No.639
2007年11月6日
給与法案、衆院総務委員会で可決
= 勧告の「不完全実施」に野党の批判 =
 一般職国家公務員の給与法改正法案は、11月2日に国会に提出され、11月6日に開かれた衆議院総務委員会で審議が行われました。午前中の各党の質問が終わったのち、法案は全会一致で可決されました。
 審議では、指定職について地域手当、勤勉手当の改定を見送るという「不完全実施」に全ての野党が批判を集中し、労働基本権の「代償措置」である人事院勧告の尊重を堅持するようあらためて政府に配慮を求めるなどの付帯決議とあわせて、全会派一致しての可決となりました。
公務労組連絡会は、総務委員会の傍聴にとりくみ、7名(国公労連4、自治労連1、全教1、事務局1)が参加しました。

勧告値切りは「遺憾である」と人事院総裁

 午前9時半から開かれた衆議院総務委員会では、冒頭、増田総務大臣が給与法案について趣旨説明を行い、その後、鍵田忠兵衛(自民)、寺田学・森本哲生・逢坂誠二(民主)、塩川鉄也(共産)、重野安正(社民)の各議員が質問に立ちました。
 とくに、指定職の地域手当、勤勉手当の改定を見送るという「人勧不完全実施」に対し、各党が質問を集中しました。
 民主党・森本議員の「不完全な実施となり残念である。勧告は労働基本権の代償措置であるが、このことをどう考えるか」という質問に、谷人事院総裁が「結果としては、遺憾である」と批判したことに対し、増田大臣は「今回の取り扱いは、社会経済情勢や厳しい財政状況のなか、国民の理解を得るよう判断した結果である。いささかも人事院勧告尊重の基本姿勢に変わることはなく、職員の士気の面からも重要であり、今後も努力したい」と答えました。
 森本議員は、指定職の改定見送りによる財政効果が9億円という答弁を受け、「わずかな財政効果であり、象徴的な効果を狙った問題のある決定だ」とのべ、政治的な取り扱いを批判しました。

地方自治体に圧力をかけるな

 また、閣議決定で政府が、「人事院に対し、地域における官民給与比較の在り方を含め、民間給与のより一層の反映のための更なる方策について検討を行うよう要請する」としていることについて、森本議員は、「昨年比較企業規模を変更しており、1・2年で制度を変えるようでは、公務員給与の安定性がはかれない。第三者機関としての人事院への政治的な圧力となるのではないか」と追及。これに対して、増田総務大臣は「地場より高いという指摘はあり、地方の民間企業は厳しい実態にあることなどから人事院にお願いした」とのべました。
 さらに地方人事委員会勧告に関する質問では、「地方人事委員会勧告も代償措置として尊重されるべきと考える」とのべ、さらに閣議決定後の総務事務次官通達による地方への「要請」は、地方自治への干渉・介入ではないのかと追及されると、「専門的客観的立場からの指針を示しただけだ。どう受け止めるかは自治体の判断」と強弁しました。

非常勤職員の劣悪な労働条件を追及

 共産党の塩川議員は指定職の勧告値切りを厳しく批判したうえで、「人勧が完全に実施されないなかで労働基本権回復の要求をどう受け止めるのか」と追及しました。
 増田総務大臣が、「労働基本権のあり方については、専門家にも議論をお願いする重要な問題。行革推進本部専門調査会の報告も出されており、公務員制度改革の一環として検討されるべき」と答えたことに対して、塩川議員は「行革のワク組みで労働基本権を論じることは筋違いだ。ILO勧告や国際基準に沿った改革をすすめるべき」と強く要求しました。
 また塩川議員は、谷人事院総裁に対して、非常勤職員問題の具体的な検討内容をただしました。
 塩川議員は、「説明もなく雇い止め、雇用保険に入りたいといったら解雇、病休は無給となり病気でも無理して出勤。事務補助というが、市民からの問い合わせに答えたり、行政指導といった基幹的な仕事をしている。こうした実態を把握しているのか」と具体的な実態にもとづいて追及しました。谷総裁は、「処遇の検討は、他の関係機関とも連携し、人事院の所掌を超えた位置づけや役割などについても総合的にすすめる」とのべ、日々雇用の制度についても「公務組織、非常勤職員の役割、位置づけ、定員や民間の非正規の状況など含めて、検討の対象になる可能性はある」との考えを示しました。
 一方、増田大臣は、使用者としての立場から答弁を求められると、「人事院の調査結果を見ながら、対応を検討する」との消極的な姿勢に終始しました。

全会一致で給与法改正法案・附帯決議を可決

 これらの質疑が一巡したのち、ただちに採決に入り、給与法改正法案は、全会一致で採択されました。また、下記の附帯決議を全会一致で採択しました。

一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議

 政府及び人事院は、次の事項について、十分配慮すべきである。
1、政府は、人事院勧告制度が労働基本権制約の代償措置であることにかんがみ、公務員の給与改定については、勧告制度を尊重する基本姿勢を堅持し、完全実施するよう努めること。
2、政府及び人事院は、専門スタッフ職俸給表については、公務能率の向上と早期退職慣行の是正に特に配慮しつつ、複線型人事管理の円滑な導入に資するものとなるよう、適切な運用に努めること。
3、政府及び人事院は、非常勤職員の位置づけと給与の在り方について、民間の状況や職務の実態も考慮しつつ、早急な検討に努めること。
4、政府は、公務員制度改革については、労働基本権の在り方を含め、職員団体等の意見を十分聴取し、国民の理解を得るよう最大限努力すること。(以上)
以 上