No.586
2006年8月9日
「100人以上」の比較による給与改善を求める
= 06勧告の取り扱いをめぐって総務省と交渉、財務省に要請 =
 不当な「ベアゼロ勧告」が強行された翌日の9日、公務労組連絡会は、ただちに使用者・政府に要求書を提出し、「企業規模100人以上」の官民比較にもとづく賃金改定などを求めて総務省と交渉しました。
 また、財務省にも同趣旨の要求にもとづき、独立行政法人職員などもふくめた公務労働者の賃金改善を申し入れました。

「勧告尊重」の従来回答は断じて認められない

 総務省との交渉には、公務労組連絡会から、石元議長を先頭に、若井事務局長、黒田事務局次長、熊谷・蟹沢・山アの各幹事が出席、総務省側は人事・恩給局総務課の酒田総括課長補佐、相米課長補佐ほかが対応しました。
 はじめに、石元議長は、別掲の要求書を提出したうえ、「勧告前にも総務省とは賃金などの改善を求めて交渉してきたところだが、結果的には、比較対象企業規模の引き下げが強行され、ベアゼロの勧告となった。勧告をどう扱うのかは、政府の責任となる。公務労組連絡会の要求をふまえ、使用者として、誠意ある検討を求める」とのべました。
 若井事務局長は、各要求項目の趣旨を説明した上で、「今年の勧告は、これまでの配分の見直しにとどまらず、比較方法見直しで人件費の総額原資そのものを引き下げた。まさに勧告制度を変質させたものだ。その点から、総務省が『勧告尊重』とする従来の立場をとりつづけるのなら、政府の姿勢も変質したことになる。公務労組連絡会として、勧告通りの実施ではなく、『100人以上』の官民比較にもとづく給与改善を求める」として、要求の実現をせまりました。
 酒田総括課長補佐は、「昨日、人事院勧告を政府として受け取ったところだ。今後、給与関係閣僚会議の開催をお願いし、その取り扱いについて、すみやかに検討を開始したい。人事院勧告制度は、労働基本権制約の代償措置としての根幹をなすものであり、政府としてこれを尊重することが基本姿勢だ。国の財政状況や、公務員給与を取り巻く環境は厳しいが、この基本姿勢にもとづき、国政全般との関係を考慮しつつ、検討をすすめる。その過程においては、みなさんとも十分に話し合いをしていきたい」と回答しました。
 これに対して、若井事務局長は、「回答になっていない。『勧告尊重』ならば、総務省も変質したと同じだと、たった今話したばかりだ」と追及しましたが、酒田総括課長補佐は、「政府としては、人事院に対して、比較方法見直しを要請してきたところであり、それをふまえた勧告が人事院から出されたと考えている。したがって、政府として、この勧告の取り扱いを検討していきたい」とのべました。
 若井事務局長は、「それならば、政府は賃下げを人事院に要請したのか。『50人以上』に比較規模を引き下げることは、賃下げと同じだ。きわめて意図的であり、しかも、労働組合との合意形成がなされておらず、一方的で強権的だ。中身も、やり方についても不当なものであり、その勧告を尊重するのなら、職員が安んじて職務に精励できるようにする使用者としての責任を放棄するものだ」と厳しく指摘しました。
 酒田総括課長補佐は、「賃下げを求めたわけではない。あくまでも民間賃金の適正反映を人事院に求めたものだ。その結果として官民較差が下がることとなった」などとする回答を繰り返しました。
 若井事務局長は、「総務省の主張は詭弁であり、納得できる回答がなかった。使用者の姿勢で、職員のやる気も変わってくる。総務省は、使用者として、職員に意欲と激励を与える回答を示せ」と求め、最後に、石元議長は、「今日は、初めての交渉であり、勧告の取り扱いについて、引き続き交渉をしていきたい。その際は、誠意を持った回答を求める」とのべて交渉を閉じました。

「骨太の方針」に沿った財政再建計画に固執(財務省要請)

 財務省への要請には、公務労組連絡会から、石元議長を先頭に、若井事務局長、黒田事務局次長、熊谷・蟹沢・山アの各幹事が出席、財務省側は主計局共済課の北村課長、主計局の中川主計官ほかが対応しました。
 石元議長は、昨日の勧告が、きわめて不満な内容であり、財政をあずかる財務省として、公務員の賃金・労働条件の改善にむけた努力を求めました。また、若井事務局長は、「人事院みずからが総額人件費を引き下げた勧告であり、マスコミではさっそく、『270億円の財政縮減効果』(8/9、「読売」社説)などと取り上げられている。しかし、公務員給与の社会的影響力や、優秀な人材確保を第一に考えるべきであり、財政縮減だけではダメだ。給与関係閣僚会議の一員として、財務大臣に対して、要求をふまえた検討を要請する」と求めました。
 北村課長は、「人事院勧告制度を尊重するのが政府としての基本姿勢だ。比較方法見直しも、民間の給与実態をより正確に反映させたものと受けとめる。財務省としては、『骨太の方針』に示された2011年度の基礎的財政収支の黒字化をめざして、公務員総人件費も、厳しい見直しが不可欠であると認識している。加えて、納税者たる国民の理解を得られる対応が必要だ。また、独立行政法人の給与についても、基本的には労使交渉で決定されるべきだが、社会的な理解が得られる内容であるべき」などと回答しました。
 文部科学省担当の中川主計官は、義務教育国庫負担金にかかわって、「教育予算は、現在においても未来にむけても重要だ。ただし、教育の質の問題を考えるべきであり、教育サービスを供給する教員への支援は、サービスを受ける側の満足度をふまえて見直すべき点は見直すべきと考える。子どもの数が減っているなかで、1人の児童・生徒あたりの先生の数は増えている。地方公務員をふくめた人件費削減の流れのなかで、人材確保法をふくめて見直すべきだ。人確法のあり方は今年度中に結論が出される。引き続き、文部科学省と詰めていきたい」と回答しました。
 若井事務局長は、「残業続きで定時に帰れない職場も多い。それで賃金が下げられて、仕事に対する誇りが本当に生まれるのか。また、財政赤字の原因は人件費なのか?公務員に対するしわ寄せはやめるべきだ。日本の100年先を見て、総人件費を減らした場合のプラスの効果とマイナスの効果を考えるべきだ。公務職場に優秀な人材を確保することが重要であり、財政事情だけから考えれば、道をあやまる」と指摘し、最後に、石元議長が「義務教育の国庫負担金にかかわっては、財政事情だけではなく、教育がどうあるべきなのかという観点からの議論が必要だ。今日の申し入れもふまえて、誠実な検討を要請する」とかさねて申し入れました。


(別添:総務省への要求書)

内閣総理大臣  小泉純一郎 殿
総務大臣    竹中 平蔵 殿

公務員賃金等に関する要求書

 人事院は8日、国会と内閣に対して、50人以上100人未満に引き下げた調査結果によって本俸及び一時金の据え置きなどを内容とする勧告を行ないました。
一方、従来通りの100人以上の調査結果では本俸及び一時金ともプラスとしており、賃金切り下げを前提としたきわめて不当な勧告であり、とうてい容認できるものではありません。
 労働基本権を剥奪されているもとで、公務員が国民全体の奉仕者として安んじて職務に精励できる条件を整備すべき人事院が、政府の意向に沿うことは基本的役割を放棄するに等しいものです。
 勧告は、公務労組連絡会などの反対を押し切って100人未満の企業まで拡大した結果であり、さらに公務労働者の生活改善ともに、公務員賃金の社会的影響力もふまえて、最低賃金の引き上げ、賃上げによる地域経済の活性化を求めてきた公務労組連絡会の要求に照らせば、きわめて不当かつ不満なものです。
この間の理不尽な公務員バッシングの否定的影響は公務員の志望者数にも現れ、公務員の質の低下が懸念されるまでになっています。
 今後、給与関係閣僚会議などを通して、政府として人事院勧告の取り扱いが議論される段階をむかえて、あらためて、人事院勧告制度が730万公務関連労働者をはじめ多くの民間労働者の賃金、とりわけ地方に勤務する民間労働者の賃金にも影響を与えることを重視し、国民生活改善・地域経済の活性化という積極的な立場での検討が、政府には求められています。
 こうした観点から、公務労組連絡会として、下記要求をとりまとめました。貴職の誠意ある対応を強く求めるものです。

1、公務関連労働者をはじめ多くの労働者・国民の生活に影響する公務員賃金の改善を行うこと。06年については、比較企業規模100人以上とする官民比較方法をもとに改定すること。
2、勧告の取り扱いをはじめ公務員労働者の賃金・労働条件は、労使対等の交渉にもとづき決定すること。
3、地方自治体、特殊法人及び独立行政法人の賃金決定に不当な介入・干渉をおこなわないこと。
4、労働基本権回復などILO勧告に沿った民主的公務員制度確立に向け、積極的な対応を図ること。
以 上