No.623
2007年6月18日

公務員制度めぐり参議院で参考人質疑
= 天下り規制、能力・実績主義、評価制度に疑問の声 =
 参議院内閣委員会は18日、参考人質疑をおこない、各界の代表から意見を聴取しました。参考人からは、法案で天下りが規制できるのか疑問の声や、能力・実績主義にもとづく人事評価制度への問題点も指摘されました。
 公務労組連絡会で傍聴行動にとりくみ、緊急の提起に応えて国公労連・自治労連などの代表が参加しました。

公務員の労働基本権保障を法案に明記すべき

 参考人として招かれたのは、日本経団連・加藤丈夫労使関係委員長、千葉大学・新藤宗之教授、兵庫県立大学・中野雅至准教授、丸山建藏総評会館理事長の4人で、はじめにそれぞれ約15分にわたって意見をのべました。
 加藤氏は、年功序列人事の見直し、実績重視の評価手法、抜擢・降格人事などは経団連が求めてきたものであり、「能力・実績主義による人事管理は評価できる。成績評価は、とくに賞与に反映すべき」と求めました。また、再就職管理の一元化など「天下り」規制を評価しましたが、「官民人材交流センターは有識者懇談会での議論を見守りたい」とのべました。とりわけ、官民交流については、「日本経団連として官民の垣根を低くするよう求めてきたことからも、今後、いっそうの交流がすすむよう期待したい」とのべ、今回の法案が、財界の要望を全面的に受け入れたものであることを示しました。
 新藤氏は、「政府の法案は、天下り規制のうえで、実効性があるかきわめて疑問だ」と批判したうえで、官民人材交流センター(新人材バンク)は、独立した機関と言いつつも、各府省との協力がはかられる点から、「これまでとは実態は変わらず、再就職にカーテンをかけて隠すようなもの」と指摘しました。また、「公務員の退職予定者だけを対象に新人材バンクをつくることには、国民の賛同は得られない」とし、事前規制を撤廃した法案は何ら実効性を持たず、天下り規制にむけた抜本的な見直しの必要性を主張しました。
 中野氏は、現行の公務員制度の問題点をさまざま指摘したうえで、政府案を「能力・実績主義をはじめ公務員制度の包括的な改革をめざしており、高く評価できる」とのべたうえ、天下りの事前規制の撤廃についても、「公務員にも職業選択の自由がある。事前規制の撤廃に見合った厳しい事後規制があり、法案の内容は優れている。人事評価を人事管理に活用する制度も優れたものだ」などと褒めあげました。
 政府の専門調査会委員をつとめる丸山氏は、「働くものの立場から発言したい」と前置きしたうえ、公務員制度の抜本的な改革の方向、とりわけ、労働基本権問題をふくめ労使関係制度の改革が示されていないことなど法案の問題点や、公務員の中立性・公正性の確保の必要性を指摘しました。また、評価制度が試行段階のもとで新たな人事管理制度を法案に盛り込むことは、「職員の不安を招き、使用者として無責任だ」と批判しました。さらに、労働基本権にかかわって、丸山氏は、ILO勧告にしたがって公務員の労働基本権保障を法案に明記するよう求めました。

「天下り」禁止へ人事院による事前審査の強化こそ必要

 これらの意見表明をうけて、末松信介(自民)、朝日俊弘(民主)、風間昶(公明)、亀井郁夫(国民)の各議員が参考人に質問しました。
 民主党の朝日議員は、「政府は、来年の通常国会に公務員制度改革の基本法を提出するとしているが、今回の法案よりもまずはじめに基本法を出すべきではないか」と意見を求めると、新藤氏は、「公務員制度は、かつては審議会などで議論されてきた。しかし、今回の公務員制度改革は、行革推進事務局など密室で議論されてきたことに問題がある。改革に何が問われているのかを、国会で十分に議論すべき」とのべ、丸山氏は、「法案は部分的であり、まず基本法をきちんと決め、一つ一つやるのが順序だ。天下りと能力・実績主義の2つをまずはじめにやると政府は言うが、この法案では、天下りはなくならないし、透明な制度にもならない」と厳しく指摘しました。
 また、人事評価制度の勤務条件性について朝日議員が質問すると、丸山氏は、「評価制度自体は勤務条件ではないが、その結果を給与に活用すれば明確に勤務条件となる。これらの関係は区分けできないものであり、2つを切り離しては制度が機能しない」と意見表明し、政府が過去の裁判の判例を示して勤務条件ではないことを主張していることに対して、「過去の判例を示すことは、改革の視点からいかがなものか」と批判しました。
 官民交流の必要性についての考えを質した風間議員に対して、日本経団連の加藤氏は、「官民交流こそ必要だ。再就職を事前規制すれば、それが難しくなる」と主張しましたが、新藤氏は、「天下りとそれ以外の再就職は分けて考えるべき。官民の人材交流は必要だが、省庁の権限をバックにして特定の企業に再就職することに最大の問題がある。その点での事前規制は必要だ」とのべ、丸山氏も、「再就職の事前規制を撤廃して大丈夫なのか。官民交流にあたっては、国民の納得できるものにすべきだ」と主張しました。
 最後に質問した亀井議員が、各参考人に法案への要望を求めると、「先送りせず、改革の第一歩として着手を求める」(加藤氏)、「通常国会に提出する基本法への議論へ早く軸足を移すべき」(中野氏)とする意見の一方、「官民人材交流センターなど天下り規制は実効性がともなわない。人事院による事前審査の強化が必要だ」(新藤氏)、「公務員制度の抜本改革こそ必要であり、その際、国際的な労働基準であるILO基準にしたがって労働基本権の整備を求める」(丸山氏)など、法案の不備が重ねて指摘されました。     
以 上