No.615
2007年5月30日

国民無視の自民・公明の暴走を許すな!
= 悪法審議がつづくなか、議面集会・傍聴行動にとりくむ =
 社保庁「解体・民営化」法案の強行採決に続き、30日には、年金記録ミスでの国の責任を放棄する「年金特例法案」が、わずか4時間程度の審議で強行採決されるなど、自民・公明両党の暴走がとまりません。
 こうしたもと、公務労組連絡会は30日、全労連「公務員制度改革」闘争本部などと共同して、昼休みに衆議院議面集会を開き、悪法阻止へのさらなる奮闘を誓い合いました。また、同日には、衆議院内閣委員会で「公務員制度改革」関連法案の審議が終日おこなわれ、傍聴行動にはのべ7名が参加しました。

新人材バンクが天下りの「トンネル機関」になる可能性も

 30日の内閣委員会では、寺田稔・赤澤亮正・橋本岳・中森ふくよ(以上、自民)、田端正広(公明)、鷲尾英一郎・松野頼久・松原仁・川内博史(以上、民主)、吉井英勝(共産)の各議員が質問に立ちました。
 午前中の質問は、民主党提出法案に対する与党から質問が中心で、民主党案が離職後5年間の再就職禁止、早期勧奨退職(肩たたき)の全面禁止を掲げていることについて、自民党の各議員が、官民交流をさまたげ、職業選択の自由を制限するものだと指摘しました。
 提出者の一人である民主党・馬淵議員は、「天下りに国民批判が集中しており、現実として、官製談合など不祥事が連日報道されている。こうした現状を直視しつつ、国民の声に応えたのが民主党案だ。厳しいというが、天下りを自由化する政府法案こそ、国民感覚と隔たりがある」と政府案を批判しました。
 その他、能力・実績主義の導入を附則にかかげる民主党案の考え方や、公務の効率化や肩たたきにかかわってやりとりがありました。
 午後からの野党質問では、主に、官民人材交流センターなど天下り問題を中心にしながら、人事評価制度、採用試験制度など幅広い問題が議論されました。
 民主党の松野議員は、国土交通省所管の(財)先端建設技術センターに国交省の道路局長などが天下りし、年間17億円近い事業が国交省からセンターに委託されている事実を示し、「官民人材交流センター(新人材バンク)ができれば、こうした天下りはなくなるのか?」と渡辺行革担当大臣に質しました。
 渡辺大臣が、「各省からの押しつけ的な再就職は根絶されるが、新人材バンクの運営は、今後、有識者懇談会が検討してルールを作る」などと答弁をしたことから、松野議員は、「予算が道路局長といっしょに付いてくる以上、国交省が押しつけなくとも、技術センターが喜んで迎え入れるだろう。将来、新人材バンクができても、技術センターからの要請にもとづき、バンクが再就職を紹介するというのなら、今までと同じだ」と詰め寄りました。

「有識者懇談会」は国民の代表である国会よりも権威があるのか

 松野議員の質問に対して、渡辺大臣が、「人とカネの両面から解決していく必要がある問題だ。公益法人の改革や委託費、補助金の見直しなどを指示している」などと、質問に正面から答えず、曖昧な答弁に終始したことから、民主党各議員が「答弁になっていない」と委員長席に詰め寄るなどして、一時、議事が紛糾しました。
 その後、渡辺大臣から、「新人材バンクをトンネル機関にはしない」との答弁はあったものの、新人材バンクの体制や運営方針などは何ら決まっておらず、今後、有識者懇談会の議論の過程で、新人材バンクが天下りの隠れ蓑にされる危険性があります。
 これに関連して、民主党の松原議員は、「何でもかんでも有識者懇談会で検討すると言うが、それでは丸投げではないか。国民に責任をもち、国民に選ばれた議員で構成する国会よりも、首相が指名して集めた有識者懇談会のほうが権威があると言うのか。国会の議論はどうやって懇談会に反映させるのか」と、有識者懇談会のあり方を問い質しましたが、渡辺大臣は、「いろいろな角度から検討してもらうための有識者懇談会だ。国会での議論は報告されるし、内閣官房長官が懇談会に入る」との答弁にとどまりました。
 また、松原議員は、評価制度に関して、「正当な評価をおこなうのは難しい。また、公務員を評価するのは国民だ。国民の代表である国会が評価すべきことだ。その点から、課長以上の任用は政治的任用にするなどのやり方が必要だ」と主張しました。
 塩崎内閣官房長官は、「確かに評価制度は難しいが、悲観はしていない。指摘の通り、国民の意識とかけ離れた評価制度はふさわしくない。また、アメリカのような政治的任用も見識の一つだ。政府としては、日本型の公務員制度改革をすすめていきたい。国会でも議論をお願いする」と考え方をのべました。

組合差別・男女差別も懸念される新たな人事評価制度

 最後に質問に立った共産党の吉井議員は、はじめに、国家公務員法が総務省の所管であることなどから、総務大臣の出席や総務委員会との連合審査を河本内閣委員長に求め、理事会で検討するとの扱いになりました。
 吉井議員は、T種試験採用者を、昇任・昇格で特別扱いするキャリア制度こそ、天下りの背景になっていることを指摘しつつ、29日の参考人質疑でもほぼ全員から意見が出された試験区分の見直しとして、T種とU種の一本化を主張しました。
 これに対して、林内閣副大臣は、「能力・実績主義の議論がすすめば、T種やU種の区分の必要があるのかという議論も出てくる。全体像の検討のなかで、聖域のない議論をすすめる」とし、塩崎内閣官房長官も、「キャリア制度が機能していた時期もあったが、新しい時代にどれほどの意味があるのか。T種で採用しても、評価もなく出世していくことが問題だ。有識者懇談会でも議論してもらう」とし、見直しの必要性をのべました。
 吉井議員は、キャリア制度は、戦前の文官高等試験のシステムが運用として残ったものであり、「T種採用職員の中には誤った特権意識を抱く者が出ている」と人事院がその弊害を指摘していることをあげ、抜本的な見直しを求めました。塩崎内閣官房長官は、「認識は同じだ。全般的な公務員制度のあり方を、有識者懇談会で議論を深める」と答えました。
 つづいて吉井議員は、国公労連・全税関組合員への昇格・賃金差別について、所属組合の違いによる大蔵省(当時)の差別人事を最高裁が断罪していることを示し、新たな人事評価制度のもとでも、国公法の「平等取り扱いの原則」が適用されることを政府に確認しました。同時に、V種採用者の4級以上の職員の割合が、男性では5割であるのに女性は2割にとどまっていることなど、男女差別が存在していることも示しました。
 塩崎内閣官房長官は、「国公法にそって、昇任・昇格をおこなうことが基本だ。勤務成績にもとづいて適切に判断する」と答弁しました。
 吉井議員は、「実態として組合差別や男女差別がおこっている。差別はあってはならないことであり、これを放置しているようでは公正な任用はできない。差別が起きないように政府の責任できとんとした措置を求める」と、塩崎内閣官房長官に強く要請しました。

運動が自公政権を追い込んでいることに確信を持とう

 「公務員制度改革」関連法案が審議されるとともに、衆議院厚生労働委員会では「年金特例法案」が、社保庁「解体・民営化」法案と同様に強行採決された30日、昼休みには、衆議院議員面会所で、公務労組連絡会・全労連「公務員制度改革」闘争本部・労働法制中央連絡会の三者共同による集会が開かれ、80人が参加しました。
 主催者を代表して公務労組連絡会の駒場副議長は、「公務員制度改革法案も、社保庁法案も、国民と公務員を分断するという目的は明らかだ。内閣支持率が急落するなど、運動が情勢を動かしていることに確信を持とう」とあいさつしました。
 国会から審議の合間をぬって日本共産党の吉井英勝議員が集会に駆けつけ、「審議をすればするほど法案の問題が明らかになってくる。与党の間にも矛盾がひろがっている。たたかいが自公政権を追い込んでいる。廃案までともにがんばろう」と激励しました。
 また、中央社保協の山田事務局長は、年金の記録もれについて、「あわてて特例法を作ると言うが、5年間だけを埋め合わせすれば済む問題ではない。また、わずか1日だけで採決するなど、いいかげんな国会運営も許されない。社保庁を『改革』しても何も解決しない」と怒りを込めて連帯あいさつしました。
 各団体の決意表明では、国公労連の河村書記次長、自治労連の川俣副委員長とともに、労働法制中央連絡会を代表して、日本婦人団体連合会の伍淑子副会長らから、それぞれ社保庁「解体・民営化」法案廃案への決意、国家公務員法につづいて29日に国会提出された地方公務員法改悪法案の問題点、労働法制の全面改悪をねらう規制改革会議の不当性などがのべられ、すべての悪法阻止へともにたたかう決意を固め合いました。
以 上