No.614
2007年5月29日

衆議院内閣委員会で小田川本部長が意見陳述
= 「労働基本権を棚上げにした法案には反対」と態度表明 =
 衆議院内閣委員会は29日、参考人質疑がおこなわれ、全労連「公務員制度改革」闘争本部の本部長である小田川全労連事務局長が参考人として出席しました。
 小田川氏は、政府法案の数々の問題点を指摘し、労働組合との話し合いも不十分であるうえ、労働基本権問題を棚上げにした法案には反対であると意見表明しました。
 全労連闘争本部で傍聴行動にとりくみ、11名(国公労連6、自治労連1、全労連2、公務労組連絡会事務局2)が参加しました。

能力・実績主義の人事管理は公務の中立・公正性に悪影響

 内閣委員会では、全労連の小田川事務局長とともに、日本経団連・立花宏専務理事、東北公益文科大学大学院・北沢栄教授、元拓殖大学政経学部・田中一昭教授の4人が参考人として出席し、はじめに、各参考人が15分にわたって意見陳述しました。
 立花氏は、財界の立場から、「行政改革」の総仕上げと位置づけられる公務員制度「改革」は不可欠であり、「その実現がなければ、画竜点睛を欠くこととなる」と指摘し、「『新人材バンク』の設置を財界として歓迎する」とのべ、「改革」の促進を求めました。
 北沢氏は、政府法案は、早期勧奨退職(肩たたき)を温存するなど天下り自由化となる危険が大きいと懸念を表明し、その一方、民主党提出法案では、離職後5年間の再就職の規制や、天下り先の規制を独立行政法人などへ拡大していることなど、「天下り禁止を徹底した内容であり、政府案よりはるかに厳しい」と評価しました。
 田中氏は、「民主党案と政府案とは同じ方向をむいている」と指摘しつつ、「ただし、肩たたきは全面禁止しても問題の解決にはならない。むしろ、官民の垣根を低くすることにこそ合理性がある」と見解をのべました。
 小田川事務局長は、2001年から始まった「公務員制度改革」の議論のなかで、全労連が一貫して公務員の労働基本権の回復を求めてきたことなどを紹介しつつ、「労働基本権問題を棚上げにしている政府法案には反対する」と明確にのべました。
 その上で、法案の問題点にかかわって、(1)能力・実績主義にもとづく人事管理は、公務員の中立の維持、全体の奉仕者としての公務員の公正さに悪影響を与え、さらに、公務労働の能力をはかる基準づくりは困難であり、「ノルマ主義」による労働条件の悪化も懸念される、(2)所掌事務にかかわる人事院と内閣との役割の変更も、公務員の中立性や専門性に悪影響を与える、(3)労働基本権回復を棚上げにしたことは許されず、また、法案が掲げる人事院の「意見の申出」などは、労働基本権制約の代償措置にあたらず、団体交渉権の整備などが最低限必要であると主張しました。
 最後に、小田川事務局長は、労働組合との話し合いが不十分なまま法案提出が強行されたことなどを示しつつ、国会での法案の慎重審議を求めました。

「新人材バンク」では談合はなくならない

 これらの意見陳述に対して、赤澤亮正(自民)、佐々木隆博(民主)、田端正広(公明)、吉井英勝(共産)の各議員が質問に立ちました。
 共産党の吉井議員は、「天皇の官吏から脱却し、全体の奉仕者として出発するため、戦後の国公法制定時には公務員にも労働基本権が保障されていた。ILOは、労働基本権付与を繰り返し求めており、また、政府の専門調査会も、そうした方向での改革を求めている」とのべ、労働基本権に対する意見を各参考人に求めました。
 これに対して、「交渉権、労働協約妥結権は、認めるのがスジだ」(北沢氏)、「労働基本権を付与する方向で、基本的には前向きに議論をすすめるべき」(田中氏)とのべ、また、小田川事務局長は、「公務員の労働基本権を回復すべき。その際、国際的な基準、他国の権利水準を参考にして、全労連も示してきた個別的な内容にもかかわって議論を深めるべき」と主張しました。
 さらに、吉井議員は、「新人材バンク」設置などを盛り込んだ政府案について、「これで本当に天下り規制は可能か?」と各参考人に見解を質しました。
 参考人からは、「かなりの部分は禁止できる。民間企業の対応が変わる」(立花氏)、「各省の権限を背景にした押しつけ的な人事に問題があった。新人材バンクは中立の機関であり、各省の権限がおよばない」(田中氏)との意見が示される一方、北沢氏は、「政府案では、根絶するのは無理だ。むしろ天下り解禁のおそれもある」とのべ、小田川事務局長は、「新人材バンクを通せば、すぐにでも再就職(天下り)が可能だ。談合がなくなるどころか、むしろそうした動きが強まる」と明快に回答しました。

勤務条件を政令で定めることは憲法上でも問題あり
〜内閣委員会(5/25)での審議から〜

 衆議院内閣委員会は25日、午前・午後にわたって、「公務員制度改革」関連法案にかかわる審議をおこないました。午後からは、野党委員が質問に立ち、共産党の吉井英勝議員は、早期勧奨退職(肩たたき)や人事評価制度の勤務条件性、それとも関係する労働基本権のあり方について政府提出法案の問題点を追及しました。
 これまでの法案審議で、新たな法律のもとではおのずと早期退職勧奨はなくなっていくと、渡辺行革担当大臣が再三にわたって答弁してきたことをとりあげ、吉井議員は、「圧倒的な職員は定年まで勤め上げたいと思っている。しかし、今後、公務員人件費削減が強まれば、定員・ポストともに減ることとなり、肩たたきはいっそう厳しくなる」と指摘し、「ノンキャリアもふくめて、事実上、退職を強要するような肩たたきがまかり通っている。退職強要ならば、国公法違反だ。政府みずから法律違反を犯すのか」とせまりました。
 渡辺大臣は、「あくまで退職を説得する行為であり、本人にはそれにしたがう義務はなく、国公法違反などではない。退職が必要な場合も出てくるが、そのために官民人材交流センターで再就職を支援する」とのべ、新たな法律ができれば、天下りや肩たたきが「自然になくなる」とする、根拠のない主張を繰り返しました。
 吉井議員は、官民人材交流センター(新人材バンク)について、塩崎内閣官房長官に対して、新人材バンクを、各省からのあっせんを受けない中立の機関としながらも、法案では、各省の人事当局の協力を得ることができるとしていることについて問いただしました。
 「再就職の対象職員の経歴など人的な情報を把握するため、出身の省庁からの協力が必要となる。各省の再就職あっせんに協力するのではない。あくまで情報収集だ」との答弁に対して、吉井議員は、財務事務次官が国民金融公庫総裁になったり、文部科学大臣が放送大学の学長になるなど「固定ポスト」が存在することを示し、「新人材バンクは、天下りあっせんのトンネル機関だ。それをすすめる法案は、早々に成立させるべきではない。出直して議論せよ」と強く批判しました。
 また、吉井議員は、人事評価制度は、任用・給与などを決定する以上、明確に勤務条件であり、2002年の国会で人事院の中島総裁(当時)も、「使用者の立場に立つ内閣が勤務条件に関する事項を政令で定めることは、憲法上の疑義が生じる」とのべていることをあげ、評価制度を政令で決めるとする法案は、中島総裁の答弁とも矛盾すると指摘しました。
 渡辺大臣は、「人事評価制度は、勤務条件に該当しない。ただし、制度設計にあたっては職員団体(労働組合)とも十分話し合っていく」とのべ、林内閣副大臣も、「勤務条件にはあたらない。人事院の意見は聞くが、人事評価制度は政府が定める」と強弁しました。
 吉井議員は、「新たな人事評価制度をつくり、その権限を使用者である内閣総理大臣が持つならば、新たな労使間のシステムが必要だ。勤務条件にかかわる問題は、一方的に決めるべきではない」と指摘し、労働基本権のあり方にかわかる検討を強く求めました。

社保庁「改革」法案強行採決に抗議して国公労連が議面集会(5/25)

 衆議院厚生労働委員会では25日夕、社保庁「改革」法案が自民・公明両党により強行採決されました。この事態をうけ、国公労連は、ただちに与党の暴挙への抗議集会を衆議院議員面会所で開催しました。
 福田委員長による怒りを込めた主催者あいさつの後、日本共産党・高橋千鶴子衆議院議員から強行採決の生々しい報告を受けました。続いて、全労連と年金者組合による激励あいさつ、そして全厚生・杉下委員長が当該組合を代表して決意表明しました。集会の最後には河村書記次長による行動提起、そして山瀬副委員長による力強い閉会あいさつを受け、次なるたたかいにむけた決意を固めあいました。(国公労連速報から転載)
以 上