No.522
2005年5月18日
地域手当は「人口5万人以上の市」を単位に指定
= 「給与構造の見直し」で人事院が新たな提案 =
 人事院は18日、公務労組連絡会に対して、「給与構造の基本的見直し」にかかわる「措置案」を提示しました。
 「措置案」は、昨年11月に示した「素案」にもとづいて、今後の「見直し」作業にむけた人事院としての考え方をまとめたものですが、その内容は、全国的な俸給水準を5%程度引き下げることを基本にしつつ、「地域手当」の新設や勤務成績にもとづく昇給制度(査定昇給)など、格差をいっそう拡大する方向には何ら変わりはありません。
 「措置案」の提示をふまえ、署名運動や地域でのとりくみなど、格差拡大の給与制度の改悪を許さないため、夏季闘争にむけた運動の強化が求められています。

「見直し」改悪を許さないため職場・地域からの運動強化を

 人事院の説明には、公務労組連絡会から若井事務局長、黒田事務局次長、新堰・柴田の両幹事が出席、人事院は、職員福祉局の森永参事官ほかが対応しました。
 森永参事官は、「措置案」の提示にあたって、「11月にみなさんとの議論のたたき台として『素案』を提示してきたが、これをさらに具体化するために人事院としての『措置案』を作成した。今後、これをもとにして、みなさんとさらに議論をすすめていきたい」とのべ、別掲資料のような「措置案」を提示しました。
 内容は、俸給水準の5%程度引き下げうえで、「民間事業所が集積し、経済活動が比較的安定的、継続的に行われている地域」として、人口5万人以上の市を単位にして、「地域手当」を支給するとし、3%から18%までの6段階で設定することなどが示されています。
 また、現行の俸給表を4分割し、勤務実績にもとづいて昇給する「査定昇給」制度や「俸給カーブのフラット化」も、数字をあげてより具体的な内容が提案されています。
 「地域給与」の引き下げなど格差の拡大をねらう「給与構造の見直し」の中身がさらに明らかにされたことをふまえ、8月の人事院勧告にむけたたたかいが重要となっています。
 5月20日の「第1次中央行動」につづいて、地域のとりくみでは、5月31日に北海道で決起集会が開催されるほか、その他の各県でも、集会や自治体への要請行動が計画されています。署名運動など職場からのとりくみをふくめ、格差拡大と賃下げにつながる給与制度改悪に反対するたたかいの強化を呼びかけます。

(資料)

給与構造の基本的見直しについて(措置案)

人 事 院


1、俸給表構造の見直し
  現行の俸給水準は、官民給与の全国平均水準をベースに設定されている。地域の公務員給与がそれぞれの地域の民間賃金水準をより適切に反映したものとなるよう、民間賃金の低い地域と民間賃金の高い地域との賃金格差を踏まえ、俸給水準を5%程度引き下げることとする。同時に、年功的な給与上昇を抑制し、職務・職責に応じた給与とするため、級構成、号俸構成及び水準カーブの改正を行う。

 行政職俸給表(一)について次のような改正を行う。

(1)級構成の再編
  次のような級構成の見直しを行い、現行の11級制から10級制の級構成とする。
 ア 職責の同質化が進み、人事管理上も別々の級として存続させる必要性の少なくなった現行1・2級及び現行4・5級を統合する。
 イ 平成13年1月の省庁再編に伴い従前よりも多数の職員を抱え広範かつ高度な業務を担うことになるなど、従来の本省課長の職責を上回る職務が生じてきていることから、これらの職務を適正に評価するため、新たな級(新中級、現行12級相当)を設ける。

(2)号俸構成等
 ア 昇給制度の見直しに伴い、勤務実績を反映させやすくするため現行の号俸を4分割する。
 イ 初任の級を除く現行4級以上の各級について、職務給の観点から級間の水準の重複を減少させるため初号等の号棒をカットする。
 ウ 年功的な給与制度を見直し、各職務の級における職務・職責の違いを明確化するため、いわゆる枠外昇給制度を廃止する。

(3)俸給水準是正
  俸給水準を全体として5%程度引き下げる。
 ア 現行4級以上の各級について、民間水準を上回る傾向が見られはじめる30歳代半ばの職員が適用されている号俸以上の号俸については、水準をさらに最高2%程度引き下げる。他方、現行4・5級等の前半号俸の水準引下げを5%未満に抑制する。
 イ 現行1級・2級及び3級の前半号俸については引下げを行わない。3級の後半号俸については4級以上の水準引下げを踏まえ必要最小限の引下げを行う。

(4)昇格時の号俸決定方式
  昇格時の号俸決定方式について、1号上位昇格方式に代えて、昇格前の俸給月額に職務の級別に一定額を加算した額を基礎とする俸給月額となるような方式に改める。

(5)切替方法
 ア 切替日の前日に受けていた号俸等及び当該号俸等に係る経過期間に応じ、新俸給表における細分化された号俸に切り替えることを基本とする。
 イ 枠外昇給制度を廃止することに伴い、枠外在職者は全て最高号棒に切り替える。
 ウ  級統合に伴う切替については、現行1級及び4級在職者については、現行俸給表上の2級及び5級における直近上位の額の号俸を基礎として、ア及びイに従って切り替える。
 エ 新10級の新設に伴う切替については、切替日において新9級(現行11級)から新10級に昇格したものとした場合に得られる号棒に切り替える。

(6)指定職俸給表
  行政職俸給表(一)11級と同程度の引下げを行うとともに、下位号俸をカットする。

(7)行政職俸給表(一)及び指定職俸給表以外の俸給表の見直し
 ア 級構成については、行政職俸給表(一)の取扱いとの関係を踏まえ、各俸給表ごとに適用される各職種における運用実態を考慮しつつ見直す。
 イ 号俸構成は、行政職俸給表(一)との均衡を基本として見直す。
 ウ 水準是正については、行政職俸給表(一)との均衡を基本として行う。

2、地域手当及び広域異動手当の新設
(1)地域手当の新設
  公務員の俸給水準を民間賃金の低い地域の水準のベースに引き下げることに併せて、調整手当を廃止し、民間賃金の高い地域に勤務する職員に対し、地域手当を支給する。
 ア 支給地域の指定は、民間事業所が集積し、経済活動が比較的安定的、継続的に行われている地域を単位として行うとの観点から、人口5万人以上の市を単位として行う。
  地域の一体性を考慮して、支給地域に近接する地域の指定について検討する。
 イ 民間賃金の高い地域を決定する指標については、現行の調整手当制度における支給地域等の見直しにおいて用いられてきたこと等を考慮して、賃金構造基本統計調査(賃金センサス)の特別集計による賃金指数を基礎資料とする。
 ウ 東京都区部の現行給与水準を維持できる水準を上限としつつ、現行の調整手当との連続性等を考慮して、支給区分を3%、6%、10%、12%、15%、18%の6段階とする。
 エ 地域指定は、俸給水準が5%程度引き下げられることを考慮した新たな基準に基づいて行う。
 オ 地域手当の支給区分が下位の地域に異動した職員については、一定期間手当の特例を検討する。

(2)広域異動手当の新設(転勤手当の名称を「広域異動手当」とする。)
  俸給水準の引下げに伴い、円滑な人事管理の実現に資するため、転勤のある民間事業所(広域展開企業)の賃金水準等を考慮して、転勤を行った職員に対し、最大3年間を限度に3〜6%程度の広域異動手当を支給する。
 ア 原則として、転居を伴う勤務地を異にする異動を行った職員に支給する。
 イ 地域手当との併給調整を行う。また、特地勤務手当に準ずる手当と広域異動手当が併存する場合には、両手当間で併給調整を行うことについて検討する。
 ウ このほか、異動者に対する措置として、民間事業所における単身赴任手当の支給実態を考慮して、単身赴任手当の額の在り方について検討する。

3、 勤務実績の給与への反映
(1)勤務成績に基づく昇給制度の導入
  勤務成績を昇給により反映させやすくするため、現行の号俸を4分割し、特別昇給と普通昇給を一本化する。
 ア 昇給のための勤務成績判定期間を1月1日〜12月31日とし、昇給時期を全府省共通の年1回、1月1日に統一する。
 イ 職員を初任層、中間層及び管理職層に区分し、当該職員層に応じて勤務成績に応じた昇給号俸数及び「特に良好」以上の分布率を設定する。その際、管理職層は、それ以外の職員層よりも「良好(標準)」の場合の昇給号俸数を抑制する。
 ウ 55歳昇給停止措置については現行どおり維持することとする。
 エ 初任給決定方法については、基本的には現行の考え方を維持する。

(2)勤勉手当への実績反映の拡大
  勤勉手当について、勤務実績を支給額により反映し得るよう、「標準」の成績区分の成績率を引き下げることにより得た原資によって、「特に優秀」及び「優秀」の成績区分の人員分布率を拡大する。また、あわせて、当該人員分布率の基準を設定する。
 ア 成績区分別の成績率については、「標準」の成績区分の成績率を5/100引き下げる(一般職員70/100 → 65/100、特定幹部職員90/100 → 85/100)。これに伴い、懲戒処分を受けた職員等「標準未満」の成績区分の成績率を引き下げる。
 イ 成績区分別の人員分布率の基準を設定する。

(3)昇格基準の整備
  本格的な昇格基準は新評価制度の導入にあわせて整備する。それまでの間の暫定的な措置として、以下のとおり現行制度の枠内での昇格運用の改善措置を進める。
 ア 昇格の要件として勤務成績が良好であることを明示し、昇格に係る勤務成績の判定に当たって以下のような運用を行う。
  @  昇格に係る勤務成績判定のための基礎資料の一つとして、勤務評定記録書等とともに昇給及び勤勉手当に係る勤務成績の判定結果を活用する。
  A 昇格前1年間における勤務成績が「不良」又は「要努力」に該当していないこと。
 イ 級別資格基準表については、職務の級の再編等に応じて修正した上で、昇格のための勤務成績を総合的に判断するための期間として当面存置する。

(4)給与決定のための勤務成績の判定についての改善
  評価システムの整備については引き続き検討を行うこととするが、当面、昇給、勤勉手当における勤務成績の判定をより実効あるものとするとの観点から、従来から各府省で行われている給与上の勤務成績の判定手続をベースにその明確化を図る。
 上位の勤務成績の判定は、現行制度と同様に定められた予算枠内で相対的な判定を行うが、判定を行いやすくするとの観点から判定の着眼点、成績の判断基準等の例示について検討する。「良好(標準)未満」の勤務成績の判定には枠は設けず、懲戒処分や矯正措置を受けた場合など全府省共通の統一的な運用の基準を示すことについて検討する。

4、 その他の課題
(1) 専門スタッフ職俸給表の新設
   行政の多様化、複雑・困難化に対応するとともに、複線型の人事制度の導入に向けての給与制度上の環境整備として、専門的な能力の活用を目的として、3級構成程度の簡素な級構成の専門スタッフ職俸給表の新設を検討する。

(2)俸給の特別調整額の定額化
  特別調整額について、年功的な給与処遇を改め、管理職員の職責等を端的に反映できるよう、民間企業において役付手当が定額化している実態も踏まえ、定率制から定額制に移行する。
 ア T種〜X種の適用官職については現行どおりとする。本府省補佐の特別調整額(8%)について本府省手当に改める。
 イ 手当額は、職務の級別・支給区分別の定額制とする。
 ウ V種〜X種の手当額については、管理職昇任前の超過勤務手当が支給される職員との関係を考慮し、地方機関の超過勤務手当の支給実績を考慮した改善を行う。

(3)本府省手当の新設
  本府省における職務の特殊性・困難性、人材確保の必要性に配慮し、本府省課長補佐の特別調整額を本府省手当に改め、措置の必要性が認められる課長補佐以下の職員を対象とする。
  なお、手当額は、職務の級別(役職段階別)の定額制とする。

(4)民間の同種手当の動向等に鑑み、特別調整額を官民比較の給与種目に加え、通勤手当を比較給与種目から除く。
以 上