No.548
2005年10月21日
給与法案・退職手当法案が衆議院で可決
= 総人件費削減攻撃とも一体で地域からのたたかい強化を =
 特別国会に提出されている国家公務員一般職の給与法案、退職手当法案は、20日午後に開かれた衆議院総務委員会で審議されました。
 委員会では、「給与構造の改革」など給与の問題点にとどまらず、小泉「構造改革」がねらう公務員総人件費削減などをめぐって各党の委員から意見がのべられました。
 しかし、国家公務員の賃下げと「給与構造の改革」は、地方公務員や政府系法人に直接の影響を与え、民間賃金にも波及する国民的に見ても重大な問題であるにもかかわらず、わずか2時間半たらずの短時間で採択され、21日の本会議でも賛成多数で可決され、参議院に送付されました。
 公務労組連絡会は法案審議を監視するため、傍聴行動を配置し、15人(国公労連8、自治労連2、全教2、特殊法人労連1、事務局2)が参加しました。

公務員いじめ・国民犠牲の「改革」を競い合う民主党

 14時に開会した総務委員会では、土屋正忠(自民)、渡辺周、逢坂誠二、福田昭夫(以上、民主)、吉井英勝(共産)、重野安正(社民)の各議員が質問に立ちました。
 民主党の渡辺議員は、官民較差について追及しましたが、「人事院の民間賃金実態調査と、厚生労働省や国税庁の賃金調査とを比較すると、人事院の調査は年間で約150万円も高い。40年前から続く人事院のやり方が現状に則しているのか」とのべたうえ、「国民の理解を得るためにも調査方法を見直すべきだ」と主張しました。
 民主党は、14日に国家公務員法の「改正」法案を特別国会に提出しており、そのなかで、民間賃金実態調査の対象となる事業所の「範囲の拡大」を求めていますが、渡辺議員の発言からも、民主党の国公法「改正」法案とは、まさに、小泉「改革」と競い合い、公務員にさらに賃下げをせまるものであることは明らかです。
 逢坂議員は、地域手当について、「全国的に同質の公務サービスを提供するうえでも、地域手当はおかしい。賃金格差の拡大をはかるものでしかない」と追及したことに対して、麻生総務大臣は、「俸給表は全国共通だ。激変緩和の経過措置も設ける」などと答弁し、格差拡大にはつながらないと主張しました。また、「査定昇給」制度にかかわって、「勤務の評価制度は、十分に機能するのか?職場の混乱、職員の不満が出てくる」と疑問を呈したことに対しては、「人が人を評価するのは大変なことだと認識している。混乱や不満が起こらないようにやる必要がある。そうした認識を十分に持ってのぞむ」と麻生大臣がのべ、総務省が検討している新たな評価制度の在り方について言及しました。

「日本の公務員は少ない」と総務大臣も認める

 退職手当にかかわって、民主党の福田議員からの「退職手当については、『給与構造改革』と違い、総人件費削減の視点がない。なぜ、民間の実態調査をしなかったのか」との質問に答えて、総務省人事・恩給局の戸谷局長は、「今回は構造を見直した。水準は2003年に引き下げている。来年度に民間の退職金実態調査を準備し、その結果を見て、必要があれば見直す」と答弁し、退職手当の水準見直しをすすめていく考えを明らかにしました。
 また、地方公務員への影響について、福田議員は、「『給与構造の改革』に、地方自治体は悲鳴をあげている。地方交付税が減ることが懸念される」と指摘すると、麻生大臣は、「地方公務員の給与の引き下げを地方交付税の削減につなげるつもりはない」としながらも、「地方財政計画にもとづき財政を抑制していく」とし、「三位一体の改革」によって地方自治体にはいっそうの負担をせまる姿勢も示しました。退職手当も、麻生大臣は、「地方公務員も国に準じたものにする」と答弁しました。
 総人件費削減の問題で、福田議員は、「5年間で10%の国家公務員の削減計画が決定されたが、その実現は可能なのか?」との質問に、麻生大臣は、「いろいろな数字が出ているが、ただ人を減らせばいいというものではない。まず、官としてどんな仕事が必要か、何が民間でできるかを決めていくべきだ。仕事の整理をしたうえで、10%の削減を検討する必要がある」とのべ、さらに、「日本の公務員は、人口1千人あたり35人だ。フランスの96人、アメリカの80人、イギリスの73人に比べて圧倒的に少ない」と、麻生大臣みずからが日本の公務員が少ないことを強調しました。

公務員給与引き下げは地方経済にも影響する

 共産党の吉井議員は、高級官僚の天下りや法外な退職手当の問題で政府を追及し、また、霞が関の本省庁職員の長時間勤務の実態について、東京国公・霞国公が仲間の取り組んだ実態調査も紹介し、異常な長時間・過密労働、不払いサービス残業の根絶を求めました。
 とくに、国家公務員の過労自殺を公務上の災害に認定した甲府地裁の判決を示し、公務員労働者の労働条件改善にむけた使用者・政府としての責任を追及しました。麻生大臣は、「総務省としても、各省庁の協力のもとさまざまな対策をしてきた。幹部のコスト意識が大切であり、今後とも適切な勤務時間の管理につとめる必要がある。サービス残業は、法律にもかかわる話であり対処すべきだ」と答弁しました。
 また、「給与構造の改革」にかかわって、「地方公務員では、6000億円の人件費予算減額となる。『国準拠』で地方公務員の賃金水準が4.8%引き下げられれば、民間も賃金が下がる悪循環が起こる。そのことが、個人消費と地域経済を冷え込ませ、税収入も落ち込む。そのことについて、大臣としてどう考えるのか」と厳しく追及しました。
 麻生大臣は、「6000億円削減と言うが、経過措置があり、あくまでも今後5年間の合計だ。1年間になおせば1千億円程度だ」などのべ、地域への影響についてまともに答えようとませんでした。
 最後に質問した社民党の重野議員は、「査定昇給」制度について、「評価制度がないままに、なぜ急ぐのか」と人事院の姿勢をただしましたが、佐藤人事院総裁は、「民間ではすでにすすんでおり、緊急の課題であり、評価制度の完成を待つことはできない」などとのべ、これまでの人事院の主張を繰り返しました。

賛成多数で各法案が採択される

 これらの質疑が終わった後、討論に入り、共産党の吉井議員が反対討論に立ち、(1)人事院勧告は、公務員の労働基本権制約の代償措置であり、賃下げ勧告はその役割を果たしたものではない。また、50年ぶりの「給与制度の改革」は、政府の総人件費削減に沿ったものであり認められない、(2)地方公務員では6000億円の人件費が削られ、そのことが賃下げの悪循環を招き、景気をさらに悪化させる、(3)4月にさかのぼって賃金を下げることは、民間では確立している「不利益不遡及」の原則を覆すもの、(4)退職手当の見直しは、「調整額」の新設によって、さらなる格差拡大を招く、との理由から、法案に反対することを表明しました。
 その後、ただちに採決に入り、一般職の職員の給与法「改正」案は、共産・社民の反対、特別職の同法案は社民の反対、退職手当法「改正」案は、共産・社民の反対により、それぞれ賛成多数で可決しました。
 なお、その後、「公務員制度改革に関する決議(案)」が、自民・公明・民主・社民の共同提案で提出され、共産党以外の賛成多数で決議されました。
以 上