No.581
2006年7月24日
勧告を前に全労連が人事院に申し入れ
= 政治の圧力に屈服するな、「官民比較方法の見直し」をやめよ =
 公務労組連絡会、全労連、国民春闘共闘が共同した「7・25中央行動」を次の日にひかえた24日、全労連は、公務員給与改善にかかわって人事院に申し入れをしました。
 申し入れでは、@労働基本権制約の代償措置であり、かつ、公正・中立の第三者機関である人事院の役割発揮と毅然とした姿勢の堅持、A官民比較方法の「見直し」については、当該の労働組合との協議を十分尽くすことなどを求めました。

中小企業の厳しい実態を公務に押しつけるな

 人事院への申し入れには、全労連から岩田幸雄事務局次長、伊藤圭一調査政策局次長、中島康浩賃金対策部長が出席し、人事院は、事務総局の石川善朗総務課長が対応しました。
 はじめに、岩田事務局次長が「申入書」(別掲)を手渡しながら、要請事項の趣旨を説明し、「比較企業規模の見直しは、『先に公務員の賃下げありき』ではないのか」「経済財政諮問会議など政治の圧力に屈服しているのではないか」とただし、当該労組との十分な話し合いと真摯な対応を要請しました。
 また、伊藤局次長は、官民比較方式「見直し」の問題点について、@経済財政諮問会議の提案は、財界代表とその代弁者である学識者の意見であって、人事院がこれに拘束される必要はない、A人事院の研究会の報告書が示す「民間準拠の社会的コンセンサス」について、企業規模別格差の大きい賃金構造のもとで、小規模企業の賃金を反映させることは、賃下げを意味することに等しく、民間労働者も反対している。したがって、「社会的コンセンサス」を得ることにはならない、B小規模企業では中途採用者で勤続が短い人が多く、新卒者が主流の公務との比較はなじまない、C労基法では、100人未満事業所の賃金相場が不安定なことから、休業補償について、「毎勤統計における所属産業の平均額」としていることなどを指摘して、「企業規模50人以上」への見直しをやめるよう要請しました。
 中島部長は、中小企業の特徴について、小規模になるにつれ、経営基盤が脆弱で資金繰りが厳しく、また、下請け比率が高く不公正取引が多いことや、パート比率を高めて人件費を抑制したり、ワンマン経営が多く、労働組合組織率が低いことなど具体的にあげて、これらと公務労働とを比較することは適切ではないと主張しました。
 石川総務課長は、熱心にメモを取りつつ、「勧告にむけた作業が各部局ですすめられており、具体的な回答は控えたい」としたうえで、「労働組合とも交渉中であり、みなさんの要望については、関係の部局へ伝えたい。人事院としては、公正・中立の立場でやっていく」とのべました。                          

以 上


2006年7月24日

人事院総裁 谷 公士 殿

06年給与勧告にかかわる申し入れ

全国労働組合総連合議長 熊谷金道

 日頃から、民主的・効率的な公務運営に資する人事行政の確立にご尽力いただいていますことに、心からの敬意を表します。
 さて、貴院は、本年給与勧告のための民間企業賃金実態調査内容について、官民比較企業規模のひき下げ等を可能とする変更をおこなっています。この官民賃金比較方法の「見直し」が、近年の公務員総人件費削減を進める政府の施策と関連していることは、この間の経緯からして明らかです。
 ところで、政府は、貴院が給与勧告に向けた作業を進めている最中の7月7日、2011年度に基礎的財政収支を黒字化することを「目標」とし、社会保障費などの削減・抑制と大衆増税の組み合わせを意味する「歳出・歳入一体改革」を中心にした「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006(骨太の方針2006)」を閣議決定しました。その内容は、格差の拡大や国民生活の安心・安全の後退との関連が強く指摘されている「構造改革」の継続・強化に他なりません。
 その「骨太の方針2006」では、公務員総人件費の削減を歳出改革の重点項目とし、国家公務員給与にかかわって、「人事院において比較対象企業規模を見直すことを要請する(100人以上→50人以上)」としています。このことは、地方公務員給与にかかわって、比較企業規模見直しなど7点にわたって給与の見直し・削減に言及していることとともに、公務の労使関係への政府の直接介入であり、公務員労働者の労働基本権とかかわって、見過ごすことのできない暴挙です。
 このような状況の下で、貴院が比較企業規模などの官民比較方法「見直し」を進めるならば、「要請」という名の政府の圧力に屈し、労働基本権剥奪の代償機関としての存在に重大な懸念が生ずることになります。
 比較企業規模のあり方が、公務員給与の社会的規範性や、歴史的な経緯を持つものであることからしても、その変更に当たっては、労働組合のナショナルセンターも含めた社会的な論議と合意が不可欠です。また、公務員給与に関わっては、近年、様々な論議がおこなわれていますが、財政事情のみを優先することなく、公務員の社会的な役割や、国民の公務員への要請など、多面的な論議の上に、適正な水準・内容についての合意形成の努力が必要です。これらの点でも、貴院の役割は決して小さくないと考えます。
 以上のことから、下記事項について申し入れますので、実現に向けた誠意あるある対応を要請します。

 労働基本権制約の代償措置であり、かつ、公正・中立の第三者機関である貴院の役割発揮と毅然とした姿勢の堅持を強く求めます。

 官民比較方法の「見直し」については、当該の労働組合との協議を十分尽くし、一方的に結論づけないよう求めます。                     
以 上