No.493
2004年8月16日
地方公務員の賃金改善を求めて申し入れ
= 公務労組連絡会が全国人事委員会連合会に要請行動 =
 公務労組連絡会は16日、地方公務員の賃金改善、寒冷地手当「見直し」などにかかわって、全国人事委員会連合会(全人連)に要請しました。
 今年の人事院勧告では、6年連続の「マイナス勧告」は阻止できたものの、寒冷地手当改悪の強行や、地域給与の見直し、さらには、教職員俸給表(二)(三)の廃止など、今後、地方公務員・教員の給与や労働条件に直結する問題が数多くあります。
 こうしたことをふまえ、今年の地方での給与勧告にあたって、公務労働者の生活改善にむけた対応を求めました。

給与構造の見直し〜影響は避けられないが自主性持って対応

 全人連への要請には、公務労組連絡会から若井事務局長、黒田事務局次長、柴田幹事(自治労連中執)、新堰幹事(全教副委員長)が出席、全人連側は、齋藤事務局次長(東京都人事委員会事務局任用公平部長)、宮坂書記(同任用給与課長)が対応しました。
 はじめに、若井事務局長が別添の「申し入れ書」を提出して要請の趣旨をのべ、その後、参加者が発言しました。
 柴田幹事は、「地域の民間給与に合わせるよう求める圧力があるなかで、地方人事委員会では、公務員労働者の生活改善につながる勧告をおこなうよう求める。とくに、最近では、自治体による独自の賃金カットが強行されているが、第三者機関である人事委員会として毅然とした対応を要請する。また、寒冷地手当は、国に準拠して今年度中の改定を総務省が求めているが、労働組合との十分な話し合いと労使合意が必要であり、慎重な対応を求める」とのべました。
 また、新堰幹事は、「国の教職員俸給表(二・三)が廃止されたが、引き続き、『同一労働・同一賃金』の原則、ナショナルミニマム確保の観点から全国共通の給与水準確保につとめ、参考にできるものを地方人事委員会に提示できるよう人事院などへの働きかけを要請する。また、地方財政悪化のもとでも、文部科学省は、現行の給与水準を維持するべきと表明している。労働基本権制約のもと、独自の賃金カットなどはすべきではない」とのべ、全人連としての対応を求めました。
 齋藤事務局次長は、「みなさんの要請はうけたまわった。要請の内容は、各人事委員会にも伝える。今年の人事院勧告は、本俸・特別給とも据え置きとなったが、今後、各人事委員会での調査の集計・分析がおこなわれ、それぞれの自治体の実情等をふまえて対応されるものと考える。なお、勧告では、給与構造の見直しが報告されたが、地方公務員の給与についても影響は避けられないが、それぞれが自主性をもって対応されるものと考える。また、寒冷地手当の見直しが勧告されたことをふまえて、対象地域を持つ自治体では、これから検討がすすめられるものと思う。教員給与に関しては、今後、各自治体の自主性を持って主体的に対応するものと考えるが、その際、各人事委員会で適切な判断がおこなえるよう、全人連としては、情報収集と各地方人事委員会への情報の提供につとめたい」と見解をのべました。

以 上

【資料:全人連への要請書】

2004年8月16日

全国人事委員会連合会
会長  内田 公三  様

公務労組連絡会議長  石元  巌
日本自治体労働組合総連合    
中央執行委員会委員長 駒場 忠親
全日本教職員組合         
中央執行委員長    石元  巌

地方人事委員会の勧告に関する要請書

 貴職の地方公務員の賃金・労働条件の改善・向上に向けたご努力に敬意を表するものです。
 今年の人事院勧告は俸給表の改定を行わず、さらに一時金も据え置いたことによって、6年ぶりに年収ベースでのマイナスはストップすることとなりましたが、この間、地方財政危機を口実に人事委員会勧告に上乗せして独自カットを行う自治体がますます増加し、地方公務員の生活水準は低下をしています。
さらに、今年度の地方交付税等の大幅な削減、加えて税財源の「三位一体の改革」等によって、住民サービスの縮小・削減、人件費の削減など、地方における困難さが増大しています。
 さらに、政府の04骨太方針では、自治体行政の減量化、地方公務員の給与削減や「削減システム」の導入を謳っていますが、財政事情のみを優先させることは、地方自治体の持つ役割、それを支える地方公務員の適切な処遇等を一方的に否定するもので、認められるものではありません。
 また、今年の人事院勧告の「報告」で、地域に勤務する公務員の給与水準・地域関連手当の見直し、俸給構造の見直しなどが触れられ、これらの問題は地方公務員にも重大な影響を及ぼすものです。
 私たちは、地方公務員の給与・勤務条件が規範性を持っているがゆえに、地方の公務・公共関連労働者の給与等の水準、年金・生活保護をはじめとした社会保障の給付水準、最低賃金など「ナショナルミニマム」のあり方、それらを通じて住民の暮らしに重大な影響を及ぼし、「賃下げ・デフレの悪循環」によって地域経済にも大きな影響を与えるものと考えます。
また、地方自治体では、人事委員会勧告と関わりなく、「賃金カット」などが実施され、労働基本権制約の「代償機能」も無視されています。
これから各地の人事委員会においても本年の勧告にむけた作業にとりかかられるものと考えますが、各地の人事委員会勧告にあたっては、こうした見地から下記事項を十分に尊重いただき、その実現に向けて努力いただくことを強く要請するものです。

1.地方公務員・関連労働者の暮らしを守り、「全体の奉仕者」として職務に専念できるよう各地の労働組合の要求に応え賃金・労働条件の改善・充実を図ること。

2.人事委員会の勧告と関わりなく行われている「賃金カット」などの労働条件の切り下げに対しては、毅然とした対応を行うこと。

3.独自に「賃金カット」を行っている自治体は、実態賃金との比較で公民較差に基づく賃金改善を行うこと。

4.地域に勤務する公務員の給与水準問題について、04骨太方針や04人事院勧告の報告に追随せず、「同一労働・同一賃金」の立場に立ち、地方公務員の給与の地域間格差拡大を行わないこと。

5.寒冷地手当について、それぞれの地方の条件、地方公務員の生活実態を考慮し、国に追随して改悪しないこと。

6.教員の給与勧告に当たっては、「同一労働・同一賃金」と教育条件のナショナルミニマム確保の立場に立ち、賃金・諸手当の改善を図り、少なくとも現行水準を維持すること。また、今後とも国に対して標準的俸給表を求めるなど、地域間格差の拡大や水準の低下が生じないようにすること。

7.憲法とILO勧告に基づき公務員労働者の労働基本権を保障するなど民主的公務員制度確立にむけ積極的に政府に働きかけること。
以 上