No.565
2006年4月10日
地方公務員給与改善へ全人連に申し入れ
= 「官民給与の比較方式の見直し」などにかかわって要請 =
 公務労組連絡会は10日、自治労連・全教とともに、地方公務員・教員の給与改善にむけて、都道府県・政令市などの人事委員会で構成する全国人事委員会連合会(全人連)に申し入れました。
 賃下げにつながる官民給与の比較方式の「見直し」が、人事院で検討されるなかで、申し入れでは、地方公務員給与が地域に及ぼす影響の大きさや、人材確保の面から、給与改善にむけた全人連としての努力を要請しました。

  比較企業規模の拡大など国の動向に注視して検討をすすめる

 全人連への申し入れには、公務労組連絡会からは、駒場副議長を先頭に、若井事務局長、新堰・黒田両事務局次長、渡辺・蟹沢の各幹事、東京自治労連の野村書記長が出席、全人連は、内田会長(東京都人事委員会委員長)をはじめ、中澤(北海道)、大立目(宮城県)、大河原(群馬県)、井上(横浜市)、那須(愛知県)、帯野(大阪府)、丸山(広島県)、木村(愛媛県)、平田(福岡県)の各人事委員会委員長ほかが出席しました。
 はじめに、駒場副議長が、「要請書」(別掲)を内田会長に手交し、「地方人事委員会は、設立以来の最大の転換期をむかえている。それは、4.6%純減目標という小泉内閣からの総人件費削減の圧力、地方公務員に対する総務省からの圧力という2つの圧力が強まってきているからだ。しかし、こうしたときだからこそ、労働基本権制約の『代償機関』としての地方人事委員会の果たす役割は大きい。職員の勤務条件の向上、住民全体の奉仕者として安んじて仕事ができるように人事委員会としての役割発揮を要請する」とのべ、要請書に沿った努力を求めました。
 これに対して、内田会長は、以下のように回答しました。

【全人連・内田会長回答】
 ただいまのみなさんからの要請については、確かにうけたまわった。早速、全国の人事委員会に伝える。
 せっかくの機会でもあり、本年の民間給与実態調査を迎えるにあたっての現在の状況認識等についてのべたい。
 最近の経済情勢を見ると、3月の月例経済報告では「景気は回復している」とし、先行きについては、「国内民間需要に支えられた景気回復が続くと見込まれる」としつつも、原油価格の動向が内外経済に与える影響等について、警戒感を示している。
 また、雇用情勢は「厳しさが残るものの、改善に広がりがみられる」としている。
 このようななか、今春闘は、景気回復と好調な企業業績を背景に、大手企業を中心として久々に賃上げを求めるものとなったが、国際競争の激化や、能力・成果重視型の賃金制度の定着などから、従来の横並びで一律的な配分の賃上げではなく、業績や経営方針など、個々の企業の実情を踏まえた妥結となっている状況がうかがえる。
 同業種でも、個々の企業業績には好不調の明暗が見られるなど、月例給の公民格差について、必ずしも楽観できる状況にはないとも考えられる。
 一方、公務員の給与を取り巻く環境は、引き続き厳しい状況がつづいており、多くの国民が公務員給与のあり方に注目していることは、みなさんもご承知のとおりだ。
 人事院では、官民給与の比較方法のあり方について、「官民給与の比較方法の在り方に関する研究会」や「給与懇話会」の議論等を踏まえて、引き続き検討をすすめるとしながら、本年の民間給与実態調査について、この官民比較のあり方の検討をおこなうため、企業規模100人未満の企業も調査対象に加えることとしている。
 民間給与実態調査を含めた公民給与の比較方法については、共同調査という性格もあり、人事院の動向が、各人事委員会に大きな影響を及ぼすものと考えられる。
 さらに、去る3月27日には、総務省の「地方公務員の給与のあり方に関する研究会」の報告がまとめられ、給与決定のあり方や人事委員会機能の強化などのほか、企業規模100人未満の企業への調査対象拡大にも言及したところだ。
 各人事委員会においては、これら国の動向を引き続き注視しながら、住民の理解と納得性、客観性をより高めていく観点から、公務員給与のあり方について、必要な検討をおこなっていくものと考えている。
 本年も、5月初旬から民間給与実態調査を予定しているが、本日の要請の個々の内容につきいては、その調査結果や各自治体の実情等をふまえ、それぞれの人事委員会で、今後具体的に検討していくことになろう。
 申し上げるまでもなく、人事委員会の重要な使命は、公務員の給与等の勤務条件について、社会情勢に適応した適正な水準を確保することであると認識している。公務員の給与を取り巻く環境は引き続き厳しい状況だが、本年も各人事委員会においては、中立かつ公正な第三者機関として、その使命を十分に果たしてまいりたい。

 この回答をうけて、最後に、駒場副議長は、「指摘のあった民間給与実態調査の対象企業規模引き下げは、労働組合との十分な協議がととのっていないと考える。その点からも、人事院に対しては、調査結果は今夏勧告に反映しないよう求めている。地方行政と地方自治の発展と勤務条件の改善は一体の関係であり、そうしたことをふまえて、今後の全人連としての対応を要請する」とあらためて求めて申し入れを終えました。

以 上

(別掲:全人連への要請書)

2006年4月10日

全国人事委員会連合会
会長 内田 公三 様

公 務 労 組 連 絡 会
議   長 石 元 巌
日本自治体労働組合総連合 
中央執行委員長 駒場 忠親
全日本教職員組合     
中央執行委員長 石 元 巌

地方公務員の「給与勧告」についての要請書

 日ごろより地方公務員の勤務条件の向上にご努力頂いていることに敬意を表します。
 人事院は、昨年「給与構造の見直し」の導入を勧告したことに続いて、今年は民間給与の実態調査の対象を50人以上の事業所にまで拡大する方向で検討しています。
 また、総務省は、3月27日に「地方公務員の給与のあり方に関する研究会」報告書を公表し、給与構造は国準拠とし、水準は地域水準に限りなく近づけるよう提言しました。
 さらに、「税財政の三位一体の改革」による地方交付税等の削減によって、独自に賃金削減を行っている自治体が過半数を超えています。
 加えて、今国会に「行政改革推進法」が提出され、4.6%の定数削減等による人件費総額削減の方向が審議されています。
 地方公務員賃金は、地方公共団体における人事行政運営に直接関わり、また財政運営とも密接な関連を有しています。さらに分権時代にあっては地方公務員の人材確保にも大きな影響を与え、公務サービスの質にも深く関わっています。従って、単に民間準拠のみで決定できない性格を持っていることは明らかです。
 その上、地方公務員賃金は、地方公務員の生活に直接影響を与えるだけではなく、地域経済にも大きな影響を及ぼしています。
 地方公務員の勤務労働条件に関わる重要な役割を担われている貴職がこうした認識にたって、厳しい公務員バッシングの中で住民福祉の充実に日々努力している自治体・自治体関連職場で働く労働者の暮らしを改善するために、下記の要求事項を尊重し、人事委員会勧告にむけた作業にあたられることを要請するものです。

1.比較調査対象企業規模を一方的に拡大しないこと。労働基本権剥奪の「代償機関」とされる人事委員会の役割と機能を踏まえ、調査対象事業所は、労使交渉によって賃金等の労働条件を決定している企業を基本とすること。
2.本年度の勧告にあたっては、地方公務員の生活改善につながる賃金水準を確保できるものとすること。また、政府・総務省の不当な干渉を排除し、地方自治を守り、中立機関としての独立性を堅持すること。
3.地域の民間給与水準を絶対視することなく、生計費原則、「同一労働・同一賃金」の原則を踏まえること。「給与構造の見直し」は、地方公務員の賃金のみならず、人材確保など地方行政や地域経済にも大きな影響を与えるので一方的かつ機械的に導入しないこと。
4.公立学校教職員の給与について、公教育の果たすべき役割を踏まえ「同一労働・同一賃金」の原則を堅持し、教員人材確保法に基づき適正な給与水準を確保すること。
5.人事委員会勧告事項にない、財政危機などを口実にした自治体独自の賃金引下げや、勧告を無視した給与制度の改悪などについては、公平・中立の第三者機関として、使用者に毅然とした対応を行うこと。
6.国民に信頼される中立・公正な行政を確保する観点から、競争原理、「成果・業績」にもとづく給与・人事管理制度実施などの勧告をおこなわないこと。
7.臨時・非常勤(教)職員の賃金を抜本的に改めること。当面、常勤職員との均等を図ること。
8.すべての公務職場における年間総実労働1,800時間を達成するための必要な措置をとるよう勧告すること。同時に、違法なサービス残業を根絶する抜本的改善を勧告するとともに、公務員労働者の生活・労働実態を無視した勤務時間割り振り、裁量労働制の導入などの制度改悪を行わないこと。
9.介護休暇制度について、日数の増加や対象者の拡大、休業手当金の上限規制の撤廃、十分な所得保障など、改善を行うこと。子どもの看護休暇制度の拡充、家族看護休暇制度、子どもの幼稚園・保育園、学校の行事等への参加のための休暇制度を新設し、仕事と家庭の両立支援に有効な制度を確立すること。また、関連労働者にも同様な制度を確立すること。特に「非常勤(教)職員の子どもの看護休暇」を有休とするよう措置すること。
10.育児休業制度の無給規定を撤廃し、十分な所得補償を行うこと。当面、取得者全員に1歳6か月までの休業手当金を支給すること。代替要員の確保や部分休業も含めた男性の取得促進など、男女とも取得しやすい制度に改善すること。また、臨時・非常勤(教)職員の休暇等について、常勤職員に準じた制度とすること。
11.公務における真の男女平等をはかるため、募集・採用・任用・昇格をはじめ雇用の全ステージにおける直接・間接の男女差別を禁止し、その実行を図るための必要な整備を行うこと。
12.職員の健康・安全を確保するため、長時間・過密労働をなくし、過労死・自殺、疾病、労働災害の予防など福利厚生施策を含めて万全の措置を講じること。あわせて、労働安全衛生法を厳格に遵守するよう強く指導すること。
以 上