表します。
 昨年の人事院勧告は、初任給を中心として8年ぶりに俸給表が改善され、一時金などの引き上げとあわせて、国家公務員一般職では9年ぶりの年収増となりました。これを受けて、各地の地方人事委員会で改善勧告が出される一方、地場賃金の伸び悩みや地方自治体の財政危機、さらには、政府・総務省の圧力の強まりで、少なくない地方では「マイナス勧告」や自治体独自の賃金削減がおこなわれるなど、依然として厳しい状況が見られます。
 また、昨年の勧告では、一時金などを中心にして地方間格差の拡大が特徴的に現れましたが、全国的に均一な行政サービス提供や人材確保の面から、地域格差の縮小こそ求められています。
 地方公務員の給与水準は、地域の民間労働者の賃金をはじめ、地域経済にも影響を与えます。「格差と貧困」のひろがりとともに、諸物価上昇による生活悪化が懸念されるなか、正規・非正規を問わず、公務職場に働く職員の賃金改善が重要な課題となっています。
 貴職が積極的な立場に立って、厳しい地方の経済情勢の中で住民福祉の充実に日々努力している自治体・自治体関連職場で働く労働者の暮らしを改善するために、下記の要求事項の実現にむけて、尽力されることを要請するものです。

1、民間給与実態調査にあたっては、単に民間の給与水準と機械的に比較するのではなく、地方自治や地方公共団体のあり方、公務・公共サービスのあり方と密接不可分であることに十分留意して作業をおこなうこと。とりわけ、比較対象企業規模を従前の100人以上に戻すこと。
2、教員給与について、義務教育等教員特別手当削減の動向を考慮に入れ、文部科学省が実施した勤務実態調査を踏まえた適切な給与水準を確保すること。また、級増設に伴い、基幹的給料表である2級の水準を引き下げることなく、義務教育等教員特別手当の削減モデルを示さないこと。
3、人事院で国家公務員の所定勤務時間短縮が検討されていることをふまえ、地方公務員の所定勤務時間の短縮をおこなうこと。
4、公務員総人件費削減のもとで増加している臨時・非常勤職員について、実態調査をはじめ、給与・労働条件の改善、均等待遇の実現などにむけて必要な対策をおこなうこと。
以 上