No.576
2006年7月12日
結論ありきの「比較方法見直し」は中止を
= 賃金改善など夏季重点要求で人事院と交渉 =
 公務労組連絡会は12日、夏季重点要求にかかわって、人事院と交渉しました。
 交渉では、民間にも影響をおよぼす公務員賃金の改善を強く要求し、とりわけ、官民給与比較方法の見直しをめぐっては、比較企業規模を引き下げれば賃下げが避けられないもとで、見直しをおこなわないよう重ねて求めました。

勧告作業は例年どおりのペースですすめる

 人事院との交渉には、公務労組連絡会からは、石元議長を先頭に、若井事務局長、黒田事務局次長、柴田・植西・山ア・池田の各幹事が出席、人事院側は、給与局給与第1課の幸課長補佐、職員福祉局職員福祉課の植村課長補佐が対応しました。
 はじめに、石元議長は、「現在、人事院では、官民比較方法の見直しの検討がすすんでいるが、一方で、今月7日には、公務員総人件費削減を盛り込んだ『骨太の方針』が閣議決定されている。そうしたもとで、第三者機関である人事院として、公務労働者の労働条件改善に目をむけた努力がますます求められる状況となっている」とのべたうえ、要求に対する現時点での回答を求めました。
 幸課長補佐は、賃金問題にかかわって、以下のように回答しました。
● 春闘結果を見ると、大手企業など一部でベアが復活したが、全体としては、若干の上昇にとどまっている。人事院として、全国1万2千の事業所の給与調査を終え、現在、点検、整理、集計の作業をしているところだ。例年どおりのペースですすんでいる。
● 一時金については、民間のボーナスは、昨年の冬、今年の夏ともにプラスとなっている。民間ではボーナスが7月に支給されるところもあり、勧告ギリギリまで作業をつづける。
 給与・一時金ともに、例年同様に、正確な調査で官民比較をおこなったうえ、諸情勢や国民の理解などをふまえて、職員団体との話し合いのうえで勧告を出す。
● 給与構造の見直しについては、昨年の勧告で報告したとおり、広域異動手当の新設、俸給の特別調整額の定額化にかかわる勧告にむけて準備をすすめている。今後、具体案を示して、労働組合のみなさんの意見を聞きながら検討をすすめる。
● 官民給与比較方法の見直しでは、現在まで、「官民給与の比較方法の在り方に関する研究会」が8回、「給与懇話会」が7回開かれて議論されている。課題も大きく、まだ結果がまとまっていない。人事院としては、研究会などの議論状況を見ながら、企業規模にとどまらず全般的な見直しにむけて検討している。今後、研究会の報告や、労働組合のみなさんからの意見をふまえて、人事院として最終的に判断する。

 また、勤務時間・休暇制度など労働条件では、植村課長補佐が回答しました。
● 超過勤務の解消は、政府全体でとりくむべき重要課題であり、人事院として厳正な勤務時間管理への具体的方策をすすめている。なお、育児のための短時間勤務制度の導入にむけて、この夏には制度の骨格を示せるよう作業しており、近日中には「第2次案」を示したい。
● 育児休暇制度は、男性の休暇取得促進にむけて、昨年、指針を出すとともに、パンフレットなども作成してきた。引き続き、取得促進へとりくんでいきたい。
● 非常勤職員の労働条件改善では、常勤職員との同等は困難だが、民間の状況をふまえて、人事院として適切に対処していきたい。
● 女性職員の登用については、人事院として指針を策定し、各省でも平成22年までの登用拡大計画を策定するなどして登用拡大に務めている。
● メンタルヘルスにかかわって、自殺者増加などのもとで、人事院として一昨年、職員の心の健康づくりにむけた指針を各省に出してきた。講習会や研修会なども開催しつつ、専門の医師も確保しながら、各省のとりくみを支援していく。
● 再任用制度は、雇用継続にむけた民間企業の動向に注視しつつ、必要な対応をおこなっていきたい。

「全般的に比較方法を見直す」との回答を繰り返す

 これに対して、若井事務局長は、「民間賃金動向は、指摘されたように決して良いとは言えず、3月の毎月勤労統計調査ではマイナスとなっている。そのうえに、『100人未満』の調査結果を入れれば、さらに引き下がることとなり、また、一時金は確実にマイナスとなる。そうしたなか、職場では、人事院に対する不安や不満がうずまいている」として、見直しの中止を求めました。
 さらに、交渉参加者からは、「比較方法見直しの影響は、国家公務員にとどまらない。国が見直しをすれば、自治体では、さらに賃下げと格差拡大に追い打ちがかけられる。給与構造の見直しがおこなわれた直後であり、比較方法見直しは中止すべきだ」「教育の職場では、病気になっても勤務に出なければならない実態だ。そのうえに、賃金がさらに下がるのではないかという不安でいっぱいだ。給与切り下げの結論が先にありきで人事院は作業しているのではないか」「日赤など民間病院では、人事院勧告にしたがって給与が決定され、賃金が引き下げられている。しかし、人事院は、そうした民間病院にも給与調査に入っている。これでは、賃下げの悪循環がすすむだけだ」などの声があがり、賃金改善をせまりました。
 幸課長補佐は、「比較方法見直しは、研究会を立ち上げて議論をすすめてきたが、なかなか結論が出せない状況だ。そのなかで、先日、人事院としての検討項目をみなさんに示したところだ。研究会の最終報告はいつになるか未定だが、それを見ながら、全般的な見直しをすすめる」と、これまでと同様の回答を繰り返しました。
 若井事務局長は、「労働基本権が制約されているもとで、公務員労働者が安心して仕事に専念できる環境をつくるのが人事院の責任だ。その原点に立って、勧告作業をすすめることが、人事院に求められている。比較方法見直しでは、勧告まで約1か月になった現時点でも研究会の結論が出ていないもと、十分に話し合いながら合意形成していく時間の保障がない。このまま見直しが強行されれば、まさに賃下げの結論ありきとなる。それならば、やめるべきだ」と、重ねて中止を求めました。
 最後に、石元議長は、「今日の回答は、賃下げにもつながる重要な内容をふくんでいる。最終回答まで、人事院として、さらに真剣な検討を求めたい」とのべ、交渉を閉じました。
以 上