No.630
2007年8月9日
国・地方すべての公務員に賃上げを
= 地方人事委員会勧告にむけて全人連へ要請 =
 8日の人事院勧告をうけて、公務労組連絡会は9日、自治労連・全教と共同して、地方公務員、教職員の給与・労働条件改善を全国人事委員会連合会(全人連)に要請しました。
 要請では、「プラス勧告」となった人事院勧告もふまえて、地方の人事委員会勧告にあたっては、連年の賃下げで切実さが増す要求に応え、賃金改善にむけた積極的な努力をはかるよう申し入れました。

秋の人事委員会勧告にむけていっそうの尽力を要請

 全人連への申し入れには、公務労組連絡会からは、米浦議長を先頭に、若井事務局長、黒田事務局次長、柴田・渡辺・蟹沢の各幹事、自治労連から大黒書記長、全教から東森書記長が出席しました。全人連は、内田会長(東京都人事委員会委員長)をはじめ、中澤(北海道)、石附(宮城県)、齋藤(神奈川県)、鈴木(横浜市)、佐宗(愛知県)、帯野(大阪府)、平田(広島県)、起塚(高知県)、倉員(福岡県)の各人事委員会代表ほかが出席しました。
 はじめに、米浦議長が、「昨日、人事院勧告が出されたことをふまえ、地方公務員、教職員の賃金・労働条件の改善を要請する」とのべ、「要請書」(別掲)を内田会長に手渡しました。
 若井事務局長が、要請の趣旨をのべつつ、「地方公務員の給与に対する圧力が強まるなか、日頃、労働条件改善に尽力していただいていることに感謝したい。地方自治体の現業職員の公民較差が問題にされたり、教員の人事管理が強権的に強化されるもと、自治体を支える職員が、日本の将来を考えて職務に精励できるように、地方人事委員会勧告にむけてさらなる努力をお願いする」と求めました。

 これに対して、内田会長は、以下のように回答しました。
(内田全人連会長回答)
 ただいまのみなさんからの要請については、確かにうけたまわった。さっそく、全国の人事委員会にお伝えする。
 すでにご承知の通り、昨日8日、国会および内閣に対して、人事院勧告がおこなわれた。本年の官民較差は、ベースアップを実施した事業所の割合が昨年にくらべて増加しているなど、1,352円、率にして0.35%、民間給与が公務員給与を上回るとしている。
 この較差を埋めるため、初任給を中心に若年層に限定した俸給月額の引き上げ、子等に係る扶養手当の500円引き上げが勧告された。
 特別給についても、民間の支給割合と均衡するよう、0.05月引き上げることとしている。
 また、人事院は、行政の多様化、複雑・高度化に対応するとともに、早期退職慣行を是正し在職期間の長期化に対応する観点から、新たに専門スタッフ職俸給表を、来年度から新設するとしている。詳細については、これから人事院の説明を受けるところだ。
 各人事委員会にとって、人事院の勧告は、かならずしも直ちに、これにしたがうべきものではないが、今後の各人事委員会の勧告作業に影響をおよぼすものと考えられる。
 現在、各人事委員会では、秋の勧告にむけて、鋭意、作業をすすめているところだ。今後はみなさんからの要請の趣旨も十分考慮しながら、それぞれの人事委員会が、各自治体の実情をふまえ、主体性をもって対処していくこととなる。
 教員給与については、本年も、各自治体の主体的なとりくみを支援していくため、全人連としてのとりくみをすすめていく。
 公務員の給与を取り巻く環境は、引き続き厳しい状況だが、各人事委員会においては、本年も、中立かつ公正な第三者機関として、その使命を十分に果たしていく所存だ。

以 上


【別掲:全人連への要請書】

2007年8月9日

全国人事委員会連合会
会長  内田 公三 様

公 務 労 組 連 絡 会   
議   長     米 浦  正

日本自治体労働組合総連合    
中央執行委員会委員長 駒場 忠親

全 日 本 教 職 員 組 合 
中央執行委員長   米 浦  正

地方人事委員会の勧告に関する要請書

 貴職の地方公務員の賃金・労働条件の改善・向上に向けたご努力に敬意を表します。
 人事院は、8日、国会と内閣に対して、2001年以来6年ぶりに本俸及び一時金のプラス勧告を行いました。プラスになったとは言え、昨年に引き続き50人以上100人未満に引き下げた調査結果に基づく勧告で、本来であればさらに上積みされたものを切り下げる内容で、賃金切り下げを前提としたきわめて不当なものであります。
 地方自治体では地方交付税等の削減による地方財政危機を口実に1,890団体中1,149団体(60.8%)で、独自カットを行っております。また、地方議会が勧告や労使合意を無視して給与切り下げを提案するなど、給与切り下げの流れが強まり、地方公務員の生活水準は低下をしています。
 さらにこの間の政府「骨太方針」、総務省の「リストラ方針」等により、地方行政の営利企業化、切り捨て・減量化、地方公務員の定数及び人件費の削減が行われてきました。
 私たちは、地方公務員の給与・勤務条件が人事行政や職員の人材確保等とも深く関わるなど地方自治の有り様とも不可分に結びついていること、さらに地域での給与水準において「標準性」を持っており、地方の公務・公共関連労働者の給与等の水準、年金・生活保護をはじめとした社会保障の給付水準、最低賃金など「ナショナルミニマム」のあり方、それらを通じて住民の暮らしに重大な影響を及ぼし、地域経済にも大きな影響を与えるものと考えます。
 これから各地の人事委員会においても本年の勧告にむけた作業にとりかかられるものと考えますが、各地の人事委員会勧告にあたっては、こうした見地から下記事項を十分に尊重いただき、その実現に向けて努力いただくことを強く要請するものです。

1、地方公務員・関連労働者の暮らしを守り、「全体の奉仕者」として職務に専念できるよう各地の労働組合の要求に応え、賃金・労働条件の改善・充実を図ること。


2、07年人事院勧告に鑑み、本俸及び一時金のプラス勧告を行うこと。今年度については、比較企業規模100人以上をもとにするなど積極的な改善を行うこと。


3、人事委員会の勧告と関わりなく行われている「賃金カット」などの労働条件の切り下げに対しては、毅然とした対応を行うこと。


4、独自に「賃金カット」を行っている自治体は、実態賃金との比較で公民較差に基づく賃金改善を行うこと。


5、非常勤職員等非正規職員の賃金及び労働条件の改善を行うよう勧告すること。


6、地方公務員の給与水準問題について、「骨太方針2007」に追随せず、「同一労働・同一賃金」の立場に立ち、地方公務員給与の水準を守り、地域間格差拡大を行わないこと。


7、給料表については、職務による格差の拡大、中高年層の給与の抑制をやめ、生計費原則に立った構造とすること。査定昇給及び勤勉手当の格差拡大の導入は、人事評価制度の未確立の状況を踏まえ、当該労働組合との交渉経過等を尊重し、慎重に対処すること。


8、教員の給与勧告にあたっては、義務教育費国庫負担金の見直しなどの動向に影響されず、地方公務員法および教員人材確保法にもとづき、文科省「教員勤務実態調査」の結果を踏まえた適正な教員給与水準を確保すること。なお、教員モデル給料表を提示するにあたっては、級間格差を拡大せず、1級水準を改善するとともに、2級の水準引下げを絶対におこなわないこと。


9、憲法とILO勧告に基づき公務員労働者の労働基本権を保障するなど民主的公務員制度確立にむけ積極的に政府に働きかけること。
以 上