No.504
2004年11月4日
「全国的な俸給水準引き下げ」をあらためて表明
= 「給与構造の見直し」にむけ人事院が「素案」を提示 =
 人事院は4日、公務労組連絡会に対して、04勧告で表明した「俸給構造の基本的見直し」にかかわって、今後、労働組合などと交渉・協議をすすめていくうえでの「素案」を提示しました。
 「素案」の内容は、「地域給与」と「査定昇給」の導入を打ち出した04勧告における報告の域にとどまっていますが、給与の地域間格差の拡大にむけて、全国的な俸給水準の引き下げや、現行の調整手当の廃止などの方向をあらためて明らかにしています。
 人事院が05勧告での見直しを表明していることからも、公務労組連絡会では、年内から職場・地域での学習・討議をすすめながら、「骨太の方針」や「三位一体の改革」など小泉「構造改革」とも密接に関連する「給与構造見直し」へのとりくみを強めます。


調整手当を廃止し20%を上限とした地域手当を検討

 人事院からの「素案」提示には、公務労組連絡会から若井事務局長、黒田事務局次長が出席、人事院は、職員福祉局の宮本参事官が対応しました。
 宮本参事官は、「素案は、今年の勧告の報告をふまえて、今後の見直しの考え方を関係の労働組合や各省当局に対して、人事院として公式に提示したものだ。来年の勧告にむけて、見直しを具体化するため労働組合をはじめ関係者と議論をすすめていく」とのべ、別添資料に示された見直しの課題を明らかにしました。
 「素案」の内容は、「俸給水準の引き下げと地域に応じた適切な給与調整の実現」として、地域ごとの官民給与比較の結果をふまえて、全国共通俸給表の俸給水準を引き下げ、そのうえで、20%を上限とした地域手当(地域調整額)を地域ごとに支給するとしています。また、これにともなって現行の調整手当の廃止も検討課題としてあげられています。
 マスコミでも大きく取り上げられた「査定昇給」では、「実績評価にもとづく昇給制度」にむけて、普通昇給・特別昇給を廃止するとともに、1年1号俸という現行の号俸を細分化したうえで、「査定昇給」を導入するとしています。
 その他、本府省職員に対する手当の新設など、本省優遇の方向も示されており、「素案」は、04勧告の報告を土台にして、人事院が労働組合や各省など関係者に対して、来年の勧告にむけた見直しを公式的に表明したものと言えます。
 「素案」の提示をうけ、若井事務局長は、「公務労働のあり方と賃金のあり方は密接不可分に関連している。そのことから、単に民間準拠ではなく、公務にふさわしい給与水準や体系、制度がどうあるべきなのか、原点をふまえた議論が重要だ。また、大きな課題であり、はじめから来年勧告というような時期を固定化せず、幅広い視点での議論が必要だ」と指摘したうえで、今後のすすめ方にもかかわって、「勤務条件そのものであり、労使合意を追求するための十分な議論が不可欠だ。また、地方公務員では、総務省の研究会での議論がすすめられているが、人事院の給与構造見直しも影響することになる。その点から、国と地方の公務員労働者を組織する公務労組連絡会に対して、交渉対応のレベルアップをふくめた十分な交渉・協議をはかることを求めたい」と要請しました。

職場・地域からの学習を通してたたかいの意思統一を

 「地域給与」の導入は、公務員労働者の給与の地域間格差を拡大することにとどまらず、地域経済にも否定的な影響をおよぼすことが予想されます。また、小泉「構造改革」のもとですすめられている地方切り捨ての「三位一体の改革」とも密接に関連を持っています。
 そのことは、人事院の「給与構造の見直し」と並行して、総務省が先月、財界や学者、労働組合、さらには人事院からも委員を招き、「地方公務員の給与のあり方に関する研究会」を立ち上げ、自治体職員や教員の給与制度の見直しをすすめようとしていることからも明らかです。
 こうした見直しのねらいや問題点を職場や地域から明らかにし、公務労働者全体でたたかいをすすめていく必要があります。そのことから、公務労組連絡会では、現在、地方公務産別組織ごとに「地域学習会」の開催をすすめています。また、公務労組連絡会としての「討議・学習資料」(A4版・6ページ)を作成し、活用を呼びかけています。
 人事院が公式的な「素案」を明らかにするもと、学習をすすめながら、今後のとりくみにむけたしっかりとした意思統一をはかることを訴えます。

以 上

(資料)

給与構造の基本的見直し(素案)

人事院

○ 公務部内の不均衡を是正するとともに、国民から納得される公務員給与となるよう地域における公務員給与水準をより民間実態に即したものとする。
○ 職務給にふさわしい俸給表構造に改めるとともに、職務・実績に応じた処遇の強化を図る。
○ 複線型人事に資するよう給与制度を整備する。

1、俸給水準の引き下げと地域に応じた適切な給与調整の実現

 地域における国家公務員の給与水準について、地域ごとの民間賃金の水準を的確に反映したものとなるよう、次の措置を講じる。
(1)民間賃金の低い地域(ブロック)の官民給与比較の結果を考慮して、全国共通俸給表の俸給水準を引き下げる。
(2)地域の民間賃金との均衡を図るため、民間賃金の相対的に高い地域に勤務する職員に対し、地域手当(地域調整額)を支給する。地域手当(地域調整額)による調整は、官民給与の地域差を考慮して俸給等の20%程度を上限とする。
(3)円滑な転勤運用を確保するため、転勤手当を新設する。現行の調整手当及び異動保障は廃止する。

2、俸給表構造の見直し

 より職務・職責を反映し得るよう、級間の水準差の是正、級構成の再編、昇給カーブのフラット化などの俸給表構造の見直しを行う。
(1)級間の水準差の是正と級構成の再編
 各級の水準の重なりが大きいことが、公務員給与が年功的と受け取られる要因となっていることを踏まえ、級間の水準の重なりを少なくする方向で見直すとともに、行政職俸給表(一)の級構成の見直しを行う。
  その他の俸給表はこれとの均衡を考慮しつつ必要な措置を行う。
(2)昇給カーブのフラット化
 年功的な給与処遇の是正を図るため、次のように昇給カーブのフラット化を進める。
 民間の同年齢層の給与水準と比べ高い水準にある各級の高位号俸の水準を引き下げる。(水準の引き下げ幅については、民間の中高齢層との水準格差を踏まえ、地域調整のための一律引き下げ分とも合わせ、均衡を図る。)
 高位号俸の水準引き下げにより生ずる原資を用いて、前半号俸の引き上げを行う。適用者の極めて少ない4級以上の各級の若い号俸については号俸カットを行う。
3、勤務実績の給与への反映

(1)実績評価に基づく昇給制度の導入
 勤務実績が昇給額に適切に反映されるよう、毎年の職員の勤務実績に基づいて昇給額を決定する昇給制度(査定昇給)を導入し、現行の普通昇給と特別昇給を廃止する。
 1) 昇給幅の細分化等
 勤務実績をきめ細かく昇給に反映させるため、現行の号俸を細分化し、勤務実績に応じた昇給の基準を設定する。また、現在4半期に1回とされている昇給期を年1回とする。
 2) 枠外昇給制度の廃止
   職務給の徹底を図るため、いわゆる枠外昇給制度を廃止する。

(2)勤勉手当への実績反映の拡大
 民間における特別給の考課査定分の動向を踏まえつつ、勤務実績を支給額により反映し得るよう、標準者の支給月数の引き下げなどによりプラス査定のための財源を確保するとともに、成績率及びその分布割合の基準を設定する。

(3)昇格(降格)基準の見直し
 下位の級での勤務実績に関する具体的要件(例えば、昇格前一定期間又は一定の回数の実績評価の結果に表れた勤務実績が標準を上回っていること等)を設定するなど昇格(降格)の基準の明確化を図る。

4、その他の課題

(1)行政の多様化、複雑・高度化に対応するため、高度の専門能力を持つスペシャリストがスタッフとして活躍できる処遇の枠組みを準備するとともに、在職期間の長期化への対応として、職員が専門的な能力・経験を活かしつつ多様な働き方ができるよう、複線型の人事制度の導入に向けての給与制度上の環境整備として、3級構成程度の簡素な級構成の専門スタッフ職俸給表を新設する。
(2)職務・職責をより反映するという観点から、本府省職員に対する手当の新設及び俸給の特別調整額の定額化を行う。
以 上