No.595
2006年11月9日
国家公務員一般職給与法が10日に成立へ
= 参議院総務委員会で法案が全会一致で可決 =
 国家公務員一般職の給与法改正法案は、参議院の総務委員会で7日に趣旨説明がおこなわれ、9日の委員会での質疑のあと採決され、全会一致で可決されました。
 法案は、明日10日の参議院本会議に上程され、可決・成立する見通しです。
 公務労組連絡会は、衆議院に続いて、参議院総務委員会の傍聴行動を配置し、7名(国公労連4、自治労連1、特殊法人労連1、事務局1)が参加し、法案審議を監視しました。

「閣議決定は尊重すべき」(谷総裁)と政府言いなりの人事院

 9日午前中に開かれた参議院総務委員会では、高嶋良充(民主)、遠山清彦(公明)、吉川春子(共産)、又市征治(社民)の各議員が質問に立ちました。
 衆議院段階の審議から焦点となってきた「官民比較方法の見直し」にかかわって、民主党の高嶋議員は、「比較対象企業規模の『50人以上』への引き下げは、労働組合の理解を得たものとは言えない。人事院は、労働基本権制約の代償機関として、労働組合の理解を得るために努力をしたのか」とただすと、谷人事院総裁は、「研究会での議論と並行して、職員団体(労働組合)との意見交換を続けてきた。職員団体との会見(交渉)は、本院と地方事務局をあわせて150回おこなっている」などと答弁し、話し合いを重ねてきたかのようにのべましたが、高嶋議員は、「人事院は、組合の要求を聞きおくだけで、納得にむけた努力をしたとは思えない」と批判しました。
 さらに、「官民比較方法の見直しは、誰が見ても、総人件費削減という政府方針に人事院が屈服したものであることは明らかだ。使用者(政府)の意見だけを聞いて、労働組合の意見を聞かないのならば、代償措置としての人事院の役割を損ねることになる」と指摘しましたが、谷総裁は、「勧告にあたっては、あらゆる方面からの意見を聞く必要がある。政府からの意見を聞くのも当然だ」などと開き直りました。
 このこととかかわって、共産党の吉川議員は、「7月の『骨太の方針2006』の閣議決定直後に、人事院の研究会が比較対象企業規模の引き下げを決めている。政府方針に忠実にしたがうならば、人事院の独立性・中立性はどこにいったのか?」と追及すると、谷総裁は「政府の閣議決定は、それなりに尊重すべきだ」と答弁、これに対して、吉川議員は、「驚くべき答弁だ。真に中立機関であるならば、閣議決定がどうあろうが関係ないはずだ。それを、『尊重』などと言うのは、とんでもないことだ」と厳しく批判しました。

「50人以上」に引き下げた合理的な根拠を示せず

 吉川議員は、従来通りの「100人以上」で比較すれば、月例給で1.12%、一時金で0.05月の改善があったことを人事院に明らかにさせたうえで、「実質的に年間で9万円ものマイナスとなる。昨年の給与構造見直しによる賃下げに加えて、公務員の生活に大打撃となる。一方では、国で270億円、地方で2700億円の歳出削減になることが伝えらており、歳出を減らすために公務員賃金を実質的に引き下げたことは明らかだ」と政府に迫りました。
 これに対して、菅総務大臣は、「民間賃金の実態を、より精緻に公務員給与に反映させた結果だ」とのべつつも、「簡素で効率的な政府をつくるべきであり、財政健全化のためには、総人件費削減は必要だ」などと答弁し、「構造改革」の推進を強調しました。
 また、吉川議員は、「5年前の国会質疑で、当時の中島人事院総裁は、比較対象企業規模を引き下げると官民比較として耐えられず、『100人以上』が適当であると答弁している。その立場が、わずか5年で変わってしまうのか。『50人以上』に変更した合理的な根拠を示せ」と質しましたが、谷総裁は、「同種同等の比較という原則のもとで、広く民間実態を調査して、公務員給与に反映させるためだ」と、合理性のない答弁を繰り返しました。
 さらに政府に対しては、「閣議決定によって、人事院勧告への干渉をするべきではない。やってはならないことだと思わないか?」と見解を求めると、菅総務大臣は、「中立の立場で人事院が検討してきた。問題はない」と強弁しました。
 最後に吉川議員は、「人事院勧告は、地方公務員をはじめ、民間賃金にも影響する。実質的な賃下げは、労働者全体の生活を悪化させる。人事院は、政府に追随するのではなく、中立の立場で勧告を出せ」と強く求めました。
 社民党の又市議員は、「民間大手企業は、史上空前の利益を上げている。そのなかで、公務員にも約4千円の賃上げがあったものを、比較方法の見直しでゼロにしてしまった。人事院が政府の圧力に屈したと批判されても当然だ。政治的圧力による勧告だ」と指摘しました。菅総務大臣は、「勧告は、国の財政事情などを考慮したものではない。民間賃金を精確に調査し、反映させた結果だ」と、人事院と同じ主張に終始しました。

全会派共同による附帯決議を全会一致で採択

 2時間たらずの質疑の後、法案の採決がおこなわれ、一般職国家公務員の給与法改正法案は、全会一致で可決されました。
 また、全会派の共同提案による別記の附帯決議が、全会一致で採択されました。
 給与法案は、10日の本会議に上程され、可決・成立する見通しです。

○一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議

 政府及び人事院は、本法施行にあたり、次の事項に配慮すべきである。
1、人事院は、中立・公正な第三者機関として、官民給与の精確な比較等により、公務員給与の適正な水準の維持・確保に努めること。
2、人事院は、俸給の特別調整額の定額化について、民間企業における役付手当の実態などを踏まえ、管理職員の職務・職責が的確に反映されたものとなるよう努めること。
3、行政の多様化、複雑・高度化に対応するため、専門スタッフ職俸給表の新設については、各府省における複線型人事管理の取り組み状況等をふまえ、具体化をはかるよう努めること。
4、政府は、育児のための短時間勤務制度及び自己啓発等の休業制度について、人事院の意見の申出にもとづき、関係法案をすみやかに提出するよう努めること。
5、公務員制度改革を検討するにあたっては、労働基本権の在り方も含め、職員団体等の意見を十分聴取し、理解を得るよう最大限努力すること。(以上)
以 上