No.596
2006年11月16日
「民間との較差を埋めるべき」と見解表明
= 退職給付は民間より20万円も低いとの人事院の調査結果 =
  政府の要請をうけて、民間企業の退職給付について調査していた人事院は16日、官房長官に対して、民間の退職給付の水準が国家公務員よりも上回っており、「民間との較差を埋める措置が必要」との見解を表明しました。
 人事院の調査では、民間の退職給付の総額は、国家公務員の給付総額よりも、20万円以上も高くなっており、2010年に共済年金の職域部分が廃止されれば、約240万円の較差が生まれるとしています。

新たな年金の仕組みづくりの必要性にも言及

 民間企業の退職給付の調査は、「企業規模50人以上」の6,232社を対象にして、今年7月から9月実施したもので、このうち3,850社(61.8%)から回答があったとしています。
 その結果は、民間での企業年金(使用者拠出分)と退職一時金を合わせた退職給付総額は、2980万2千円となっています。一方、国家公務員の退職手当と共済年金の職域部分の総額は、2960万1千円となっており、20万1千円(0.68%)民間が上回っていることが明らかとなりました。
 将来的には、年金制度の改定で2010年に共済年金の職域部分が廃止されるので、官民較差は241万6千円(8.82%)にもひろがります(別図参照)。
 この調査結果を受けて、人事院は、政府に対して、以下のような見解を示しました。
 (1) 官民均衡の観点からは、民間との較差を埋める措置が必要
 (2) 公的年金とは切り離された、公務の人事管理上の必要性も踏まえた新たな年金の仕組みを設けることが適当
 (3) 民間の平均的水準との比較に加え、公務と競合・類似する企業の退職給付制度の実態や、公務の人事管理上の必要性(1. 厳正な服務規律の存在、2.長期勤続の確保の必要、3.主要国の公務員年金の水準)に鑑み、退職給付制度の充実の必要はないかとの視点からも十分検討することが必要
 (4) 制度設計に当たっては、1.年金と一時金とのあるべき比率(現在は一時金が大半)、2.主要国の例を踏まえ、最終給与に対する年金の支給割合の引上げ、3.年金と再就職規制や再任用制度との関係等についても検討することが必要

年金制度の拡充、「官民較差」是正を求めるたたかいを

 年金制度の改定にむけて退職手当の見直しが検討され、政府は、今年4月に人事院に調査を依頼しました。人事院が、従来の「企業規模100人以上」から「50人以上」に引き下げて調査を開始するもと、公務労組連絡会では、退職手当の引き下げを許さないため、人事院あての署名行動にとりくんできました。
 また、10月27日の第2次中央行動では、人事院前の要求行動や、地方代表による人事院への要請・署名提出行動にとりくみ、人事院へのたたかいを強めてきました。
 こうしたもとで、人事院は、調査結果にもとづいて、「官民較差」の是正を求めるとともに、公務という仕事の重要性を踏まえた新たな年金制度の仕組みを設けるべきとの見解を示したものです。
 今回の調査結果は、この間、一部の高級官僚への法外な退職手当が国民批判を招き、一般職員をふくめた退職手当の引き下げが強行されてきたもとで、実際には、公務員の退職給付額は、民間よりも下回っていたことを明確に示しています。
 人事院の見解表明を受けて、使用者である政府は、これに対応した具体的な措置の検討が迫られます。退職給付の「官民較差」が明らかになったもとで、今後、政府に対して、その是正と年金制度の拡充を求めるたたかいが必要となっています。
以 上