No.559
2006年3月7日
「公務リストラ」推進法案が10日に閣議決定へ
= 「小さな政府」を許さないたたかいが重要段階に =
 公務労組連絡会は7日、行革推進事務局と交渉し、定員・給与両面からの公務員総人件費削減などをねらう「行政改革推進法案」を策定しないよう求めました。
 これに対して、行革推進事務局は、昨年末の「行政改革の重要方針」にもとづき、今週10日の法案閣議決定にむけて作業をすすめていることを明らかにしました。
 法案の国会提出が強行されれば、「小さな政府」を許さないたたかいの重要な課題となります。3月10日の第1次中央行動、17日からはじまる「全国縦断キャラバン行動」など、職場・地域から世論をひろげるとりくみのいっそうの強化が求められています。


交渉・協議なく法案の閣議決定ねらう推進事務局に抗議


 行革推進事務局との交渉は、公務労組連絡会から、若井事務局長を先頭に、黒田事務局次長、新堰事務局次長(全教)、柴田(自治労連)、篠原(特殊法人労連)の両幹事が出席、行革推進事務局は、公務員制度等改革推進室の稲山企画官、川島参事官補佐ほかが対応しました。
 はじめに若井事務局長は、別掲の「要請書」を提出したうえ、「2週間前から推進事務局との交渉・協議を申し入れてきたが、今日になった。しかし、与党協議もほぼ終わった段階であり、すでに意見反映の余地はなくなっている。誠実な対応がなかったことに、まず遺憾の意を表明する」と、交渉・協議の日程を一方的にのばしてきた行革推進事務局に抗議しました。
 そのうえで、「民間ならば、リストラにあたって労使交渉が持たれる。公務員の労働基本権が制約されているもとで、定員・給与にかかわる問題を労働組合との十分な協議もなく、政府が一方的に作業をすすめていることは重大だ」と指摘しつつ、現時点での検討状況をただしました。
 稲山企画官は、「みなさんとはしっかりとした話し合いをしたいと考えているが、時間がとれずにここまできたことは申し訳なかった。行革推進事務局としては、3月10日の『行政改革推進法案』閣議決定にむけて作業をすすめている。法案の内容は、昨年12月に閣議決定された『行政改革の重要方針』を忠実に法案に作りかえたものだ。2月10日に行革推進本部で法案概要が了承され、その後、法制局での審査を経て、閣議決定の段階をむかえている」とのべ、国家公務員の5%以上の純減、地方公務員・教員の4.6%以上純減などをふくむ法案のおおまかな内容を説明しました。

理念も哲学もない「行革推進法案」は百害あって一利なし

 参加者からは、「地方自治、地方分権に即した定員が必要だ。国からの定員削減の押しつけは、地方自治体の自主性をそこなう。『簡素で効率的』と言うが、人が減らされてきた結果、耐震強度偽装事件などが実際に起こっている。また、病院の廃止などで地域医療が崩壊しかねない。医者にかかれない人は死ねと言うのか」「独立行政法人にも5%以上の削減が押しつけられる。最初の特殊法人が独立行政法人に移行してから、やっと2年半経ったばかりなのに、一方的な削減の強制は認められない」「小さな子どもたちが命をおびやかされ、教職員は子どもたちを守るために必死だ。このうえ教員を削減するのか。学力向上が指摘され、教員定数の改善こそ必要なときに、削減していたら取り返しがつかなくなる」など、公務員総人件費削減に反対する意見が出され、「行政改革推進法案」の閣議決定をやめるよう求めました。
 稲山企画官は、「個々の地方自治体に対して、4.6%の純減を押しつけているのではない。厳格な定員管理をおこなったうえで全体的に純減をめざしている。また、単純に教員が多ければ、学力が上がるものではないというようなさまざまな意見がある。行革推進事務局としては、法案作成が与えられたミッションであり、その方向でやらせてもらう」とのべ、あくまで10日に閣議決定するとの強硬な態度をとりつづけました。
 最後に若井事務局長は、「昨年からの議論経過を見ると、どのような国づくりをめざしているのかという理念も哲学もない。また、どの仕事に何人が必要なのかという検証もなく、『はじめに削減ありき』で数あわせの検討がすすめられていることは重大だ。そのうえで提出される法案は、百害あって一利なしだ」と指摘したうえで、「労働組合との交渉・協議をはじめ、まだまだ議論を尽くすべきであり、10日の閣議決定は拙速すぎる。将来に禍根を残すこととなる。閣議決定には反対する」と、あらためて公務労組連絡会としての態度を明らかにし、交渉を閉じました。


(添付資料:要請書)

   2006年3月7日

内閣総理大臣 小泉 純一郎 殿
行政改革担当大臣 中馬 弘毅 殿

公務労組連絡会
議 長 石 元 巌

公務・公共サービスの拡充を求める要請書

 小泉内閣は昨年12月24日、「行政改革の重要方針」(以下、重要方針)を閣議決定し、そのなかで、「総人件費改革の実行計画」として、民間委託や「市場化テスト」導入などによる国家公務員定員の5%以上の純減、地方公務員定員の「国基準」の見直しや公立大学法人化、教員の削減などで4.6%以上の地方公務員の純減を打ち出しました。
 「重要方針」では、これらの方針にもとづく「行政改革推進法案(仮称)」を今通常国会に提出するとし、現在、法案策定の作業が行革推進事務局を中心にすすめられていると承知します。
 公務員定員の削減は、「小さくて効率的な政府」をめざす小泉「構造改革」の重要事項に位置づけられています。しかし、人口千人あたりの日本の公務員数は、欧米の先進諸国と比べて半分にも届かず、国民生活を守る体制は十分とは言えません。
 また、財界主導で民間開放が声高に主張され、公務・公共サービスが企業の儲けの対象とされるもと、本来、公務に求められる公共性や公務・公共業務が国民に対して果たす役割などの議論は後景に追いやられてきました。その結果、「重要方針」でも示されたように、総人件費を対GDP比でみて今後10年間で半減させるなどという「数合わせ」の議論だけが先行していることや、さらには、公務員労働者の基本権を制約しながら、定員や給与など労働条件に直接かかわる事項を一方的に決めようとすることはきわめて重大です。
 「官から民へ」とする「改革」は、公務・公共サービスの後退をもたらすばかりか、結果的には国民に新たな負担を押しつけるものでしかありません。国や自治体の国民・住民に対する責任をふまえれば、公務員を減らすのではなく、真に必要な公務・公共サービスを拡充すべきです。
 今後の「総人件費改革」をはじめとした「構造改革」の方向が、国民生活に重大な影響を与える観点をふまえ、貴職に対して、下記の点について要請するものです。

1、公務員の大幅な削減を企図する「行政改革の重要方針」にもとづいた「行政改革推進法案(仮称)」を策定しないこと。

2、民営化や「市場化テスト」など公務・公共業務の営利企業化・商品化をすすめる施策をおこなわず、国民のための公務・公共サービスの拡充をはかること。
以 上