Ｎｏ．560
2006年３月９日
比較対象企業｢見直し｣､労働基本権などで追及
＝　第１次中央行動を前に総務省・人事院と交渉　＝
　第１次中央行動を前日にひかえた９日、公務労組連絡会は、総務省・人事院と交渉し、２月９日に提出した「06年春闘要求書」にもとづいて、賃金・労働条件の改善など公務労働者の切実な要求の実現を迫りました。
　また、民間給与実態調査の「見直し」が検討されるなか、人事院との交渉では、「人事院勧告基礎作業の改善要求」を提出、賃金引き下げにつながる「見直し」をおこなわないよう求めました。

賃上げへの期待裏切る比較対象規模｢見直し｣やめよ(人事院交渉)

　午前10時からの人事院との交渉には、公務労組連絡会は、石元議長を先頭に、若井事務局長、黒田事務局次長、熊谷（自治労連）・蟹沢（全教）・山﨑（国公労連）の各幹事が出席、人事院側は、給与局給与第１課の幸課長補佐、職員福祉局職員福祉課の植村課長補佐ほかが対応しました。
　はじめに、石元議長は、「人事院は、民間給与実態調査の対象を100人未満の企業にまでひろげる検討をはじめており、職場では賃下げの不安がひろがっている。先日、東北で新たに公務産別のブロック組織が結成されたが、公務・民間の労働者、商店主などが共同して、住民の生活を守れとの共同がすすんでいる。今春闘は、民間大手の賃金交渉が好調であり、それをふまえて賃金要求の実現を求める」とのべ、現時点での回答を求めました。
　幸課長補佐は、賃金問題にかかわって、以下のように回答しました。
●経済情勢が回復しており、民間大手の多くの企業では、久しぶりの賃上げが伝えられている。しかし、成果主義賃金や「横並び」の賃上げではなく、企業ごとにばらつきがみられる。３月15日に集中回答をむかえるなか、民間賃金の動向に引き続き注目していく。
●一時金については、民間の妥結額だけで見ると増加傾向だ。しかし、実額調査の結果はまだ出ておらず、今後とも、民間の動向に注視していきたい。
●勧告作業は例年のペースでおこなうこととし、民間賃金実態調査を開始したところだ。「給与構造の見直し」では、広域異動手当が課題として残されているが、今後ともみなさんと意見交換していきたい。
●比較方法の見直しについては、全般にわたっての検討をすすめている。そのなかで、労働組合のみなさんの意見もうかがってきたところだ。なお、比較対象企業規模を100人未満もふくめることへの検討作業をすすめているが、引き続き、勧告にむけてみなさんとも意見交換していきたい。
　また、勤務時間・休暇制度など労働条件では、植村課長補佐が回答しました。
●労働時間の短縮にむけては、指針を発出して各省が努力をしている。今後とも推進すべき課題であり、実効ある施策を検討している。超過勤務の解消は、政府全体でとりくむべき重要課題であり、人事院として厳正な勤務時間管理への具体的方策をすすめているが、制度の改善にむけては、職員団体の意見を聞きながら検討していきたい。
●休暇制度の改善要求については、情勢適応の原則をふまえ、民間の状況もみながら検討をすすめる必要があり、その動向に注視したい。
●育児休暇制度は、休暇期間中の共済掛け金の免除が１歳から３歳にまで改善されたところだ。代替要員の確保については、第一義的には各省の問題だが、人事院として積極的に環境整備を要請していく。また、男性の育児参加、休業取得を促進していきたい。

　この回答に対して、若井事務局長は、「『行政改革推進法案』が国会提出され、労働条件にかかわる問題が一方的に決められようとしている。労働基本権制約の『代償措置』であれば、公務員を守る防波堤としての人事院の役割は増している。なのに人事院は、賃下げにつながる比較企業規模の見直しを検討している。職員の労働条件を改善しようとする姿勢が見えない」と指摘しました。
　また、蟹沢幹事は、「育児休暇から職場に復帰したときに昇給が延伸される。制度の大胆な見直しを求める。また、教職員のメンタルヘルスが増加しており、病休の５割がメンタルによるものだ。復帰プロセスなどへの人的サポートをふくめてふみこんだ検討を要請する」と求め、熊谷幹事は、「若い職員は採用してから賃上げされたことがない。これでは仕事に対するモチベーションも下がる。こうしたなか、単純に比較企業規模の見直しで100人未満にすることには納得できない。また、自治体職員の分限免職の例が出ており、雇用や権利が守られないところに、メンタルヘルスが増える背景がある」とのべました。
　幸課長補佐は、「みなさんの要望はうけたまわった。担当の部局に伝えたい」と回答しました。最後に、若井事務局長は、「人事院勧告は、地方公務員にも直接影響がおよぶ。休憩・休息時間の改定では、地方は東京以上に影響がでる。すべての公務員を視野に入れて検討することが重要だ」とのべ、また、比較対象企業の見直しについて、「大企業と中小との賃金格差が大きいなかで、100人未満にひろげることは賃下げを表明したようなものだ」と批判し、「人材確保の面や、公務員にとって労働条件がどうあるべきかなどを考え、公務員の賃金を改善するため力を尽くせ」と求めました。
　石元議長は、「次回の交渉にむけて、十分に検討したうえでの誠意ある回答を求める」とのべて、交渉を締めくくりました。

あらためて労働基本権の回復を求める（総務省交渉）

　午前11時からの総務省との交渉は、人事・恩給局総務課の酒田総括課長補佐、笹森課長補佐ほかが対応しました。
　はじめに、石元議長は、「公務員バッシングが強められているなか、職員が安心して国民の期待に応える仕事ができる条件づくりが必要だ。その点で、使用者としての責任ある努力を求める」とのべ、現時点での要求への見解をただしました。
　酒田総括補佐は、要旨、以下のように回答しました。
●公務員バッシングでは、国民の誤解や理解不足が散見される。反省すべき点はあっても、行き過ぎたバッシングには、政府としてきちんと対応し、正しく理解が得られるように努力したい。
●給与改善の要求については、人事院勧告制度は、労働基本権制約の代償措置であり、同制度を維持尊重することが政府としての基本姿勢だ。この基本姿勢のもと、国政全般との関連を考慮しつつ適切に対処する。なお、使用者として、職員が安んじて職務に専念できるよう、適切な対処をはかる。
●査定昇給と評価制度については、新しい評価制度ができるまで、現行制度を活用するが、その基準が人事院から示された。総務省として、新たな評価制度確立へ第１次試行をはじめたところであり、活用方法をふくめて、今後、労働組合のみなさんとも十分に意見交換しながら検討をすすめる。
●労働基本権問題は、昨年12月に「行政改革の重要方針」が閣議決定され、「幅広く検討」とする方向が示された。そのあり方については、世論動向をふまえた慎重な議論が必要だ。とくに関係者との話し合いは重要だ。
●労働時間の短縮にむけては、2003年９月に見直した「国家公務員の労働時間短縮対策」にもとづき、超過勤務の縮減や年次休暇の計画的使用に促進に努める。
●メンタルヘルス対策は重要課題であり、カウンセラーの講習会など対策を継続していきたい。
　これらの回答をうけて、若井事務局長は、「公務員バッシングへの具体的な対応を示してもらいたい。労働基本権は、幅広く検討することが決まっただけで、そうしたもとでも、『行革推進法案』などリストラ計画が、労働組合との十分な話し合いもなく閣議決定されようとしている。あらためて労働基本権の回復を求める。評価制度は、恣意的評価がないような制度確立を要求する。超過勤務は、対策を強化するだけでなく、業務の見直しや増員など根本に踏み込んだ議論が必要だ」と求めました。
　酒田総括補佐は、「公務員バッシングは、国会答弁などさまざまな場で国民に訴えていきたい。賃金やリストラなどへの不安は、使用者として真剣に受けとめなければならない。恣意的評価への不安は、試行のなかでそうしたことのない仕組みにしていく。面談や結果の開示などをふくめて検討をすすめる。労働基本権は、難しい課題であり、公務員制度全体で議論すべきだ。なお、2001年の『公務員制度大綱』は、昨年の『行政改革の重要方針』で上書きされ、『制約維持』の立場から一歩すすんでいる。今後とも、みなさんとも議論していきたい」と回答しました。
　最後に、石元議長が、「さらに検討をすすめ、次回の交渉では、誠意ある回答を求めたい」とのべ、交渉を終えました。
以　上